世界の動き 2023年9月13日 水曜日

今日の言葉:
「内閣改造」
当選5-6回で大臣未経験者をどのように遇するかを重視する日本的な人事だ。あまり変わり映えしないようなので岸田政権の支持率に変化はないだろう。

ちょっとどうかなと思ったのは、主要閣僚が留任する中で、林外相が外れることだ。G7,G20,ウクライナ問題、対中交渉で、林外相は名前と顔を売ってきたと思うのだが、何故上川さんに替わるのか理由がわからない。

因みに英語ではcabinet reshuffleと表現し、椅子の取りっこという感じが伝わる言い方だ。

財政再建、金融政策の正常化、原油価格の増嵩、原発への対応、防衛力の効率的な改善。このような国家的な課題に、新しい閣僚が対応できる能力があるようには見えない。岸田首相の言う適材適所はどうなっているのか。適材も既に払底しているということだろうか。

ニューヨークタイムズ記事より
1.リビアの洪水で5000人以上が死亡
【記事要旨】
リビアでは沿岸都市デルナ近郊の2つのダムが大雨により決壊した洪水で、数千人が死亡、さらに数千人が行方不明となっている。
洪水により建物は崩壊し、車両は沈没し、道路は遮断され、デルナの近隣地域全体が海に押し流された。 市内だけで少なくとも5200人が死亡、2万人が避難した。
リビアは、先週ギリシャ、トルコ、ブルガリアを襲い、十数人が死亡した後、日曜日にリビアに上陸した「ダニエル」と呼ばれる嵐への備えが不十分だった。
リビアは、トリポリに本拠を置く国際的に認められた政府と、デルナを含む東部の地域との間で長年にわたり分断されてきた。捜索・救助活動をどのように調整していたのかは不明だ。
洪水は、気候変動が政治紛争や経済的失敗と組み合わさって災害の規模を拡大する可能性があることを浮き彫りにした。
モロッコの地震の援助関係者らは、犠牲者を救出する希望は薄れつつあると述べている。 モロッコ内務省によると、死者数は少なくとも2,901人、5530人以上が負傷した。
ムハンマド6世国王の目立たなさと沈黙、地震に対する政府の対応が批判されている。
【コメント】
リビアの状況は酷い。町全体が洪水で押し流された模様だ。カダフィ後の政治の混乱が、この天災に人災の要素を加えている。

2.グーグルへの裁判が始まる
【記事要旨】
インターネット時代におけるテクノロジーの力をめぐる最も重大な裁判で、冒頭陳述が始まった。
米政府は、グーグルがその豊富な資金と支配的な地位を利用して権力を強化し、スマートフォンのデフォルトの検索プロバイダーとしてアップルなどに年間100億ドル以上を支払っていると非難した。 政府によると、グーグルはこれらの協定をライバルを排除するための「強力な戦略的武器」とみなしているという。
Googleは、検索競合他社を排除するために契約を違法に利用したことはないと主張し、単に優れた製品を提供しただけだと述べ、人々は使用する検索エンジンを簡単に切り替えることができると付け加えた。 裁判は今後10週間にわたって行われ、最終判決はテクノロジー業界の力のバランスを変える可能性がある。
【コメント】
確かに各社がいろいろな機能でデフォルトの獲得合戦をしている。ただ、検索エンジンに限ればグーグルの使いやすさと優秀性は群を抜いているように思う。Bingは検索のフィット感が悪い。AIもChatGPTの方が遥かに機能的に優れていると思う。

3.アームの巨大なIPO
【記事要旨】
何十年にもわたって携帯電話の動作方法を定義してきた英国のチップ設計会社アームは、木曜日にナスダックに上場する準備を進めている。 評価額は520億ドルで、2023年の新規株式公開としてはこれまでで最大となる。
アームの年間売上高は 30 億ドル未満だが、史上最も広く使用されているコンピューティング アーキテクチャの開発者として、地政学的に計り知れない複雑さに直面している。 今回のIPOは、アームがこれらの課題を乗り越えて新しい市場に参入できる能力を示すものとなるだろう。
ソフトバンクの最高経営責任者でありアームのオーナーでもある孫正義氏は、2016 年に買収したチップ設計会社が AI の成果を享受する準備ができていると信じている。
【コメント】
これで孫さんは一息つけるのだろう。アームにとっても公開会社としてガバナンスが効いていくのは会社にとっても良いことだろうと思われる。

その他:
金正恩の訪露
Kim Jong-un, North Korea’s leader, arrived in Russia, the Kremlin confirmed. He is expected to meet President Vladimir Putin today.
グローバルサウスとインドの立ち位置
As the power of the “global south” grows, India is positioning itself to be a better bridge to the West than China.
今度はバイデンの弾劾
Kevin McCarthy, the speaker of the U.S. House, ordered an impeachment inquiry into President Biden.

2023年9月13日 水曜日

世界の動き 2023年9月12日 火曜日

今日の言葉:
「円相場の行方」
 中国と日本の中央銀行が防衛線を張り、ドルの記録的な上昇にブレーキがかかった。中国人民銀行は投機的投資家に対し、人民元を不安定化させないよう強く警告。日本銀行の植田和男総裁は、賃金と物価の好循環を見極める情報やデータが年内にもそろう可能性があるとの見解を示し、市場は政策正常化の前倒しを意識し始めた。(Bloomberg)
 植田総裁は金融緩和をにおわせる発言をしているが、これで円安に歯止めがかかるのだろうか。YCCのコントロールを緩和・正常化し、ゼロ金利を一部解除というのが見込まれる。しかし、物価上昇による金利上昇圧力は依然として米国の方が日本より高い。米国の金利が上昇すれば円相場は軟調になるのは間違いない。

ニューヨークタイムズ記事より
1.モロッコの地震被害額は増加
【記事要旨】
 地震による死者数が少なくとも2,862人に上り、多くの被災者が懸命に助けを待っている中、モロッコ高官は、援助のペースに対する世論の批判の中で当局が迅速に災害に対処したと主張した。
 地震に見舞われた3日後、昨日、政府の救助隊員が一部の荒廃した山村への到着を開始した。 多くは電気も電話も使えず、政府の対応に対するソーシャルメディアでの批判が高まった。
 アルハウズ州の山の麓の町では、多くの救急車と救急隊員が路上に出ており、災害救助用のテントで避難している生存者の方が多いようだ。
 家が日干しレンガでできているいくつかの村では、半分の家が倒壊した。 公的援助の到着が遅く、政府は救助活動に関する情報をほとんど提供していないため、多くのモロッコ国民が見捨てられたと感じたと語った。
 モロッコでは権力が国王の手に集中しており、他の政府機関が麻痺する可能性がある。 政府は死傷者に関する最新情報を頻繁に提供しておらず、ムハンマド6世国王からのコメントもほとんど発表していない。
【コメント】
 被災者の生活は悲惨だ。個人で出来る支援をしたいものだ。

2.金正恩氏は近くロシア訪問を計画
【記事要旨】
 金正恩氏がプーチン大統領の招待でロシアを公式訪問すると両国政府は昨日発表した。 クレムリンは訪問が「数日以内に」行われると予想していた。
 米国関係者が先週ニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、両首脳は、北朝鮮がウクライナ戦争に向けてさらに多くの武器を供給する可能性を含む軍事協力について話し合う予定だという。 その見返りとして、金氏は人工衛星、原子力潜水艦、食糧援助のための先進技術を希望していると当局者らは述べた。 この会談は、現在は控えめな貿易関係を変える可能性がある。
 諜報機関はキム氏の旅行に関する手がかりを得るために、彼の謎の防弾列車の行方を調べている。
 米国の共和党議員の中にはウクライナの戦争努力への資金提供をやめたいと考えている者もいる。
【コメント】
 ウラジオストックで両首脳は満面の笑みで握手していた。現在の世界のならず者国家No1とNo2がくっつくのは不安を高める。格下の北朝鮮に軍事支援を仰がないといけない状況にロシアは追い込まれている印象だ。

3.iPhoneへの警告はAppleに中国で損害を与える
【記事要旨】
 Appleは本日、新しいiPhone 15を発表します。 しかし、重要な市場である中国では、一部の政府職員が仕事でiPhoneを使用しないよう指示を受けたと述べた。中国内のインターネットユーザーらも、政府職員や国有企業に向けたデバイスの使用禁止の通知が含まれているとされるアカウントやスクリーンショットを拡散させている。
 中国政府は10年にわたり当局者による外国製電子機器の使用を阻止してきたが、新たな規制の報道はアップルの投資家を動揺させている。 アップルが中国市場で地位を失う可能性があり同社の株価は下落した。
【コメント】
 アップルの売上の20%以上が中国のようだ。当局の圧力にも負けず若者がCoolだと思って使い続けるだろうか。安価で高性能な中国製に乗り換える可能性が高いだろう。

その他:
アリババのCEOが辞任
 Daniel Zhang, the departing chief executive and chairman of the Chinese tech giant Alibaba, also stepped down as head of its cloud division.
ハワイの火山噴火
 Kilauea, Hawaii’s most active volcano, erupted for the second time in three months on Sunday.
中国政府の服装統制
 Beijing may ban clothes that “hurt the feelings of Chinese people,” and Chinese citizens are outraged. The ban could result in detentions and fines for clothes seen as “detrimental” to China’s spirit, but what was considered offensive was not specified.
(この記事には絵があり服装の一つに和服があげられています)

2023年9月12日 火曜日

世界の動き 2023年9月11日 月曜日

今日の言葉
「9-11」
 その日の日付と共にその日何をしていたか鮮明に思い出す日がある。
 私にとっては、JFKが暗殺された日、9-11, そして3-11だ。
 9-11から22年経ったが、世界のテロの恐怖は収まらず、核戦争の現実味も増している。それでも我々は余り心配せずに暮らしている。

ニューヨークタイムズ記事より
1.モロッコの地震
  救出が急がれるが山間部の現場での救助活動は困難だ。

2.バイデンはベトナムとの関係を強化
  敵の敵は味方という考えを共有し、米国とベトナムは接近している。

3.ロシアの死の商人が立候補
  米との捕虜交換で帰国したビクトル・バウト氏が地方政府に立候補している。自民党とプーチン支持の野党からだ。

その他
・米企業は対中ビジネスに苦慮
・豪は野良猫の増加に悩む
・ハワイでの結婚式再開は地方経済の助ける

今日は、車中で作業し、一度完成しましたがアップロードできず無駄になりました。
大急ぎで簡易版を作成してみました。ご容赦下さい。

2023年9月11日 月曜日

孤独への対処法

「孤独と言う病」と言う本がベストセラーになったのは2022年のことだ。Amazonで説明文を見ると以下のようになっている。

 『いま、日本人の約4割がなんらかの形で孤独を感じているという。
 心身の健康リスクをもたらし、テロや無差別殺傷の引き金にもなるといわれる“現代の伝染病”が、私たちに不安や寂しさを抱かせる理由とは?
 「孤独の起源」を読み解くヒントは、人類の祖先が狩猟採集を行っていた時代の生活様式にあった。
 現代を生きる我々は「ひとりぼっちを回避することによって生き延びた人びと」の末裔(まつえい)なのである――。
 他生物との比較を交え、気鋭の生物学者が解き明かす、知られざる孤独の正体と処方箋!』

 病気を防ぐには免疫力を高めるのが良いと言われるが、最も低める要素が孤独だそうだ。煙草より、過食より、自堕落な生活より、孤独が悪いらしい。

 欧米では孤独とどう向き合っているのか。NY Timesにコラムが乗っていたので紹介したい。

 『社会的孤立は稀な病気であるが、その治療法は十分に知られており、比較的費用もかからないにもかかわらず、治療は依然として非常に困難だ。
 は不可解だ。 私たちは社交的な生き物として進化してきましたが、豊かになるにつれて、家の中にプライバシーを求める衝動に駆られる。大家族が共有スペースに集まる代わりに、私たちは自分の寝室に住んでいる。そして、この生活スタイルを賄うために、私たちは長時間労働している。そのため、グループで食事をしたり、友達と遊んだりする時間がなくなる。 アメリカ人の大多数が孤独であると報告するのも不思議ではない。
 私たちはまた、孤独が致命的であることも学びつつある。 それは脳卒中、心臓病、認知症、炎症、自殺と関連している。 米国の公衆衛生局長は、孤独は1日15本のタバコを吸うのと同じくらい致命的であり、肥満よりも危険であると警告している。
 孤独の蔓延が先進国全体を襲っているが、解決策はある。 英国は、2018年に孤独担当大臣を任命し、その先導に貢献している。
 たとえば英国では、人々がそこに座って、そこに座っている他の人と会話を始めることを奨励する「おしゃべりベンチ」を設置した。 他のコーヒー愛好家との会話を奨励する「おしゃべりカフェ」もある。 そして、近所の人たちがお互いにキャンプ用品や道具を貸し合い、その過程で絆を育む「モノの図書館」。 英国人は、人々を孤立から解放するために地元の自然散策、作詞ワークショップ、ゴミ拾いのボランティアなどを企画している。 その規模は驚くべきもので、英国では 5 月の 1 日に約 600 万人が「The Big Help-Out」にボランティアとして参加した。
 米国はこれらの実験から学ぶことができる。 アメリカ人は、細分化し二極化し、依存症と苦悩を抱えた孤独な集団である。 私たちの幸福のために、私たちはお互いを必要としている。
 私のコラムが今後の道を照らすのに役立つことを願っています。 それで、それをチェックして、え ー、それについて友人とチャットすることを検討してください。』

 英読んで国の孤独担当大臣については聞いた事があるがどんなことをしているかこの記事を読んで知った。

 日本のデイケアセンター活動を見ると孤独解消が機能の一部であることがわかる。退職した男性の引きこもり解消が日本の場合は最大の課題になりそうだ。

2023年9月10日 日曜日

ガバナンスの日米比較

 『米国企業と比べ日本企業はガバナンスに問題あり!東証がいくら「PBR1倍割れ改善」を要請しても今のままならうまくいかない!』という見出しの記事がYahooの記事で目を引いた。

 著者はポール・サイというストラテジストだ。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。直近1年の推奨ポートフォリオが+50%超の投資助言メルマガ「米国株&世界の株に投資しよう! 」を配信中。ということで立派な経歴をお持ちだ。

 サイ氏の主張を長くなるが引用したい。主張ごとに私のコメントを付記した。
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●アメリカ企業は株主の事実上の力が強い。その一方、日本企業は会社を社員、お客さん、株主で共有している
 短中期的には株主の声が弱ければ、社員は解雇されづらく、より安定した状態でいられますが、中長期的には株主の声が弱く、ガバナンスが効いていなければ、会社はいずれ傾くことになって、社員は仕事を失うことになるでしょう。

 アメリカの場合、会社はどちらかというと株主の事実上の力が強く、会社は株主価値を創出するためのものと言えます。

 一方、日本の場合、ステークホルダー資本主義で、会社は社員、お客さん、株主で共有しているものになります。なので、投資家の視点から見ると、株主になるなら、米国株の方がいいことになります。株主の実質的な力が強くなければ、会社が儲けても、株主はあまり儲からないことがあるからです。

(水島コメント)
 アメリカの株主資本主義も近年大きく変化している。有名なJohnson&JohnsonのOur Credoには、企業の存在意義を、顧客、従業員、地域社会、株主の順に説明している。日本企業に似た考え方の米国企業も多いのだと思う。
 投資家の立場としては、ハンドルの遊びの少ない米国企業に投資するほうがその成否が早く表れるのは事実だろう。

 

●アメリカの株式会社における取締役会と株主の関係は、アメリカ大統領選における選挙人と有権者の関係に似ている
 先ほどアメリカ企業について、「株主の力が強く…」ではなく、「株主の事実上の力が強く…」と書いた理由は、法的な意味での「株主が持つ権利」は日本の方が強いからです。

 たとえば、アメリカではほとんどの株主提案は取締役会に対して「アドバイザリー」(勧告)の形をとります。つまり、ある提案に対して過半数の議決権行使があっても、法律上、取締役会はそれを無視することが可能なのです。

 ただ、アメリカの取締役会は独立取締役に支配されているので、問題視されている重要な課題があれば、株主提案でそれが指摘される前に取締役会は動こうとするものです。

 もう1つ、アメリカでは訴訟を起こす文化があって、取締役会が株主を無視したら責任を追求される恐れがありますので、取締役会は株主の意思に従うことが多いのです。

 アメリカの株式会社における取締役会と株主の関係は、アメリカ大統領選における選挙人と有権者の関係に似ているかもしれません。

 アメリカの大統領選は有権者の投票で直接決まるのではなく、最終的には各州の選挙人の投票によって決まることになっています。各州の選挙人は有権者による各州の選挙結果に通常は従いますが、厳密に言うと、それに従わなくてもいいのです。

(水島コメント)
 確かに米国では独立取締役が取締役会の大部分を構成している。その多くは、大学教授や企業経営者、ベンチャー投資家で独立性があるように見える。だが、実態はCEOの友人・知人で構成されている場合が多く、CEOと緊張関係にあるわけでは無い。
 社外役員は、世間の目には注意を払っており、CEOに注文することも多いが、それは日本企業でも同様だ。社外役員の人数の少なさを気にする向きもあるが、取締役会で少数派でも、言うべきことを言う社外役員は多く存在する。

 

●日本では問題があっても、株主主導での社長交代はほとんどない
 日本の公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)のファウンダー、ニコラス・ベネシュによると、アメリカの場合、社長交代は2年連続で選任支持率が90%を割り込むのを待つまでもなく、業績が悪化したり、倫理的な問題があれば、割と早めに行われるということです。

 一方、日本では問題があっても、株主主導での社長交代はほとんどありません。社長交代があったとしても、社内の事情で決められることがほとんどです。

 以下のグラフは日本企業のCEOの平均選任支持率の推移を示したものですが、グラフが示すとおり、2023年にはこの平均選任支持率が著しく低下しました。にもかかわらず、社長交代はほとんどありませんでした。

 2023年の90.5%というCEO平均選任支持率の数字は一見するとそこまで低く見えないかもしれませんが、日本では個人以外の友好的な株主の割合が高いため(以下のグラフが参考になります)、独立性がある株主のみで考えると、90%という数字は実質的には結構低いものになると私は推測しています。

(水島コメント)
 サラリーマン社長の場合、いろいろな要因に押されて自分からポジションを返上することは多いと思われる。昨日発表の有ったSOMPOジャパンの社長の辞任発表は良い例だろう。オーナー色の強い企業だとなかなか牽制が効かないのは事実だ。SOMPOジャパンでも持株会社の実力会長の櫻田氏がどのように自身にけじめをつけるかは注目だ。 

 

●アメリカのガバナンスは一段と株主寄りになっているが、日本のガバナンスはそうはなっていない
 もう1つ、少し古いものですが、Peters and Wagner(2014)の論文で使われたデータを紹介したいと思います。

 2007年に日本では448件の社長交代がありました。そのうち、強制交代の割合は18%でした。アメリカの場合は190件のうち、30%が強制交代でした。

 2000年から2007年のデータを見ると、アメリカの場合、社長交代に占める強制交代の割合がおおよそ日本の倍になっていました。アメリカの場合、社長交代のスピードが速いのです。

 アメリカでは、金融機関による企業の株の持ち合いが禁じられており、企業の主な株主は個人投資家、機関投資家(年金・投資信託など)です。このタイプの株主は高いリターンを得ることのみが保有目的ですので、ガバナンス、経営に対する要求はその目的に従ったようなものになります。

 なので、アメリカ企業のガバナンスは一段と株主寄りになっているのですが、日本企業のガバナンスはそうはなっていないのです。

(水島コメント)
 米国企業がハンドルの遊びが少ないのは事実で、とても良い点でり、投資家として評価できる点だ。
 ただ、日本企業のガバナンスがそれほど劣っているかと言えばそんなことは無いと思うし、そもそも企業パフォーマンスはガバナンスとそんなに相関関係が強いわけでもない。
 ユニクロやNIDECといったハイパフォーマーはよい例だ。

 

●東証による「PBR1倍割れ改善要請」はうまくいくのか?
 日本はPBR1倍割れの会社が多く、東証は日本企業のガバナンスをアメリカ企業のようなガバナンスに変えることなどで、低いPBRを底上げしようとしています。しかし、前述したような株主構成が変わらない限り、日本企業のガバナンスが変化することは考えづらいと思います。大きな利害関係が裏に存在しているからです。

 私たち個人投資家の利害関係は大手銀行・企業などと同じではありません。そして、ガバナンスは企業にとって重要であり、それゆえに株の長期パフォーマンスにとって重要です。

 株主主導のガバナンスに変化しない限り、日本の株式市場は個人にとって不利でしょう。一方、アメリカ企業のガバナンスは株主寄りであり、その度合いは世界一です。米国株が長期投資の対象にふさわしい存在である理由はいくつかありますが、ガバナンスが優れていることもその1つと言えます。

(水島コメント)
 PBR1倍割れは上場企業の異常事態であり、東証や金融庁が笛を吹いている現状では多くの企業のPBRが改善すると見ている。
 これまで、PBRや資本コストに注意を払って来なかった企業がファイナンス101に注意するだけでも事態は大きく改善するはずだ。
 サイ氏の悲観論に私は組しない。
 ただ、株式投資をするのなら、ダイナミックな市場である米国市場を外せないのは事実だ。

2023年9月9日 土曜日