国債の格付けとCDS

 国債格付けとは、格付け機関が国債の信用リスクを評価して、その国が発行した国債の返済能力を示す評価のことである。 格付け機関は、各国の経済状況や財政状況、政治状況などを総合的に分析して、国債の信用リスクを評価し、投資家に情報を提供している。格付けは格付け機関による意見だが、債券の信用リスクを知る上で重要な指標の一つである。格付けが下がれば、国債での調達コストが上がることになる。

 世界的に有名な格付け機関にMoody’s、S&P, Eitchがあるが、3機関からAAAを得ているのは、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、オーストラリア、スイス、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、シンガポールの9か国。米国はAAAが1機関、AA+がニ機関の11位。韓国はAAが1,AA-が2機関の15位。中国はA+が3機関の23位。そして日本は、A+が2,A-が1機関の25位だ。

 こうした状況を背景に、寺島実郎が27日のサンデーモーニングで、日本の信用力は韓国中国より下と発言したらしい。この発言を私は聞いていないが、高橋洋一が市場を知らぬ素人の発言と揶揄していた。

 高橋によれば、市場取引のプロが気にするのはCDSであり、CDSでは日本の信用力は中韓よりはるかに上で全く心配ないという見解だ。

 CDS取引は、主に金融機関同士の相対取引で行われている。CDS取引においては信用リスクをヘッジしたい主体(プロテクションの買い手A)が、信用リスクを取ろうとする主体(プロテクションの売り手B)に、取引期間中、定期的に保証料に相当するフィー(以下「固定クーポン」という)を支払う代わりに、対象となる信用リスクの主体(以下「参照組織」)に一定の事由(破産、債務不履行、債務の条件変更など。以下「クレジット・イベント」)が発生し、それが客観性を持って参加者に認められた場合、プロテクションの売り手と買い手との間で決済がなされる。期間中にクレジット・イベントが発生しなければ、プロテクションの売り手Bから買い手Aに対する支払いは発生せず、プロテクションの買い手Aから売り手Bに対して固定クーポンが支払われるのみで契約は終了する。

 寺島と高橋、立場の違いで、使うツールが異なり、結論も異なることになる。避けたいのは立場の違いで結論の違う人を馬鹿だの素人だのと呼ぶことだ。

2023年9月30日 土曜日