マスクから考える

先週後半は那須に行っていた。東京よりだいぶ寒いが薪ストーブを燃せば家全体が暖まり快適だ。人も車も少なく夏より冬の那須が好きだ。

那須に来た理由の一つがマスクだ。東京ではすでに払底しているが人口密度の低い那須ならまだあるだろうという読みだったのだ。
全く甘かった。イオンやドラッグストアを見たが全くない。ダイソーで1人ひと箱(30枚入り)という制限付きのを見つけ購入した。翌日には売り切れていたが。

Amazonで今見ても、普通価格の10倍程度で売られている商品が大半だ。マスク不足に付け込んでずる賢く立ち回るやからは腹立たしいが、これは資本主義の本質だ。
需要曲線と供給曲線が交わるところで価格が決まるという経済学の基本が見事に成立している典型だ。いずれマスクが増産され市場に出回るか、マスクの効果は限定的だと人々が感じれば価格は下がってゆく。

中国のように公共交通に乗る際にはマスクは必須というルールにすると、貧乏人は、政府からの供給を待つか、マスクが手に入らなければ自宅にいる以外に手はない。

武漢の病院の様子がSMSを通じて世界に広まっている。
薬も注射もない開放的なスペースに患者が放置されている映像だ。強制的にアパートから連行される映像もある。まるで映画のバイオハザードを彷彿とされる状況だ。

共産党の幹部などはどうしているのだろうか。手厚い看護を受けているに違いない。階級(に基づく経済力)の違いによってパンデミックを生き残れる可能性に大きな違いがある。

日本ではダイヤモンドプリンセスのニュースで持ち切りだ。(三菱重工が建造中に火災を出した曰く付きの船で私ならこの船は避けただろう)
豪華客船での船旅を楽しんでいた経済的に余裕のあると思われる人たちに不幸が降りかかったのは非常にアイロニカルだ。

高い価格を払っていたベランダ付き船室の客のほうが、窓の開かない船室や、窓のない内側の客よりも、幽閉中も快適に過ごせているようだ。ここでも資本主義の原則が働いている。

今回は豪華客船は幽閉の場になり、おそらく感染したクルーにより伝染が加速され、悲惨な状況だ。同情を禁じ得ない。

今回の事象を教訓に、全く逆の発想もできるだろう。
パンデミックが世界中で大流行した際に、この船は、ウィルスから完全に隔離されていますという豪華客船が現れれば代金はいくらでも乗船したいという富裕層が現れると思われる。

或いは、殺菌装置の行き届いた高級コンドミニアムやホテルのニーズも富裕層に高まると思われる。ここでも資本主義の原則が働いている。

さてさて、更によく考えると、資本主義の原則が機能している間はまだましなのかもしれない。お金があれば何とかなるからだ。
お金以上に思想や武力が機能し始めると本格的なカタストロフィーの始まりだろう。注意して今回のパンデミックの行方を見守りたい。

(2020.2.10)