世界の動き 2025年7月31日 木曜日

今日の一言
「金融機関でのAI活用」
 月曜火曜と金融財政事情研究会主催の「金融内部監査人養成講座」の講師を務めてきた。暑い盛りのため例年より少ない10人の参加を得た。機関別では地銀が4行、信金が2庫、労金が1庫からとなった。新任の内部監査担当役員からベテラン担当者の方々が参加され熱心に受講されたのは毎回同様だった。
 AIの活用状況をお聞きしたら、機関全体での利用が進んでいるという回答が地銀1行と信金1庫から出てきた。母数が7個と少ないので2/7という活用率について断定的には言えないが、徐々に進んでいるようだ。
 金融業はその均質性から規模の経済が顕著な業界だ。そうだとするとメガバンクが絶対に有利かというとそうでもない。高齢化と過疎化の進む今の時代は、顔の見える金融取引がますます重要になると思われる。
 AIを活用して事務の効率化で生まれた時間を渉外行員の能力アップ、特に法人顧客への業務アドバイス、個人顧客への資産運用のアドバイスに振り向けてゆくことで生き残って行くことが可能だ。皆さん、頑張りましょう!

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領、ブラジルに50%の関税を課す
【記事要旨】
 米国は昨日、ブラジルに50%の関税を課した。これはトランプ大統領が現任期中に他国に課した関税としては最高額となる。
 米国はまた、2022年の大統領選で敗北後にクーデター未遂事件を企てたとして告発されている、トランプ大統領の盟友であるジャイル・ボルソナロ前大統領の刑事事件を担当する最高裁判事にも制裁を科した。
 これらの措置は、トランプ政権とラテンアメリカ最大の国ブラジルとの間の危機を急激に激化させるものであり、数週間にわたりトランプ大統領に公然と反抗してきたルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領への明確な非難となる。
 トランプ大統領は、ブラジルがボルソナロ大統領への告発を取り下げなければ、金曜日に50%の関税を課すと警告していたが、これに先立ち、昨日、新たな関税に関する大統領令に署名した。
 新たな関税が発表される前にニューヨーク・タイムズ紙のインタビューを受けたルラ大統領は、トランプ大統領がブラジルを翻弄し、交渉の申し出を無視していると非難し、憤慨を表明した。
 「我々はこの問題を極めて真剣に受け止めている。しかし、真剣さは従順さを要求するものではない」とルラ大統領は語った。
【コメント】
 関税を自分の政治的主張を実現するためにトランプ大統領は乱用している。相互関税という名のもとに勝手な武器を振り回している。これに対抗するのは中国しか無い現実は悪夢だ。

2.インド、米国の関税脅威に直面
【記事要旨】
 トランプ大統領は昨日、米国との貿易協定締結期限である金曜日から、インドからの輸入品に25%の関税を課すと発表した。
 トランプ大統領はまた、インドの高い貿易障壁と、ロシアからのエネルギー・軍事装備の購入を厳しく批判した。この発表は、インドに協定締結のプレッシャーをかける可能性がある。25%の関税は、トランプ大統領が4月にインドに警告した関税率よりわずか1%低い。しかし、インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本など、トランプ大統領がこれまでに設定した他のアジア諸国の関税率(いずれも20%以下)よりも大幅に高い。
 インドは現在、米国にとって第12位の貿易相手国である。貿易協定への期待は高まっていたものの、ここ数週間、交渉は難航しているようだ。インド商務省は声明で、公正な二国間貿易協定の締結に引き続き尽力すると述べた。
【コメント】
 米中露と等距離外交を進めてきたインドは、今回のトランプの強圧をどのようにしのぐか見ものだ。

3.パレスチナ国家の承認とは一体何を意味するのか?
【記事要旨】
 英国とフランスはパレスチナ国家を承認すると表明した。両国の発表は、国家を承認することの意味と、実際に何を達成できるのかという疑問を提起した。
 承認は、各国がイスラエルとの二国間協定を見直すことにつながり、二国家解決への圧力を強める可能性がある。しかし、国連加盟国193カ国のうち147カ国と、大半の国が既にパレスチナ国家を承認している。こうした圧力にもかかわらず、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、安全保障上の脅威となるパレスチナ国家を容認することができていない。
 関連記事:トランプ大統領の中東担当特使、スティーブ・ウィトコフ氏は、ガザ地区の深刻な人道危機に対する国際的な怒りが高まる中、イスラエルを訪問する予定だった。
【コメント】
 そんなに多くの国がパレスチナ国家を承認していたとは驚きだ。
 同じ驚きは、2023年11月1日時点で、世界159カ国と国交を有し在外大使館を24か国に設置しているという北朝鮮についても感じる。

その他の記事
津波:ロシア近海で発生したマグニチュード8.8の地震は、記録上最大級の規模を誇り、太平洋沿岸で高潮を引き起こしましたが、被害は比較的少なかった。
旅行:ロンドンの2大空港、ヒースロー空港とガトウィック空港から出発する全便が、レーダーの不具合により昨日一時運休となった。
台湾:中国との繊細な交渉に注力するトランプ政権は、頼清徳総統に対し、ニューヨークへの寄港を中止するよう指示した。
セレブリティ:ケイティ・ペリーがモントリオールでジャスティン・トルドー首相と夕食を共にしたことに、アメリカとカナダは大きな話題となっている。
【コメント】
 Kety Perryさん 2008年にポップ・ロック要素を持つ2枚目のアルバム『ワン・オブ・ザ・ボーイズ(英語版)』を発売し、世界中で700万枚を売り上げて知名度を上げる。2010年の3枚目のアルバムでは5曲のシングルが全米1位を飾った。これはマイケル・ジャクソンの『バッド』以来で、女性アーティストとしては初の快挙となった。

ビジネス
・自動車:トランプ大統領の関税導入と中国における需要減速を受け、メルセデス・ベンツとポルシェは利益予想を下方修正した。
・テイクアウト:中国の食品宅配大手、美団(Meituan)は、香港への進出はグローバル成長計画の第一歩だと述べた。

2025年7月31日 木曜日

世界の動き 2025年7月30日 水曜日

今日の一言
「メラニア夫人」
今日はゴシップめいた話を取り上げる。米国のSNSを見ると多くがトランプ大統領とエプスタインファイルの関係を取り上げている。ダークステイトたる民主党がエプスタインと共におぞましい性犯罪を犯していたのを、正義のトランプが暴くのをMAGAは期待してたが、政権を奪取したトランプはなぜかエプスタインの調査資料(顧客リストが含まれる)の公表を拒んでいる。きっと彼の名前があるからだ。という記事が多い。
一歩踏み込んで、メラニア夫人の名前が挙がるPodCastが昨日から出てきた。彼女の経歴をWikipediaから見ると「ユーゴの大学を一年で中退後、モデルとして活動していた。1996年にユーゴスラビア内戦の影響で故郷を離れて渡米。2001年にはアメリカの永住権を取得し、2005年1月22日に90年代に知り合ったトランプと結婚した。結婚式にはトランプが過去10回献金してきたヒラリー・クリントンとビル・クリントンのクリントン夫妻が主賓で出席した。」とある。
1996年から2005年までの彼女の経歴は謎だが、美人モデル、外国人、エプスタインとトランプの親友関係という点と線を結ぶと、自身の秘密組織にいたメラニアさんをエプスタインがトランプに紹介したという推測が成り立ちそうだというストーリーを暗喩する記事も出始めている。
だとすれば、トランプ大統領がこれほどエプスタインのことを聞かれるのを忌避することがわかる。今後の進展に注目したい。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.停戦がなければ、英国はパレスチナ国家を承認する
【記事要旨】
英国のスターマー首相は昨日、イスラエルがハマスとの停戦に同意しず、ガザ地区に飢餓をもたらした戦争を停止しない場合、9月にパレスチナ国家を承認すると発表した。
スターマー首相は、停戦に加え、イスラエル政府は占領下のヨルダン川西岸地区を併合しないこと、そしてパレスチナ国家樹立につながる和平プロセスにコミットすることに合意する必要があると述べた。イスラエルがこれらの要求を受け入れる可能性は極めて低い。
スターマー政権は、ガザ地区の飢餓に苦しむ子どもたちの映像に英国民が反発する中で、政治的な圧力に直面している。「この状況は到底容認できない」とスターマー首相は述べた。

ガザに関するその他のニュース:
・国連が支援する食糧安全保障団体は、「ガザでは最悪の飢饉のシナリオが進行している」と述べ、ガザ保健省は戦争による死者数が6万人を超えたと発表した。
・イスラエルの極右派財務大臣ベザレル・スモトリッチ氏は、同国はガザの(イスラエル人)入植地再建に「これまで以上に近づいている」と述べた。
【コメント】
戦争がいかなる理由で始まったにせよガザ住民の生き地獄を救う方法を全世界で考えるべきだ。イスラエルによるホロコーストは容認できない。

2.中国と米国、貿易協議継続へ
【記事要旨】
米国と中国の高官は昨日、ストックホルムで2日間にわたる集中的な協議を行ったものの、貿易戦争を回避するための合意には至らなかったと発表した。しかし、8月12日に期限を迎える貿易休戦の延長について協議を継続することで合意した。
ベッセント米財務長官は「トランプ大統領と話し合うまでは合意には至らない」と述べたものの、大統領が中国製品への関税引き上げの一時停止を承認した場合、その期間はさらに90日間となる可能性が高いと付け加えた。トランプ大統領は、最高顧問と協議し、「承認するかどうかは」決定すると述べた。この報道を受け、株価は下落した。
日本とEUとの合意を経て、トランプ大統領は貿易戦争に勝利しつつある。しかし、これは米国経済にとって何を意味するのだろうか?
【コメント】
EUが軍門に下った現在、米国と正面から渡り合っているのは中国だけだ。BRICS諸国、グローバルサウスの諸国は、中国こそ自由貿易を守り、彼らを守護してくれる力強い味方だと思うに違いない。

3.ロシアによるウクライナ攻撃で少なくとも22人が死亡
【記事要旨】
トランプ大統領がクレムリンに対し、戦争終結の新たな期限を告げてから数時間後、ロシアは一連の攻撃を開始し、ウクライナ当局によると、少なくとも22人が死亡した。
月曜日の深夜直前、ザポリージャの刑務所が攻撃を受け、少なくとも16人が死亡した。また、ドニプロペトロウシク州では、産科病棟のある病院がミサイル攻撃を受けた。これは73の市町村を標的とした一連の攻撃の一環である。
モスクワでは、ロシアが約10日から12日以内に戦争終結に向けた措置を取らなければ新たな制裁を課すというトランプ大統領の脅しを、当局者はほぼ無視した。
【コメント】
ロシアも戦争経済で相当疲弊しているという見方が出てきているが、プーチンに停戦の気持ちはなさそうだ。停戦すごろくはまた振り出しに戻った印象だ。

その他の記事
中国:北京は、市内および周辺地域で数日にわたる豪雨により少なくとも38人が死亡し、混乱に陥った。
東南アジア:タイとカンボジアの軍司令官は、国境紛争の緊張緩和に向け、両首脳が合意した停戦合意を承認した。
ニューヨーク市:マンハッタンのオフィスビルで4人を殺害した銃撃犯は、NFL(全米フットボールリーグ)を標的にしていた可能性がある。

オゼンピック:減量薬を開発するデンマーク企業ノボノルディスクの株価は、利益見通しの修正を受け、20%以上急落した。
【コメント】
人気の減量薬でトップシェアの会社だ。Buy in dip. 急落での買いがありそうだ。

2025年7月30日 水曜日

世界の動き 2025年7月29日 火曜日

今日の一言
「スキルマトリクス」
 近年、上場企業で取締役会の「スキルマトリックス」を公表する動きがよく見られるようになった。スキルマトリックスは、各取締役が保有するスキルを可視化して示すことで、役員の総体としても能力を示し、会社経営の透明性を確保するなどの効果がある。
 どのような形でスキルマトリックスを作成するべきかは個々の会社によって異なるので、自社に合った形でのスキルマトリックスの作成・公表が必要だ。
 役員の名前をタテにとる。横軸には、企業経営、マーケティング・営業、財務・ファイナンス、IT・デジタル、人材・労務・人材開発、法務・リスクマネジメント、グローバル経験、といった項目が並ぶのが一般的だ。その会社の役員のスキルが一目瞭然となる。
 今、自民党の総裁を誰にするかでもめている。いろいろな候補がいるが、彼らのスキルマトリクスを図示するとどのようになるのだろうか。石破総裁は、企業経営、グローバル経営ではスキルがあるとは到底思えない。総裁候補の人たちを比べるのは面白いかもしれない。
 メディアの政治家の分析は、右か左か、財政規律へのスタンス、外国人問題、党内の支持層といった観点しかないので、物足りない。

 政治家にとっては「清廉潔白性」「言行一致」という資質も重要だろう。そういった観点も含んだスキル(資質)マトリクスを作ってみるも一興だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.トランプ大統領、ガザ地区で「子どもたちに食料を与えなければならない」と発言
【記事要旨】
 トランプ大統領は昨日、ガザ地区では「真の飢餓」が起こっていると述べ、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が同地区には十分な食料があると主張したことに異議を唱えた。
 「これは真の飢餓だ。私は目の当たりにしており、偽ることはできない」と、スコットランドで英国のキール・スターマー首相と共に記者団に語ったトランプ大統領は述べた。「子どもたちに食料を与えなければならない」
 トランプ大統領の発言は、ガザ地区に関する注目すべき転換点となった。トランプ大統領は、現在の援助配給システムは非効率的だと批判し、より多くの食料配給所を設置したいと考えており、英国もその取り組みを支援すると付け加えた。
 国際機関、専門家、医師たちは、イスラエルが数ヶ月にわたって援助を制限している中で、ガザ地区全域に飢餓が広がっていると指摘しています。これまでトランプ大統領は、ガザ地区のパレスチナ人への支援を確保するためにアメリカの力を利用することに慎重な姿勢を示しており、食料の窃盗は主にハマスによるものだと非難しています。つい先日の日曜日にも、大統領はガザは「アメリカの問題ではなく、国際問題だ」と発言していた。

ガザについてさらに詳しく:
・イスラエルはガザを壊滅させたが、3月の停戦解除以降、ほとんど目標を達成していない。
・ガザでイスラエル政府が行っている残虐行為に対し、イスラエル国民の間で抗議の声が高まっている。
・イスラエルで最もよく知られている市民権団体であるベツェレムとイスラエル人権医師会は、イスラエルがガザでジェノサイドを犯していると主張した。
【コメント】
 またもメラニアさんの助言が効いたのかもしれない。トランプから人道的な発言を聞くのは初めてだ。

2.米EU貿易協定はヨーロッパにとって良いものなのか?
【記事要旨】
 米EU間の貿易協定は、まだ多くの詳細が詰められていないものの、反応はやや肯定的なものから露骨に批判的なものまで様々だ。ドイツの首相は慎重な支持を表明した一方、フランスの首相は協定の提出は「暗い日」を意味すると述べた。
 米国とEU27カ国は、年間約2兆ドルの物品・サービスを貿易している。協定の判断は時期尚早である可能性がある。15%の関税が免除されるEU製品のリストや、EU最大の輸出品である医薬品への影響といった具体的な事項はまだ決まっていない。
 この合意は確かに欧州経済の助けにはならないだろうが、ウクライナ紛争など、多くの欧州指導者を悩ませてきた外交問題へのトランプ大統領の関与を維持するだろうと見られる。
 中国との協議:米中両国は本日、スウェーデンで2日目の協議を開催し、4月に発表された関税再導入の期限である8月1日までに合意に達するよう努める予定だ。
【コメント】
 日米の合意のほぼ焼き写しだ。重要な細部が決まっていない点もそっくりだ。

3.カンボジアとタイ、戦闘停止で合意
【記事要旨】
 タイとカンボジアの首脳は昨日、少なくとも38人が死亡し、数十万人の民間人が避難を余儀なくされた国境紛争について停戦合意に達した。
 タイのプムタム・ウェチャヤチャイ首相代行とカンボジアのフン・マネト首相はマレーシアで握手した。両国の係争国境で木曜日に衝突が発生して以来、両国が直接会談するのは初めてとなる。暴力行為が鎮静化するかどうかは不透明だ。
 背景:この紛争の中心には、古代クメール文明にまで遡る共通の文化遺産を持つ民族がいる。
【コメント】
 共通文化遺産とはいうが、タイ語とカンボジア語は日本語と韓国語ほど異なる。

その他の記事
ロシア:トランプ大統領は、プーチン大統領に対し、ウクライナ紛争終結に10日から12日以内に応じなければ新たな制裁措置に直面すると述べた。
北朝鮮:北朝鮮の最高指導者であり兄でもある金正恩委員長の代理人を務める金与正氏は、韓国の新大統領による会談提案を拒否した。
中国:少林寺は、著名な住職である石永新氏が資金の不正使用と女性との「不適切な関係」の疑いで捜査を受けていると発表した。

健康:新たな研究によると、運動、適切な食事、脳トレ、社交といった健康的な活動を組み合わせることで、認知症のリスクがある人の認知能力が向上する可能性があるという。

2025年7月29日 火曜日

世界の動き 2025年7月28日

今日の言葉
「巨大な影響」
 トランプ関税の業績への影響を危惧する報道が多い。
 昨夜のTV番組では三菱自動車の業績を例に挙げていた。
 三菱自動車 2025年度第一四半期業績(2025年4月1日~6月30日)
売上高
2025年度Q1:6,090億円
前年同期(2024年度Q1):6,275億円
前年同期比:約2.9%減
営業利益
2025年度Q1:56億円
前年同期(2024年度Q1):355億円
前年同期比:84.1%減
 この営業減益の殆どはトランプの25%関税によるものだとの会社説明で、番組のコメンテーターも関税の「巨大な影響」を危惧していた。
 こんなに乱暴な議論があるのだろうか。
 三菱自動車は、米国での価格はどうしたのか。関税分の値上げをしたのか。関税分を米国での実質値下げて吸収したのか。日本からの輸出価格を引き下げたのか。
 詳しい分析が今こそ必要とされるのに、「巨大な影響」の一言で済まされている。
 そういえば、トランプ大統領は過大な形容詞を使う名手だ。tremendous success とか greatest deal とか。形容詞に惑わされず、物事の本質を見極めたい。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
(今日はウクライナに関する1本のみです)
ウクライナ国民が戦時中に抗議行動を起こした理由
 先週、数千人が街頭に繰り出し、ウクライナ政府が2つの汚職対策機関を機能不全に陥れようとしていることに抗議した。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は撤回を余儀なくされ、抗議行動は、今のところ勝利を収めている。
 この公然たる不満の表明は、ロシア侵攻以来維持されてきた戦時中の結束を損なうというタブーを破るものだった。しかし、Timesの同僚は、これらの抗議行動参加者にとって、ウクライナの民主的制度を守るための闘いは、そもそもそれがウクライナがロシアと戦っている根底にあるからだ。
 ウクライナは二つの戦争を戦っている。一つはロシアに対する戦争、もう一つは汚職に対する戦争だ。しかし、ある意味では、これらは同じ戦争、つまり民主主義のための戦争なのだ。
 怒りの一部は、ゼレンスキー大統領が裏切ったという思いから生じている。彼は2019年の選挙で反汚職キャンペーンを掲げて勝利した。そして先週、彼は汚職撲滅に取り組む二つの独立機関を政府の管理下に置く法案に署名した。これらの機関は、彼の政党の議員や閣僚を捜査していたのだ(ゼレンスキー大統領自身は捜査対象ではない)。
 しかし、怒りの一部は、政治問題としての汚職の影響力から生じている。ウクライナ人にとって、汚職は国の歴史と未来に深く関わる問題だ。
 最近の抗議活動がこれほどまでに重大に感じられる理由の一つは、同じマイダン広場で行われた2014年のデモを彷彿とさせるからだ。これらの抗議行動は、ウクライナとロシアの関係、そしてプーチン大統領の盟友であり、ウクライナが西欧諸国に接近することを決して許さないと明言していた当時のヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領への怒りが一因だった。
 しかし、同時に腐敗も問題だった。ヤヌコビッチ大統領自身の不正に得た富は、ウクライナの「盗賊政治」という評判を象徴するものだった。そして、ヨーロッパで最も腐敗した国として知られるウクライナは、誰が政権を握ろうとも、決してEU加盟を認められることはなかった。
 2014年のマイダン抗議行動は、ヤヌコビッチ大統領の失脚だけでなく、同年後半のロシアによるクリミア占領にもつながり、最終的には2022年の本格的な侵攻につながったと多くの人が主張しています。言い換えれば、良き統治を求める闘いが、ウクライナを今日の状況へと導いた一因となっているのだ。

「ウクライナはロシアとは違う」
 先週の抗議活動について読んだとき、私は有力ニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」の編集長、セヴジル・ムサイエワのことを思い出した。昨年11月に会った時でさえ、ムサイエワはウクライナに残る「ソ連的本能」について彼女は語ってくれた。
 ジャーナリストとして、彼女はそれを身をもって体験してきた。ヤヌコビッチ政権時代から汚職を捜査してきたムサイエワは、前大統領の裕福な支持者の一人が勤務先のニュースメディアを買収したことで、最初の職を失った。ゼレンスキーが政権を握った時、彼女は希望を抱いていた。しかし、ロシアが侵攻し、国は立ち直った。しかし、汚職問題は依然として残っている。
 それが彼女にとってジレンマとなった。開戦から9ヶ月が経った時、ムサイエワと同僚たちは編集会議を開き、ウクライナの最前線地域の指導者による戦時中の不当利得に関する記事を掲載すべきかどうかを議論した。ロシアの侵略に直面し、西側諸国からの援助を必要としていた時期に、出版することは裏切り行為のように感じられた。しかし、ジャーナリストとして真実を報道する義務を感じたと彼女は語った。「ウクラインスカ・プラウダ」はウクライナの真実を意味する。このサイトがロシアで禁止されているのは偶然ではない。
 結果はすぐに現れた。ムサイエワ氏によると、ゼレンスキー政権は政治家に対し、彼女のジャーナリストと話すことを禁じ、広告主には他の媒体を利用するよう指示したという。タイムズ紙の同僚たちは、ウクライナのメディアに対する規制と圧力が強まっていると記事を書いている。
 ウクライナが最終的にロシアのようになってしまったら、戦争は無駄になるだろうとムサイエワ氏は述べた。「肝心なのは、ウクライナはロシアとは違うということです」と彼女は私に言った。
 先週、キエフやその他のウクライナの都市でデモを行った人々は、ムサイエワ氏と同じようなジレンマを経験していた。彼らは西側諸国の目が自分たちに向けられていることを知っていたのだ。彼らは彼女と同様に、ウクライナを守る最善の方法はウクライナの民主主義を守ることだと決断した。
【コメント】
 長文の記事だ。ロシアとの戦いと汚職との戦いはいずれも民主主義を守る戦いなのだと言う結論はNYタイムズ的だと思う。自由と民主主義が最高の価値を持つものなのだ。
 「機会があれば私腹を肥やしたい」というスラブ的な考えは歴史学者のエマニュエル・トッドなら、どのように分析するだろうか。

その他の記事
貿易
暫定合意:数週間にわたる緊迫した協議を経て、米国とEUはEU製品の大半に15%の基本関税を課すことで合意した。
詳細:トランプ大統領は、EUが7,500億ドル相当の米国エネルギー製品を購入し、対米投資を6,000億ドル以上増やすことで合意したと述べました。この合意は、世界で最も重要な経済関係の一つであるEUとEUの関係に一定の落ち着きをもたらし、貿易戦争の激化への懸念を和らげる可能性がある。
【コメント】
 結局WTOに違反するトランプにEUも対抗できなかった。一方、中国はまだ抵抗している。レアアースの威力は強力だ。

その他のニュース
ガザ:イスラエルは、当初の方針を一転し、ガザ地区3地域での軍事作戦を一時停止し、援助の増額を可能にすると発表した。
飢餓:ガザ地区の少なくとも3つの病院では、栄養失調の子供や大人の治療に必要な栄養液が不足している。看護師たちは飢餓と脱水症状で意識を失っている。
東南アジア:タイとカンボジアの首脳は、本日マレーシアで停戦協議のため会談する予定です。
【コメント】
 世界中で国境に関する紛争が激化している。国内政治への不満が底流にある。国内の経済が不振で政治的に不安定さが増している中国の動向へは注意が必要だ。

2025年7月28日 月曜日

不正の温床

明日、明後日と金融財政事情研究会主催の「金融内部監査人」養成コースの講師をつとめる。金融機関で内部監査部門に初めて配属された人向けのコースで、部長クラスから若手までいろいろな受講者が揃う。このコースは既に63回を数え、修了者の総数は1500人を超えている。

いろいろな話をするが、「不正」については皆関心が高く当方の説明に耳を傾けてくれる。不正を木に例えて考えると、不正の実が木に成るのは、修正が簡単だ。悪い実を摘めばよいからだ。木の幹や木の根が腐っていたり、木を取り巻く土壌が汚染されている場合は、解決が難しくなる。

最近の東北地方の信用組合で起きた不正融資事案では、信組の経営陣が、理事長から監事に至るまで、事案に関与していたことだ。監事や内部監査は、明白な犯罪行為に異をとなえず、組織内での自身の保身を図っていた。これは木の幹や根が腐っていた事例だ。

建設業界で以前は普通だった談合は、業界自体が汚染されていた例で、不正の防止は難しい。

筆者は以前、日本の金融機関のタイの現地法人で営業の責任者(日系企業・多国籍企業担当)をしていたことがある。
タイの地場企業向けの融資担当者は、貸出を実施すると貸出先からお礼の金品を受け取っていることが、しばらく勤務してからわかった。タイ人の社会ではそれが当たり前だから、誰もそれが不正だとは思っていなかった。これは業界を超えて、その国の風土と係る問題だった。

さて、こうした場合に、どのように対処すべきだと思われますか?

2025年7月27日 日曜日