駐日アメリカ大使が2年5か月振りにやっと決まった。Rahm Israel Emanuel氏。この名前を見て気が付くようにバリバリのユダヤ系の人だ。第55代シカゴ市長、バラク・オバマ政権にて第23代大統領首席補佐官などを歴任したコワモテの政治家らしい。
Wikipediaで見ると、イスラエルとの2重国籍で、1991年の湾岸戦争にはイスラエル軍にボランティアで参加したシオニスト、という説明になっている。
今日はエマニュエル大使に因んで三題ばなし。
1.二重国籍について
エマニュエル大使の経歴を読んで驚いたのは、イスラエルとの二重国籍でも大使に任命されていることだ。日本では蓮舫議員が問題になったように、日本国籍一本でない二重国籍人間は忠誠心に懸念があるという考えが一般的だろう。そもそも日本の国籍法は二重国籍を禁止している。
こうした懸念は二つ目の国籍が主な国籍に反する作用をする恐れがあると思われるからであろう。エマニュエル大使で言えば、日本がイスラエルとアラブの係争に巻き込まれそうになる時に、エマニュエル大使はイスラエル側の利益代表になり日本のスタンスと衝突することは無いのだろうか? アメリカとの関係でも、トランプのようにバリバリの親イスラエル政権ならアメリカの国益と大使の考えはシンクロするだろうが、アメリカと大使のスタンスに、また同盟国日本のスタンスとの間に利益相反が起こる恐れは皆無であろうか?
Wikipediaで調べると、「オーストラリア、フィジー、ニュージーランド、フィリピン、サモア、バヌアツでは、二重国籍が認められている。 フィリピン、オーストラリア、フィジーでは二重国籍が認められているが、公職者になることは禁止している」という記述がある。 公職者になることは禁止するという取扱いが妥当と思うがいかがなものであろうか。
2.外交に大使は必要ないか?
今回の2年5か月の不在は長いが前任のハガティ大使も、ケネディ大使の離任から7か月経ってやっと着任した。今回は2年5か月というかくも長き不在だったが外交に影響はないのだろうか。
慰安婦像が釜山の日本領事館前に設置されたのに抗議して日本政府は駐韓大使を召還した。2017年2月のことだ。(そういえば最近報道が無いが、まだあの慰安婦像は設置されたままのようだ。日本政府の”強い抗議”はどうなったのだろうか)また、潜水艦建造の契約破棄で、フランスは駐米、駐豪大使を召還した。いずれも強い意思表示だと言われるが、不在でも問題ないポジションだとしたら、形式上の意思表示という以上の物ではあり得ない。
外交プロトコール上、例えば、駐日大使は日本の外務次官と、駐米公使は局長と話をするとかいうレベル合わせの決まりがあるのかもしれないが、あまり不自由はなさそうだ。
大使にビザ発給権限があるのならば(あるいは有ることにして)、駐韓大使が不在なので韓国人に訪日ビザを発給できない、とか言うことになれば大使がいないことを外交上のレバレッジに使えるかもしれないが、どうなのだろうか。
3.エマニュエルという名前
エマニュエルはイマニュエルから派生した名前だ。イマニュエルは、ヘブライ語で「神は我とともに」という意味で、イマニュエル・カントが有名だ。
いまでは、キリスト教徒にポピュラーな名前で、歴史学者エマニュエル・トッド、仏大統領エマニュエル・マクロンらが容易に思いつく。女性でも男性でもある名前で、女性名ではeが付く。
エマニュエル大使はラストネームがエマニュエルだ。エマニュエルというと、どうしても映画「エマニュエル夫人」を思い出す。このエマニュエルはラストネームかと思うと、そうではなくファーストネームだ。ちなみに、エマニュエル夫人の原作を書いたのはエマニュエル・アルサンというタイ出身の女性作家だ。
(2022.1.24 Monday)