取締役会考 (備忘録的メモ)

 企業経営者の独走による不正を防ぐのがコーポレートガバナンス・コード(CGC)が我が国で導入された主目的で、そのための有効な手段は、社外役員を登用し経営者へのコントロールを効かせるということだった。

 これは有効な手段だったとうか? そうでもなさそうだ。

 例えばトヨタ自動車の取締役会を見てみよう。取締役は10名で、その内4名が社外取締役だ。社内の6名は豊田会長の考えと金太郎あめ的な考えだ。仮に社外取締役4人が団結して何かを提案しても、社内の同意が無ければ過半数を取れず、考えは通らない。

 経営について何か社外役員がアドバイスしようとしても、事業に詳しいのは社内の人達だから、耳を傾けられることは希だ。特に創業経営者が率いる企業では、社外からのコメントは無視されることが通例だ。仮に「胆力があり優秀な社外取締役」が会社のことを思ってアドバイスしたとしてもだ。

 社外役員がとても「有名」な人でも、大して有効に機能しない。伊藤レポートで有名な一橋大学の伊藤教授は、東レで社外役員をしていたが、品質不正を防げなかった。小林製薬では、死者まで出した製造管理への目効きが全く疎かになっていた。

 では社外役員は全く役に立たないかというと、そうでもないと思いたい。
 ・ジュニアレベルの社内取締役や執行役員のなかで
  優秀な人材を見つけ次世代のトップ経営者に育てる
 ・報酬体系を見直し、業界他社を圧倒する人材獲得と
  維持に資する体系を構築する
 ・法律を守るだけの狭いコンプラインスを脱し清廉潔白な
  社風造りに協力する
 というようなことは、社外役員が主導して出来ることのようにも思われる。

 トップ経営者が聞く耳を持つ開明的な人かどうかに大きく依存するのだが、「たかが社外取締役、されど社外取締役」という程度の意義はあると信じたい。

2024年8月25日 日曜日