世界の動き 2023年8月9日 水曜日

今日の言葉:
「非公式の通信手段はダメ」
 証券会社にとって録音可能な環境で顧客と会話するのが鉄則だ。記録の残らない通信手段は禁止される。これを破るとどんなことになるか。
 Bloombergの興味深い記事だ。
『計11社に制裁金
米証券取引委員会(SEC)が大手金融機関に対する記録管理の監督を強化する中、ウェルズ・ファーゴやBNPパリバなど複数の金融機関は、従業員が業務上でチャットアプリ「ワッツアップ」など非公式の通信手段を利用していたことを認め、多額の制裁金の支払いで合意した。SECによれば、ウェルズの複数部門はこの問題決着に合計1億2500万ドル(約180億円)を支払う。BNPパリバは3500万ドルの制裁金の支払いに合意した。このほかみずほセキュリティーズUSAが2500万ドル、SMBC日興セキュリティーズ・アメリカが900万ドルなど、計11社が総額2億8900万ドルをSECに支払う。』

ニューヨークタイムズ記事より
1.中国の卒業生の見通しは暗い
【記事要旨】
 今年の卒業生数は推定1,160万人で、史上最大規模になると予想される。 しかし、若者の失業率は過去4年間で2倍になり、「ゼロコロナ」政策による不安定さで企業は採用に慎重になっている。
 6月の都市部の16~24歳の失業率は21.3%と過去最高を記録した。 次の卒業生の波に伴い、7 月の数字はさらに高くなることが予想される。 ある大学の学長は学生たちに、「目標を高くしすぎたり、仕事にこだわりすぎたりしないように」と言った。
 経済は不安定だ。中国の7月の貿易額は減少し、政府の取り締まりと監督の強化により、オンライン教育、テクノロジー、不動産など、若者が職を求めて集まっていたかつては活気に満ちていた業界も低迷している。
 1992年に大学に入学した学生はわずか75万4,000人だった。より多くの若者が高等教育を受けようとするにつれて、多くの大卒者が求めている高賃金のホワイトカラーの仕事を十分に創出していない。
 若者の失業問題は10年は解決しないかもしれないと中国のシンクタンクは推定した。 「適切に対処されなければ、経済以外の社会問題を引き起こし、政治問題の導火線に火をつけることさえあり得る」と報告書で述べた。
【コメント】
 実際の失業率は46%という推計もある。社会不安の起きるレベルだ。外務省やミサイル軍で高官の罷免が続いており、上は共産党指導部から下は若者に至るまで中国社会の動揺が続いているようだ。

2.阻止されたアフガニスタンでの反乱
【記事要旨】
 2021年にタリバンが政権を握った後、米国の支援を受けた政府とともに戦ってきた多くのアフガニスタン人が他国に逃亡した。 彼らは、新しい独裁政府の下で国が変化するのを遠くから見ていた。
 パキスタンとアフガニスタンの支局長であるクリスティーナ・ゴールドバウムは、アフガニスタンで活動するレジスタンスグループと連携した二人の特殊部隊を追った。彼らは祖国に戻り、安全な家に隠れ、反政府勢力間の調整のための本部の設置に努めた。
 しかし数週間以内に、タリバンの兵士たちが彼らの隠れ家に発砲し、二人とも死亡した。 クリスティーナによると、人々は支持を求めてソーシャルメディアに投稿し始めたという。
 「彼らは、米国の支援を受けた政府の下で定められたこの国のビジョンを信じ、そのために戦う意欲を持った若い世代を代表するようになった。 人々が今の武力抵抗がいかに不可能であるかを認識した瞬間に、彼らのビジョンに対する集団的な追悼の声が上がっている」とタイムズ紙のポッドキャスト「ザ・ヘッドラインズ」で彼女は語った。
【コメント】
 親米の青年戦士の死を無駄にしないということだろう。この地域の安定に日本が出来ることも多いと思うが、殆ど報道はない。中村哲氏の貢献や2019年の非業の死も風化している。

3.ニジェールで薄れる対話への期待
【記事要旨】
 ニジェールの新軍指導者らは、最近のクーデターによって生じた危機を解決しようとする米国、国連、地域団体による外交努力を拒否した。
 現在、民政回復への期待は薄れつつある。 そして、民主的に選出された大統領は、まだ正式に辞任していないが、電気も水道もない公邸に閉じ込められている。
 次はどうなるか: 西アフリカ諸国経済共同体ECOWAS は軍事行動をちらつかせ、ニジェールとの金融取引を凍結した。 明日は臨時首脳会議を開く予定だ。
【コメント】
 ニジェールについてタイムズは連日記事にしているが日本では報道はほぼ皆無だ。西アフリカの最貧国での混乱に過ぎないという事か。

その他:
サウジでの和平会議後日談
 Beijing’s foreign minister spoke by phone with his Russian counterpart after China attended peace talks in Saudi Arabia over the weekend.
TSMCはドイツに工場
 Taiwan Semiconductor Manufacturing Company plans to invest $3.8 billion to build a facility in Germany, part of an effort to further diversify production locations.
肥満治療薬が心筋梗塞に効果
 The obesity drug Wegovy cut the risk of serious heart problems by 20 percent in a large trial, the drug’s maker said.

2023年8月9日 水曜日

世界の動き 2023年8月8日 火曜日

今日の言葉:
「立秋」
 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」
  秋立つ日に詠める 藤原敏行 

ニューヨークタイムズ記事より
1.中国軍部の動乱
【記事要旨】
 中国の指導者、習近平氏は10年前腐敗した軍部の一掃に着手した。 しかし今、彼の至宝である人民解放軍ロケット軍は影がかかっている。
 習氏は先週、軍のトップ将軍を突然交代させた。 李玉超将軍は、昨年、習氏によって軍の最高司令官に任命されたばかりだった。 副官である劉光斌大将と軍の政治委員である徐仲波大将も公の場から姿を消した。 この動きは、秦剛外相を解任した数日後に行われた。
 ほとんどの専門家は、李氏と他の上級将校が急速に拡大する部隊への巨額支出の一部を吸い上げた疑いで告発される可能性があると考えている。 スキャンダルは、監視と圧力によってのみ当局者の迷走を防ぐことができるという習氏の信念を強める可能性がある。
  習氏は2015年にこの部門を創設したが、中国の軍エリート全員が習氏の台頭のおかげで出世し、習氏は権力をしっかりと掌握している。
 フィリピン沿岸警備隊は、中国沿岸警備隊の船舶が南シナ海で自国の船舶の1隻に放水銃を発射する様子を映したビデオを公開した。 2016年、国際法廷は係争海域に対するフィリピンの領有権主張を支持した。 中国はこの判決には従わないと表明した。
【コメント】
 外相に続き軍でも不可解な動きがあるようだ。習主席の権力掌握が一層進むのか、揺らぎの始まりなのか、今後何が起きてくるか注目したい。
 中国の若者の失業率は46%という論文があり(現在は検閲で削除)、経済の低迷も進んでいるようだ。共産党指導部には経済に強い人がいないのも懸念される。

2.混迷する韓国のジャンボリー
【記事要旨】
 4年ごとに世界中からスカウトが集まる世界スカウトジャンボリーにとって、苦難は続いている。 昨日、韓国は台風カヌンが接近しているため、参加者全員が早めにキャンプ場を離れると発表した。
 すでにこのイベントに参加していた少なくとも138人が熱中症で入院している。 国内スカウト3団体が早めにキャンプ場を離れた。 また、韓国の派遣団は、主催者がキャンプ場での性的犯罪の申し立てを不適切に処理したと主張して撤退した。
 世界スカウト運動機構の事務局長は「非常に不幸な出来事として歴史に残るだろう」と語った。
 158 か国から 43,000 人以上の青少年がジャンボリーに参加するために韓国に集まった。 台風は木曜日に上陸する見込みだ。
【コメント】
 熱中症で多くの参加者が倒れたことは聞いていたが、悲惨な状態になっているようだ。台風が心配だが、いつまでの予定なのだろうか。

3.反転攻勢の内部を見る
【記事要旨】
 ウクライナの緩慢な反撃を理解するために、タイムズ紙はNATOによって訓練され、補給を受けているウクライナ海兵隊と2週間を過ごした。 軍隊は、今後の長くて骨の折れる戦いに備えていると述べた。 ある指揮官は「これは短距離走ではない」と語った。 「マラソンだよ。」
  経験豊富な指揮官が訓練不足の新兵を指揮しており死傷者は多い。 また、一部の旅団は、中東の砂漠で暴徒と戦うのに適した車両で戦おうとしている。
 ウクライナは、ロシア権力への賛辞を排除する継続的な取り組みの一環として、キエフにそびえ立つ巨大な祖国記念碑のソ連の紋章を取り替えた。ゼレンスキー大統領の対ロシア動向に関する情報収集を試みていたウクライナ人女性を拘束したと発表した。
【コメント】
 この記事から得られる情報は少ない。軍隊の練度が低いこと。装備の一部が対露戦向きでないこと。ということか。急な戦況の好転・進展は困難だとすれば、今こそ和平への道が模索されるべきだ。

その他:
英国の移民対応
 Britain moved a group of migrants to a barge. The government hopes it will save money, but critics see it as part of a hardening of migration policy.
イスラエルとシリアの紛争
 An Israeli strike near Damascus killed four soldiers, Syrian state media said.
Zoomでも出社要請
 Even Zoom is making many of its employees return to the office.

2023年8月8日 火曜日

世界の動き 2023年8月7日 月曜日

今日の言葉:
「インターネット規制」
 中国の話だ。中国のインターネット規制当局は、若者がスマートフォンに費やす時間を減らすことを目的とした規制を提案したそうだ。
 日本の話だ。いま電車に乗るとほとんどの人がスマホとにらめっこしている。ホームでもスマホを見て歩いている人がいる。多くはゲームをしていたり漫画を読んでいる。まさにスマホ中毒と言える状況がある。
 中国の動きは、若者に使用を少なくする呼びかけと考えれば正しいものだ。ただ、SNSを通じた政府批判の情報拡散を押さえたいという意図も見えるところが恐ろしい。

ニューヨークタイムズ記事より
1.イムラン・カーンに懲役刑が言い渡される
【記事要旨】
 パキスタン元首相イムラン・カーン氏は土曜日、裁判所から国庫贈与の不法販売と資産隠蔽の罪で懲役3年の判決を受けた。同氏は今秋に予定されている総選挙への出馬の可能性がなくなる可能性が高い。
 この判決は、2022年4月にカーン氏が不信任投票で失脚して以来、エスカレートしてきた全国的な政治騒動の頂点に達した。 これは、カーン氏の政党を空洞化させ、彼の復帰を阻止することを目的としたな軍による数カ月にわたる脅迫作戦の直後に行われた。
 カーンの判決後に大規模な抗議活動は起こらなかったことは脅迫作戦の有効さを示している。
 パキスタンでは昨日列車が脱線し、少なくとも30人が死亡したと当局が発表した。
【コメント】
 日本では全く報道されないが、インドに対抗する地域大国の動向は注意が必要だ。専制政権が親中に舵をきると東アジアの不安定さが増す。

2.北京を救うために村が浸水
【記事要旨】
 中国当局は、先週の記録的な大洪水による最悪の事態から首都を守るため、意図的に洪水を北京周辺の村に迂回させた。 北京と接する河北省とその周辺で100万人近くが避難を強いられたことを受け、住民は激怒した。
 河北省の指導者は、「断固として首都に『堀』を建設しようとした」と述べたが、この表現を、人々は北京の国家指導者を宥めるための努力とみなし非難した。このコメントは検閲される前に6,000万回以上の閲覧を集めるハッシュタグとなった。
 同省指導者の決断により涿州市は深さ23フィート(約7メートル)もの水に浸かった。 「誰も私たちに洪水放流について知らせてくれなかったし、避難の準備をするように言ってくれた人もいませんでした」と村民はタイムズ紙に語った。
【コメント】
 なるほど。省政府は住民のためにあるのではなく共産党指導者のためにあるということか。明治政府の初期の政府から任命された県令のようなものと知れる。

3.ロシアはプーチンの戦争を支持するだろうか?
【記事要旨】
 私の同僚のロジャー・コーエンはロシアで1か月を過ごし、この国のナショナリストがいわれなき戦争に突入していることと、侵攻17か月後の雰囲気を説明できる手がかりを探していた。
 「国の方向性や意味が不確かであることがわかりました」とロジャーは書いている。双方で約10万人の命を奪っていると考えられる今も続く戦闘について、プーチン大統領の輝かしい神話と、特にロシアの最貧地域での日々の闘いとの間で、考えが引き裂かれている。
 その他のウクライナのニュース:
 ウクライナは金曜日と土曜日にロシアの船舶を攻撃し、黒海やそれを超えた地域での暴力の脅威を増大させた。
 アレクセイ・ナワリヌイ氏は「過激主義」容疑で新たに懲役19年の判決を受けた。
【コメント】
 調査報道だが結論が書かれていない。結局ロシア国民は支持するのかしないのか不明だ。

その他:
インド裁判所は野党指導者を保護
 India’s Supreme Court cleared the way for Rahul Gandhi, the top opposition leader, to return to Parliament and run in next spring’s national elections.
TSMCは台湾にとどまり優位を維持する
 The head of Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, which makes the world’s most advanced microchips, said the company’s top talent would stay in Taiwan despite growing threats from China.
 The founder of TSMC told The Times that he did not give China much of a chance for semiconductor supremacy.
女子サッカーワールドカップ
 The U.S. is out of the World Cup. It lost to Sweden on penalty kicks.
Japan eliminated Norway, and will face Sweden next.

2023年8月7日 月曜日

日本の末路

「末路」とはGoo辞書によれば
 1 道の終わり。
 2 一生の最後。晩年。ばつろ。「人生の―」
 3 盛りを過ぎて衰え果てた状態。なれのはて。ばつろ。「英雄が哀れな―をたどる」
 となっている。

 野口悠紀雄さんの「「生成系AI」でも世界から遅れている日本の末路」という東洋経済OnLineの記事のタイトルを見て、発展後退国たる我が国のまさに末路ともいうべき状況を改めて認識させられた。

 同氏の議論の要旨は以下だ。
 アメリカにおいては、ビジネスにおける大規模言語モデルの利用は、すでに現実になっており、サービス提供者側の動きも活発になっている。
 ・米データブリックスがモザイクMLというスタートアップ企業を約13億ドル(約1860億円)で買収する。モザイクMLは比較的小さな企業が利用できる大規模 言語モデルの開発を行っている。
 ・メタ(Facebookを運営)はオープンソース大規模言語モデル「Llama 2」の提供を開始し、研究と商用向けに無償で提供する。開発者は独自の生成系AIをMicrosoft AzureやWindows上で開発し、アプリケーションに組み込めるようになる。
 これに対して、日本企業の関心のなさが憂慮される。大規模言語モデルの開発面において日本が後れを取っていることは仕方がないが、それをさまざまな実務に活用することは十分に可能なはずだ。それにもかかわらず、関心もないし 利用への体制作りも進んでいない。
 デジタル化の遅れが日本経済停滞の原因であると、しばしば指摘される。いま、大規模言語モデルの活用において遅れを取れば、日本の後れは決定的なものになってしまうだろう。

 新聞報道ではNECや日立が生成AIの開発を独自に進めているようだが先進の米国企業に対抗可能なレベルなのだろうか。半導体での経験では、大企業に一部門での取り組みは上手く行かない。上手く行かなかったところへ経済産業省が出てきて、部門を切り出して生き残りを図るが、これも失敗の連続だった。
 AIのスタートアップ企業を調べると、小粒だが10社程度が我が国の株式市場で挙がってくる。彼らの力量はどのくらいなのだろうか。

 若い人たちの起業家精神に期待したい。このままでは日本の「末路」は確実だ。

2023年8月6日 日曜日

米国のゾンビ企業

 金利の上昇と全般的な景気の低迷(ITや先端企業は好況を楽しんでいるがそうでない企業には景気が回復していると見えない)により特に借入の多い企業、コロナ禍を乗り切るために政府から巨額の借入を行ったゾンビ企業の破綻が増えそうだ。

 8月1日のCNN Business Reportは全米最大手のトラック運送会社Yellow社の破綻を報じている。以下記事要旨。
「かつて同分野で有力企業だった創業99年のトラック運送会社イエロー社は日曜日(7月30日)に操業を停止し、従業員3万人全員を解雇する予定だ。
 労働組合を持つ同社は、同社の運転手や港湾労働者約2万2000人を代表するチームスターズ労働組合と争っている。 会社が年金や健康保険制度への拠出を怠ったが、組合は会社に対し、必要な支払いを行うための追加の 1 か月の猶予を与えた。
 先週半ばまでに同社は顧客からの荷物の集荷をやめ、すでに自社システムにある貨物のみの配達を行っていたようだ。
 チームスターズの交渉委員会は、組合はイエローに対してストライキを行わないことに同意したが、トラック運送会社との新たな契約については合意に達することができなかったという。 組合は月曜早朝、閉鎖の通知を受けたと発表した。
 「今日のニュースは残念ではありますが、驚くべきことではありません。 イエロー社は、労働者への数十億ドルの譲歩と連邦政府からの数億ドルの救済資金にもかかわらず、経営が不可能であることを歴史的に証明してきた。 これは労働者とアメリカの貨物業界にとって悲しい日です」とチームスターズのショーン・オブライエン委員長は声明で述べた。
 イエロー社はテネシー州ナッシュビルに本拠を置いていますが、全国規模の企業であり、従業員は全国の 300 以上のターミナルに分散している。イエローで発生したのは主に組合契約の費用を上回る、支払えない金額の負債だった。
 年間約110億ドル相当の貨物をさまざまなトラック運送会社に預けている第三者物流会社AFSロジスティクスのトム・ナイチンゲール最高経営責任者(CEO)は、「チームスターズは一連の苦渋の譲歩を行って、非労働組合の運送業者との賃金同等に近づけた」と語った。 イエロー社は他のトラック運送会社を買収するために20年前から多額の負債を負い始めたと述べた。帳簿上15億ドルの負債があり「現在、債務返済額は膨大だ」と述べた。
 イエローのトラック運送市場部門には、他にも労働組合を組織している国内競合他社が 2 社ある、ABF Freight と TForce である。 両社は近年、2021年と2022年にわずかな営業利益しか計上せず、第1四半期には930万ドルの営業損失を計上したイエローよりもはるかに収益性が高かった。
 先週には破産申請が7月31日までに行われるとの報道があったが、同社は先週、チームスターズとの交渉を継続し、あらゆる選択肢を検討しているとだけ述べた。 チームスターズは月曜日、同社が破産を申請していると発表した。

 イエロー社の閉鎖は従業員や、トラック運送業界で最も安い料金を提供するイエローを利用していた顧客だけでなく、米国の納税者にとっても悪いニュースだ。 同社は2020年に連邦政府から7億ドルの融資を受けており、その融資により発行済み株式の30%を納税者が保有することになった。 そして、最新の四半期報告書によると、同社は依然として財務省に対して7億ドル以上の負債を抱えており、これは帳簿上の長期負債のほぼ半分に相当する。
 イエローの株は融資時から破産計画報道後の木曜終値までに価値の82%を失い、終値は1株当たりわずか57セントとなった。 金曜日には1株当たり14セント値上がりしたが、依然としていわゆるペニー株にとどまった。
 同社は当時、米軍への物品の輸送に高額な請求をして政府をだまし取った容疑で起訴されていたにもかかわらず、パンデミックの最中にその融資を受けていた。 同社は最終的に不正行為を認めずに紛争を解決したが、685万ドルの罰金の支払いを余儀なくされた。

 イエローは、トラック積載量未満 (LTL) として知られるトラック運送業界のセグメントで、多数の顧客からの荷物を同じトラックで運ぶパレットサイズの貨物の輸送を扱っている。同社は6月まで国内第3位のLTL運輸会社であると主張していた。
 しかし、同社は昨年、国内の毎日のLTL出荷量72万件のうち、約7%しか扱っていないという。現在LTL部門には約8%から10%の余剰生産能力があるため、イエローの閉鎖によってサプライチェーンに重大な混乱が生じることはないが、LTL運送業者に依存している荷主にとっては料金の上昇を引き起こすかもしれない。「荷主がイエローを使用した理由は、安かったからだ。彼らは、その価格が適切な運営をサポートするコストを下回っていたことに気づいた。」
 米国経済は引き続き好調を維持しているが、消費者の支出は近年、パンデミックの影響でまだ家に閉じこもっていた2020年から2021年初頭に購入していた商品から、航空券やその他のサービスなどへと移行しており、LTL出荷量が2021年から2022年にかけて17%減少し、第1四半期には前年同期と比較してさらに5%減少した。
 イエロー社はトラック輸送の需要が旺盛なときには利益を出せる可能性があるが、貨物輸送の低迷とそれに伴うトラック輸送料金の低下に直面するとやっていけない。 第1四半期の出荷量が前年同期比で13%減少したため、イエローの将来を懸念した荷主は他の運送業者に乗り換え始めた。
 ウォーレン・バフェットの言葉だが、潮が引くと、誰が裸で泳いでいたかが分かるのだ。

トラック輸送の時代の終わり
 40 年近く前にトラック運送業界が規制緩和されたとき、トラック積載として知られる貨物のフルトレーラーを扱う業界の分野は、すぐに組合のないトラック運送会社によって独占された。 低価格の競合他社が業界のその分野に参入するために必要だったのはトラックだけだった。
 しかし、LTL セグメントでは、入ってくる貨物と出ていく貨物を仕分けるためのターミナルのネットワークが必要であり、低コストの競合他社の参入は制限されたが、妨げられなかった。 そのため、労働組合に加盟していない運送会社が成長したにもかかわらず、イエローなどの労働組合に加盟している運送会社は依然として主要なプレーヤーであり続けた。
 最終的には、非組合運送会社が LTL セグメントでも優勢になるようになった。Yellow、Roadway、そして CF または Consolidated Freightways として知られる 3 番目の会社は、かつてはトラック運送業界のビッグ 3 として知られていた。 CF は 2002 年に廃業した。そして、Yellow Corp. の閉鎖に伴い、ビッグ 3 の最後の 2 つの部分も同様に廃業した。」

 長文の記事だが、イエロー社のゾンビ企業ぶりがよくわかる無いようだ。
・参入障壁にある程度守られた緩い競争環境
・価格競争による低利益体質
・強固な組合により従業員の賃金を下げられず
・借入過多。さらに政府から借入
・金利が上昇すればすぐに赤字
 日本でもこのような企業は多いので、注意してみて行きたい。

2023年8月5日 土曜日