世界の動き 2023年2月22日

今日の言葉
「猫の日」
 にゃんにゃんにゃんのごろ合わせ由来だそうだ。
 2021年の調査では、犬:710万6千頭、猫:894万6千頭 犬・猫 推計飼育頭数全国合計は、1,605万2千頭が飼われているそうで、凄い数だ。人間の少子化に比し、ペットは順調に増加している。子供が増えるように政策のベクトルを変える工夫と知恵が必要だ。

ニューヨークタイムズ記事
1.二つのビジョン
【記事要旨】
 バイデン大統領とプーチン大統領は、ロシアの侵略一周年のわずか 3 日前に、根本的に異なるビジョンを示した。 彼らが同意しているように見えた唯一の点は、戦争が終わったわけではないということだった。
 キエフへの短いが劇的な訪問から数時間後、バイデンは寒い霧雨の日にワルシャワの王宮で演説した。 米国とそのNATO同盟国が不動であり続けると誓った。 「私たちのウクライナへの支持は揺らぐことはなく、NATOは分裂せず、疲れることもない」
 数時間前にモスクワで、プーチン大統領は、ロシアが戦闘を激化させる準備ができていることを示す長い国家演説を行った。 彼は、ワシントンとモスクワの間で存続している最後の軍備管理協定である新START条約へのロシアの参加を一時停止すると発表した。
 プーチン大統領は演説の中で、西側諸国がウクライナで「戦争を始めた」と主張した。 バイデンはワルシャワで「プーチン大統領はこの戦争を選んだ。 戦争が続く毎日が彼の選択だ」と語った。 彼はロシアの指導者が大規模な残虐行為を行ったと非難した。
 プーチン大統領は進路を変える気配を見せなかった。 彼は、来るべき長期戦争の計画を立て、ロシアが西側の制裁を乗り越えられるよう、教育制度と科学技術政策の変更を、そして、戦闘員が半年ごとに2週間の休暇を取ることを約束した。
 ヘルソンでのロシアの攻撃で、バス停で少なくとも 6 人が死亡した。 ロシアはまた、ウクライナ軍の南部での防御を弱めるために、北部地域を砲撃している。
 中国の外交政策の最高幹部である王毅氏は、ヨーロッパを歴訪した後、モスクワでプーチン大統領と会談したが、ロシアを疎外することなくEUとの関係修復を目指す北京の脆弱な立場を示した。
【コメント】
 西側が始めた戦争と言うプーチンの論理は破綻しているが、彼は本心からそう思っているのだろう。狂気の独裁者に異を唱えるには誰が何をすればよいのだろうか。

2.サウジアラビアの弾圧
【記事要旨】
 保守的なイスラム王国の当局は、政府を批判する人々に対してこれまで以上に厳しい処罰を下している。 多くのサウジアラビア人は、この取り締まりに深く動揺している。
 2015 年にモハメド・ビン・サルマンをツイッターで批判した、フロリダに住む 72 歳のサウジ系アメリカ人、サード・アルマディは、その 7 年後、サウジアラビア訪問中に逮捕され、16 年の禁固刑を言い渡された。 上訴した後、彼の刑期は 19 年に延長された。
 サウジの検察官は現在、アルマディを含む政府に批判的な投稿は、テロリズムや、その安全を脅かすその他の見解を支持していると主張している。
 最近まで、サウジでは 20 年以上の懲役刑はまれであり、アメリカ市民権を持っているか、アルマディのような地元のエリートとつながりのあるサウジアラビア人は、つながりを利用して身を守ることができた。 「ムハンマド・ビン・サルマンの功績の一つは、彼が万人に不当な平等をもたらしたことだ」とドイツに亡命中のサウジの弁護士は語った。
【コメント】
 強権国家に表現の自由は無いことを肝に銘ずるべきだ。

3.フィリピンのシフト
【記事要旨】
 フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、在任中のほぼ 8 か月間で、中国と争っている領土問題に突き動かされて、フィリピンを、アジアでのより強い軍事的プレゼンスで中国に対抗する米国の取り組みの要にしている。
 先週、中国船がフィリピン船に軍用レーザーを向けた後、マルコスは中国大使を召喚した. フィリピンの大統領が個人的にそのような抗議を提出したのは数年ぶりのことだった。 マルコスは米軍に4つの新しい防衛施設へのアクセスを許可し、米国はフィリピンが中断していた南シナ海での共同パトロールを再開すると述べた。
 マルコスは、中国の台湾侵攻の可能性についても懸念を抱き、「フィリピンが何らかの形で関与しないというシナリオを想像するのは非常に難しい」と述べている。間もなく米軍に開放される3つの新しい基地が台湾に面して、1つは南シナ海に面していると見られる。中国の怒りにもかかわらず、今後数か月以内に米国に追加の基地へのアクセスを許可する可能性がある。フィリピンは 1991 年に米国に当時最大の海外基地だったスービック湾の海軍基地を放棄するよう命じたが、米国は呼び戻される可能性がある。
【コメント】
 西欧で教育を受けたマルコスは心の中で親米なのだと思う。国内で中国系の住民が力を持つのも快く思っていないだろう。
 政治指導者のマインドセットが国家の政策に影響を与える好例かもしれない。

その他:
北朝鮮の放射能汚染
 North Korea’s underground nuclear tests may have contaminated groundwater, a human rights group based in Seoul said.
BYDのEVをドイツで発売開始
 BYD, the Chinese automaker that sells the most electric vehicles in the world, has begun offering three of its models in Germany.
米兵の犯罪で日米に亀裂
 The case of a U.S. Navy officer imprisoned in Japan for causing a deadly traffic accident has caused friction between the two allies.

2023年2月22日 水曜日

世界の動き 2023年2月21日 火曜日

今日の言葉
「銀河鉄道999」
漫画家の松本零士氏が亡くなった。代表作は宇宙戦艦ヤマト、キャプテンハーロック、とりわけ銀河鉄道999だ。
銀河鉄道の夜をアニメにしたような作品だった。鉄郎と謎めいたメーテルが旅を続ける。どこが終点かわからず物語の終わりも定かでなかった。なぜあれほどの熱狂をもたらしたのか、今ではそれが不思議だ。

ニューヨークタイムズ記事
1.バイデンの電撃訪問
【記事要旨】
バイデン大統領は、ウクライナを支援するという米国の「揺るぎないコミットメント」を示すために、ポーランドからウクライナの首都まで約10時間の列車に乗った。
空襲のサイレンが鳴る中、バイデン氏は日差しの中を歩き、ホストのゼレンスキー大統領と共にキエフのダウンタウンにある修道院を訪れた。 バイデンは、追加の軍事援助で 5 億ドルを約束したが、ウクライナが訴えている高度な兵器については語らなかった。
「1年後、キエフは立っている」とバイデンは、ロシアの侵攻から1年が経過するわずか4日前のゼレンスキーとの記者会見で語った。 「そしてウクライナは立っている。 民主主義は立っている。」
バイデンのウクライナへの侵攻開始後最初の訪問は秘密に包まれていた。 米国は、彼がキエフに到着する数時間前に、彼の計画についてロシアに警告した. バイデンと一緒に旅行した2人の記者は、旅行が終わるまで詳細を公開しないことに同意した. バイデン氏がキエフに滞在していたのは、 6 時間足らずだった。
今日プーチン大統領はモスクワで国家演説を行い、バイデンはワルシャワで演説する予定だ。
【コメント】
岸田首相は訪問の機を逸した。先の訪欧時がチャンスだったのに残念だ。

2.中国はロシアを武器支援するか?
【記事要旨】
ロシアの国営メディアが、中国の最高外交政策当局者がモスクワに到着したと報じたとき、北京は、ロシアに「致命的な支援」を与える態勢を整えているという米国の主張に反発した。
中国外務省のスポークスマンは、「戦場に絶え間なく武器を供給しているのは中国ではなく米国であり、米国には中国に命令を出す資格はない」と述べた。
北京はモスクワとの関係を擁護し、ロシアとウクライナを和平交渉に引き込もうとしている中立的なオブザーバーであると主張した。中国は非軍事的な方法でロシアを支援してきたが、パンデミックの後、世界的な関係を再構築しようとしているときに、ロシアに武器を送ることは米国とヨーロッパを深く警戒させるだろう。
バイデン大統領は、習近平に、そのような動きは北京が一線を越えようとしていると信じていることを明らかにした。
クレムリンのスポークスマンは、王毅氏がモスクワ滞在中にプーチン大統領と会談する可能性があると述べた。
【コメント】
世界の三大軍事大国が巻き込まれた軍事紛争になる恐れがある事態だ。「まさかの時の友が真の友」ということわざからすれば、中国はロシアを軍事支援する可能性は高いと見る。

3.また地震発生
【記事要旨】
46,000 人以上が死亡し、100 万人以上が家を失った強力な二重の地震の 2 週間後、マグニチュード6.3の地震が既に多数の建物が倒壊しているトルコ南部とシリア北西部を揺るがした。
新しい地震は、生存者の間でパニックを広げた。彼らの多くは、怖くて建物の中に入ることができないため、テントに滞在したり、車の中で寝たりしている。
シリアでは、反乱軍が支配する地域混乱が広がっている。
アンカラ訪問中、ブリンケン米国国務長官は、トルコの復興を支援し続けることを約束したが、F-16 の売却と NATO をめぐる論争には進展の兆しは見られなかった。
【コメント】
胸が痛むニュースだ。何とかしたいが何も出来ないのがもどかしい。

その他:
イスラエルでの抗議デモ
Tens of thousands of protesters gathered in Jerusalem as Israeli lawmakers prepared to hold the first votes on bills that would curb the judiciary’s power.
カンボジアの美術品
Cambodia said it had recovered 77 gold relics from the collection of a British art dealer, who died in 2020 and was accused of antiquities trafficking.
ミラノのドゥオモ
The Duomo, Milan’s beloved landmark, has needed constant care basically since 1386, when construction began.
The cathedral is crafted from rare, pink-hued marble that is particularly fragile. Now, climate change and pollution are adding to the challenges of preservation.

2023年2月21日 火曜日

世界の動き 2023年2月20日 月曜日

今日の言葉
「ミサイル着弾」
 北朝鮮からの大陸間弾道弾が松前町の沖約200KmのEEZ内に着弾した。落下する火球の映像が捉えられ、ミサイルの脅威が実感された。
 誤って日本の国土に落下するような事態にはどう対応するのか、国防の大筋を決まる以外に、緊急時の対応も決めておかないといけないと痛感した。

ニューヨークタイムズ記事
1.米国と中国の貿易のとげ
【記事要旨】
 ブリンケン国務長官は、中国がロシアに武器やその他の援助を与えることを検討していると米国は信じていると述べ、そうすることがすでに緊張している米国との関係に「深刻な問題を引き起こす」だろうと中国に警告した。
 このコメントは、ミュンヘンで開催された年次安全保障会議で、中国の 王殻Wang Yi と辛辣なやり取りをした翌日に出された。
 会議の数時間前、王は気球を撃墜するという米国の決定を「ばかげてヒステリック」と呼んだ。 彼は、気球がコースから吹き飛ばされた「民間の」調査機であったという中国の主張を倍増させた. 会議で米国は、ブリンケン氏は、米国を横切る中国の監視気球の飛行は「二度と起こしてはならない」と述べた。王から「謝罪はなかった」と述べた。
 気球飛行の後、ブリンケンは国務長官による数年ぶりの中国訪問をキャンセルし、新しい日程については何も述べられていない。
 米国と中国は、周回衛星の下に設置する新しい高高度防衛システムをテストしており、米当局者は「近距離宇宙」をめぐる競争で中国が先行することを懸念している。
【コメント】
 中国の悪びれない態度は外交交渉の鏡だ。

2.プーチンのスピンの年
【記事要旨】
 金曜日は、ロシアのウクライナ侵攻から 1 周年だ。過去1年間、軍は挫折に次ぐ挫折に見舞われてきたが、プーチン大統領は戦争を利用して、国内でさらに支配的になった。
 から、プーチン大統領は侵略をロシアのアイデンティティのためのほぼ聖戦と見なしていた。 彼はそれをナチスとの戦いと絶えず比較しており、モスクワの博物館にある展示品は「NATOzism」と題されている。
 こうした考えは日常生活に浸透している。学童は、ロシアが常に人類を「世界征服を求める侵略者」から解放してきたことを学び、缶を集めて兵士のためにろうそくを作る。美術館や劇場は、かつては芸術的自由の場としての地位を失った。
 しかし、ほとんどのロシア人にとって、それ以外の生活は続いている。 経済は、アナリストが予測したよりも経済制裁の下で苦しんでいない。西側指導者たちは、「必要な限り」ウクライナを支援することを約束した。
【コメント】
 ロシア人は耐乏生活に強いとつくづく思う。この強さが第二次大戦中はスターリンを支え、今はプーチンを支えている。

3.アジアの高齢化社会
【記事要旨】
 東京支局長のモトコ・リッチは、韓国、中国、そして特に人口のほぼ 3 分の 1 が 65 歳以上である日本で人口動態の危機が迫っていることについて述べた。
 根本的な理由、考えられる解決策、および子供たちが都市に移動するときに高齢者が直面する孤立について話した.。
 人口の高齢化がそれぞれの国内で問題を引き起こす理由を理解しても、 他の場所に住んでいる人々にとって、それは何を意味するのだろうか?
 あなたも無関係ではない。 米国の人口増加は極めて低いレベルにある。 イタリアの人口は、西部で最も急速に高齢化している。他の国はアジアに目を向け、何をすべきか、何をすべきでないかを見るだろう。
 この問題は、人々が気候変動をどのように見ていたかを比較することができる。それは何年もの間起こっていたが、私たちは注意を払っていなかった。 社会は高齢化に対して計画を立てる必要があるが、そのための準備が整っていない。これは直面する危機ではなく、ゆっくりと進行する危機だ。
【コメント】
 街を歩くと確かに老人ばかり目につく。自分もその一人なのだが。健康年齢を高める努力をし、なるべく長く働く必要があるのではないかと思う。個人の為にも逼迫する年金財政の為にも。

その他:
北朝鮮のミサイル発射
 North Korea launched an intercontinental ballistic missile after warning of strong countermeasures against joint military drills by the U.S. and South Korea.
豪州で溺れる人が増加
 In the past two years, drownings have spiked in Australia. Experts blame canceled swimming lessons during the pandemic and an increase in people swimming in locations without lifeguards.
トルコの地震続報
 Turkey’s economy was already struggling. Now, the staggering cost of reconstruction and slowed growth add to President Recep Tayyip Erdogan’s challenges before an election in May.
Tents, gymnasiums and a cruise ship are part of the struggle to shelter about one million now-homeless people in Turkey.

2023年2月20日 月曜日

長命な米国大統領

 1977年から1981年まで第48代大統領をつとめたジミー・カーター氏は現在98歳で、歴代大統領では最長命だ。今日の報道では自宅をホスピスにして天寿を全うする意向のようだ。

 カーターの後で大統領をつとめ既に無くなったレーガンは93歳で、パパブッシュは94歳で亡くなった。カーターには及ばないが長命だった。

 その後大統領をつとめたクリントンとジュニアブッシュはいずれも1946年生まれ。その後のオバマは1961年生まれで若いが、トランプは1946年生まれでクリントンとジュニアブッシュと同年齢。バイデンは戦中の1942年生まれだ。

 これらの人々はまだとても元気であり、カーターを上回って長生きする可能性が高いと思われる。カーターの記事を契機に、激務の米大統領がとても長命なのがわかった。長命の秘密は何だろうか。

2023年2月19日 日曜日

パワーハラスメント考

 職場でのハラスメントで一番ポピュラーなのがパワーハラスメント(通称パワハラ)だろう。

【パワハラとは】
 職場での立場や人間関係などの優位性を利用して、他者に肉体的・精神的な苦痛を与えることをいう。パワハラは上司が部下に対して行うと思われがちだが、先輩やある特定の技術能力が高い人、周囲の協力を得なければ業務を円滑に遂行できない場合には、同僚や部下なども「優位的な立場にある社員」となりパワハラを行う側に回りうる。
 人手不足によるストレス過多やリモートワークの進展といった労働環境の変化などにより、パワハラは増加傾向にある。社会耐性の低い人間が増えたことも増加の大きな要因だ。

【指導かパワハラか】
 よくある思い違いは、パワハラと指導の違いだ。その「目的」「業務上の必要性」「結果」の観点で比較するとわかりやすい。
 指導は相手の成長を促したり、業務状況の改善を促す目的で、業務上必要性が明確な指示やフィードバックを行う行為であり、その結果相手が職責を果たせたり、業務状況が改善することをめざして行う。
 一方、パワハラは、相手を自分の思い通りにすることを目的とし、人格の否定するなど業務の適正な範囲を超えて威圧的な態度や否定的言動を取ったり、技能に合わない過剰な量や内容の業務を指示し、結果として相手の心身を傷つけたり、職場環境の悪化や退職につながる行為を示す。
 つまり、相手の立場や状況を無視した業務と関係のない言動は「パワハラ」であり、業務遂行上の必要性があり、明確な目的や理由を持って相手のために行う関わりは「指導」だといえる。
 ただし、行う側は指導のつもりでも、受け手側がパワハラと感じる場合もあるので注意が必要だ。

【厚生労働省いうパワハラ概念】
 厚生労働省では職場のパワハラの概念として、次の3つの要素のいずれも満たす場合と規定している。
1.職場における優越的な関係を背景として行われること
2.業務の適正な範囲を超えて行われること
3.労働者の就業環境を害すること

【同 パワハラ行為類型】
 具体的なパワハラに該当しうる行為としては、厚生労働省が提示している6つの行為類型がある。すべて「優越的な関係に基づいて行なわれた行為」であることが前提となっています。何がパワハラに該当するのかを判断する基準にもなる。
1.身体的な攻撃
 相手を殴る、蹴る、物を投げつける、胸ぐらをつかむ、大声で怒鳴りつけるなど、身体的な攻撃をする行為。相手がけがをした場合や心身に不調をきたした場合は傷害罪に該当する場合もありうるが、故意ではなくけがをさせてしまった場合はパワハラに該当しないケースもある。
2.精神的な攻撃
 長時間にわたって相手を執拗に叱責する、人格を否定する、人前でなじったり侮辱する、「馬鹿」「死ね」「辞めてしまえ」と言うなどの場合が該当する。大勢を宛先に含めたメールの中で罵倒したり、解雇を匂わせる文言を入れるなどもパワハラに該当する。
3.人間関係の切り離し
 一人だけ別室に隔離して仕事をさせる、ミーティングや職場イベントの日程を故意に教えない、または出席を認めない、あいさつをされても無視するなど、同僚や上司との接点を意図的に切り離すことをいう。
4.過大な要求
 本人の能力を考慮せず高度なスキルや熟練がなければできない仕事を強制する、適切な指導をせずに業務を丸投げする、物理的に不可能な業務量を押しつける、不要な残業や休日出勤を強制するなどは過大な要求と見なされ、パワハラになる。私的な雑用を強要することも過大な要求といえる。
5.過小な要求
 合理性なく本人の能力や職能を極端に下回るような仕事しか与えない、あるいは担当職域に関連した仕事を全く与えないことなどもパワハラといえる。例えば専門職の社員に雑用やお茶くみしかやらせない、特定の社員に気に入らないなどの理由で仕事をまったく与えないなどが該当する。
6.個の侵害
 部下が嫌がっているのに執拗に恋愛や結婚生活、休日の過ごし方などについて尋ねたり、セクシャリティや宗教などの個人情報を周囲に吹聴する、プライベートでの付き合いを強要するなどの行為は、プライバシーの侵害としてパワハラになり得る。業務上の配慮をするために家族の状況を質問する、長期休暇前に海外渡航の予定を確認するなど、業務管理上必要な情報を聞くことは該当しない。

【企業が取るべき対策】
1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
 経営トップが、パワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す。就業規則等でパワーハラスメントの禁止や処分に関する規定を設ける。
2.相談に応じ適切に対処するための体制の整備
 相談窓口をあらかじめ定め、全従業員に周知する。相談窓口担当者が相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにする。
3.事後の迅速かつ適切な対応
 相談後、パワハラに関する事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実確認ができた場合は、すみやかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行い、再発防止対策を講じる。事実確認ができなかった場合でも、再発防止対策と同様の措置を講じる。
4.パワハラ相談を理由とする不利益取り扱いの禁止プライバシーの保護
 相談者・行為者等のプライバシー保護のための措置を講じ、その旨を従業員に周知する。 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益な扱いをされない旨を定め周知する。

【実際に起きたら】
 パワハラ事案はどこにでも起こりうる。パワハラ事案の萌芽に対しては、適切な部門が(社内では内部監査部や監査役、社外では顧問弁護士)対応することが肝要だ。
 事実関係の確認をなるべく早く行い、指導かパワハラかの判断を客観的な視点で行うべきだ。
 法律的にもめるケースも多いので、労務に詳しい弁護士からのアドバイスを受けながら対応したい。

2023年2月18日 土曜日