世界の動き 2025年11月25日 火曜日

今日の一言
「米株の売り一巡か」Bloombergの記事より
 「米国株についてUBS証券のトレーディング部門は、売り一巡の可能性があり、年末にかけて上昇局面に入る可能性があるとの見方を示した。
 S&P500種株価指数とナスダック100指数は先週、10月下旬に付けた過去最高値からそれぞれ約4%、7%下落し、100日移動平均線まで値を下げた。
 UBS証券は、11月の売りがポジション調整を進める結果となり、上昇再開の土台が整ったと指摘。S&P500は年末にかけて7000近くまで上昇する可能性があるとの見通しを示した。」
 大手証券会社からのポジショントーク的なコメントだ。こうなってほしいという願望に近いと見たほうが良い。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ウクライナとロシアにとっての和平案の見方
【記事要旨】
●戦争の現状
– 紛争は4年近く続き、2014年のクリミア併合から数えると11年。
– 当初の「ロシアがすぐ勝利する」という予測は外れ、ウクライナは抵抗を続けている。
– 西側制裁でロシアは資金難に直面する一方、戦況は消耗戦化しロシアが徐々に前進。
●双方のレッドライン
– ウクライナ:領土保全と信頼できる安全保障の保証が不可欠。ロシアの再侵攻を防ぐ仕組みが必要。
– ロシア:ウクライナのNATO加盟を永久に拒否。ドンバスなどの領土確保、NATO軍駐留の拒否。
●領土問題と妥協案
– ウクライナは現在の前線に沿った停戦を受け入れたが、ドネツク地域の一部は譲れない。
– 妥協案として「非武装地帯」化が検討されるが、国民に受け入れさせるには安全保障の保証が不可欠。
●安全保障モデルの選択肢
– ドニプロ川以西への欧州軍派遣(少数の象徴的存在)。
– トリップワイヤー・モデル(欧州域内に軍の大規模配備)。
– NATO第5条を参考にした西側諸国の防衛保証(ただしNATOは直接関与せず)。
●NATO問題
– ロシアはウクライナのNATO接近を脅威とみなし侵攻を正当化。
– NATO加盟は現実的に困難で、EU主導の平和維持部隊案が前例として検討される。
●交渉の余地
– ウクライナ軍の規模縮小など、軍事面では妥協可能。
– 双方とも国内で「勝利」として説明できる合意が必要。
●国際的な仲介
– トランプ氏の交渉関与はウクライナ国内で意外な支持を得ている。バイデン政権の対応への不満が背景。
– 完全解決ではなくとも「和解の兆し」が希望を生んでいる。
【コメント】
 和平交渉の最大の障害は、ウクライナの安全保証とロシアのNATO拒否という両立しない要求だ。妥協の可能性は「非武装地帯」や「欧州主導の安全保障モデル」にあり、双方が国内に「勝利」として示せる形を模索している。

2.トランプ大統領にとって大きな痛手
【記事要旨】
 連邦判事は昨日、ジェームズ・コミー前FBI長官とレティシア・ジェームズニューヨーク州司法長官に対する訴追を棄却した。この判決は、トランプ大統領が自らの敵と見なす者に対し刑事司法制度を行使しようと試みる上で、大きな敗北となった。
 判事は、検察官の任命は無効であり、コミー前FBI長官とジェームズ前FBI長官は大統領の最も著名な標的である両氏を起訴する「合法的な権限」を有していないと判断した。この判決により、政府は訴追を再申し立てできる可能性がある。
【コメント】
 この事件は日本でほとんど報道されていないので以下に説明します。
 この記事は、トランプ大統領が政敵とみなす人物に対して訴訟を仕掛けたが、裁判所で退けられたという出来事を伝えている。
1. 訴訟の理由
– 対象者
– ジェームズ・コミー(元FBI長官)
– レティシア・ジェームズ(ニューヨーク州司法長官)
– 訴訟の背景
– トランプ大統領は両氏を「敵」とみなし、刑事訴追を通じて政治的に打撃を与えようとした。
– 記事では具体的な罪状は明記されていませんが、文脈から「政敵を標的にした訴訟」であることが強調されています。
2. 今回の判断の理由
– 裁判所の判断
– 訴追を担当した検察官の任命が「無効」であるとされた。
– そのため、検察官には「合法的な権限」がなく、コミー氏やジェームズ氏を起訴することはできないと判断された。
– 結果
– 訴訟は棄却され、両氏に対する起訴は取り消し。
– 政府側は理論上、改めて有効な手続きで起訴し直すことは可能だが、今回の判断はトランプ大統領にとって大きな敗北。

其の他の記事
・ベトナムでは、今年に入って14回の台風に見舞われており、過去1週間で洪水と地滑りにより90人以上が死亡した。
・トランプ大統領は、中国の習近平国家主席から4月に北京を訪問するという招待を受け入れたと述べた。
・イスラエル軍参謀総長は、2023年10月7日の攻撃における失敗を理由に、約12人の指揮官に対し、解任または懲戒処分の可能性があると通告した。
・マレーシアは、来年から16歳未満の児童のソーシャルメディア利用を禁止する予定だ。
・今週米国と会談する欧州の貿易当局者は、ワインや蒸留酒、鉄鋼、パスタなどを含む品目について、より良い貿易協定の締結を期待している。

2025年11月25日 火曜日

世界の動き 2025年11月24日 月曜日

今日の一言
「6-7」
 アメリカのGen Alphaで流行している現象だ。TikTok発のミームで、特定の意味はなく「面白いから言う」だけのスラングだ。YouTubeにたくさん載っているので見ると、両方の手のひらを上に向けてふりながら、「6-7」と叫ぶ画像が多数出てくる。
起源
 - ラッパーSkrillaの曲「Doot Doot (6 7)」が発端。歌詞に「6-7」が登場するが、本人も「意味は特にない」と語っている。
 - TikTokでこのフレーズが切り取られ、NBA選手ラメロ・ボール(身長6’7”=約201cm)の映像と組み合わせて拡散された。
広まり方
 - Gen Alpha(小中高生世代)がTikTokやInstagram Reelsで「6-7」をランダムに叫んだり、コメントに入れたりして遊ぶ。
 - ジェスチャー(手を上下に動かす仕草)と組み合わせて「まあまあ」「適当」なニュアンスで使うこともある。
 - バスケ選手やインフルエンサーが繰り返し使ったことで「校内スラング」として定着。
 - 2025年には「67 Kid」と呼ばれる少年が試合で叫ぶ動画がバズり、さらに拡散。
意味合い
 - 固定された意味はない。ただの「ノリ」で使われる。
 - 文脈によって「背が高い」「まあまあ」「ランダムな数字ジョーク」などに変化。
 - Gen Alphaにとっては「スキビディ」「シグマ」「rizz」などと同じく、意味よりも共有感・遊び心が重要。
文化的背景
 - 一部メディアは「brain rot(脳の腐敗)」現象の一例と評しており、質よりも「バズること」が優先されるデジタル文化の象徴とされる。
 - 同時に、Gen Alphaがネット文化に存在感を増している証拠とも見られている。

【コメント】6-7もGen αも知りませんでした。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.デンマークの試験
【記事要旨】
– 英国労働党政権の新規則
 難民申請者の地位を頻繁に審査し、永住権取得に20年を要するなど、長期滞在を困難にする厳しい制度を導入。宝石没収などの政策は批判も受けている。背景には、極右「改革UK」の支持拡大があり、移民問題への対応が急務となっている。
– デンマークモデルからの着想
 デンマーク左派政権は移民制限を福祉国家維持の前提と位置づけ、難民申請者の生活を困難にする抑止策を実施。結果として申請者数は大幅に減少し、極右の勢いを抑える効果を発揮したとされる。英国や他の欧州諸国もこのモデルに注目している。
– 成果と限界
 デンマークでは一時的に政治的成果を上げ、政権維持に成功した。しかし、給付金削減による貧困や犯罪増加、合法移民への悪影響など副作用も顕在化。最近の市議会選挙では左派からの反発が強まり、首都コペンハーゲンで社会民主党が敗北した。
– 今後の展望
 デンマーク社会民主党は、富裕層や若者、都市部人口が多いコペンハーゲンでの敗北を、全国のより保守的な有権者の支持で補えると期待している。試金石となるのは2026年の国政選挙であり、他の欧州諸国の政府もその行方を注視している。
– モデルの適用可能性への疑問
 デンマークは人口約600万人で比較的均質な社会構成を持つため、英国のように多様な人口構成や移民依存度が高い国では同じ手法が通用するかは不透明。移民流入抑制と国内統合の間で緊張が生じる可能性が高い。
【コメント】
 左派であれ右派であれ、移民の流入に規制をかける政策が支持を集めるようだ。日本でも、参政党が注目される所以であり、政策の素地は整っている。

2.ウクライナに対する米国の和平案
【記事要旨】
 米国とウクライナの当局者は、昨日ジュネーブで行われたトランプ大統領の対ロシア戦争終結計画に関する協議で進展があったと発表した。
 トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、木曜日までに和平案に同意するよう求めた。当局者らの会談中、トランプ大統領はソーシャルメディア上でウクライナ指導者らを批判し、恩知らずingratitudeだと非難した。28項目からなるこの提案は、ウクライナがロシアの要求の大半に屈服することを求めており、戦場で失っていない領土の放棄、軍の規模制限、そしてウクライナのNATO加盟の拒否などを盛り込んでいる。
【コメント】
 ゼレンスキー大統領にとって、これはまたしても成否を分ける局面だ。彼はこの状況を乗り越えられるだろうか?

其の他の記事
・イスラエル軍は、レバノンのベイルート郊外で行われた空爆でヒズボラの幹部司令官を暗殺したと発表した。レバノン当局によると、この攻撃で少なくとも5人が死亡した。
・ブラジルで開催された気候変動に関する国際会議は、地球温暖化の主な要因である化石燃料について直接言及しない、骨抜きの決議で閉幕した。
・ブラジル警察は、クーデター未遂事件での服役を逃れるため自宅軟禁を逃れる恐れがあるとして、ジャイル・ボルソナーロ前大統領を逮捕した。
・マージョリー・テイラー・グリーン下院議員の辞任は共和党に打撃を与え、右派の不満を露呈させた。

2025年11月24日 月曜日

ニューヨークのホテル価格

【森トラストのEquinox Hotelの買収】
 森トラストは2025年11月にニューヨーク・マンハッタンの複合ビル「35 Hudson Yards」を取得し、その中には、入居するラグジュアリーホテル Equinox Hotel も含まれている。売主はRelated CompaniesとOxford Propertiesで、取引額は約843億円(5.41億ドル)とされている。

詳細ポイント
– 取得日:2025年11月18日(日本時間)
– 対象物件:「35 Hudson Yards」ビルの区分所有権(1階~30階部分)
– 用途:ホテル(Equinox Hotel)、オフィス、リテール施設

– ホテル概要:
– Equinox Hotel は2019年開業、212室を有するウェルネス特化型ラグジュアリーホテル
– 遮光・遮音性に優れた客室、天然素材寝具、睡眠科学者と共同開発した「スリープラボ」などを導入
– フィットネス施設(5,500㎡超)、スパ、屋内外プールを完備
– 2023年「The World’s Best 50 Hotels」、2024年「Condé Nast Traveler Readers’ Choice Award」に選出

– 取引規模:
– 約843億円(5.41億ドル、1ドル=156円換算)
– 取得対象はホテル+オフィス+商業施設(約4.6万㎡)
– 戦略的意義:
– 森トラストは中長期ビジョン「Advance2030」で、2030年度までに海外資産を1.2兆円規模へ拡大する方針
– 2023年にはニューヨーク「245 Park Avenue」の49%を取得済みで、今回がマンハッタンで2棟目の投資

ホテルについとてもう少し調べると以下がわかる。
詳細情報
– 客室数:
– 全部で 212室。遮光カーテンや抗アレルギー寝具を備え、睡眠科学者と共同開発した「Cool, Dark, Quiet」コンセプトを採用。
– 平均宿泊料:
– 予約サイトや時期によって変動しますが、最低価格帯で約700米ドル前後/泊。
– スイートや眺望付きの部屋では 1,000米ドル以上/泊 になるケースもあります。
– 朝食は別料金で、フルブレックファストは大人35〜50米ドル程度。
– 価格変動要因:
– 季節(特に夏や年末年始)、イベント(ニューヨークの展示会やファッションウィーク)、部屋タイプ(リバービュー、スカイラインビュー、ペントハウス)によって大きく変動。
– Trip.comやJTBなどの予約サイトでは、直近の最低価格が700〜800米ドル程度で表示されることが多い。

オフィスとリテールについても調べると以下がわかる
– オフィス部分:
– 約 180,000平方フィート(約16,700㎡) のオフィススペース
– 「Equinox」本社を含め、フルリース済みと報じられている。
– ニューヨーク・マンハッタンのAクラスオフィス賃料は、エリアやビルグレードによって 年間1平方フィートあたり80〜120ドル程度が一般的。
– 仮に平均100ドル/平方フィートとすると、年間約1,800万ドル(約27億円)規模の賃料収入が見込まれる可能性があります。
– リテール部分:
– 約 60,000平方フィート(約5,600㎡) のフィットネス施設(Equinoxジム)+商業スペース
– リテール部分は 73%が賃貸済み(SoulCycleなど)と報じられています。
– マンハッタンのリテール賃料は立地により大きく変動しますが、Hudson Yardsの高級商業施設では 年間200〜400ドル/平方フィートが目安。
– 仮に平均300ドル/平方フィートとすると、年間約1,800万ドル(約27億円)規模の賃料収入が推定可能。
・つまりオフィスとリテールで年間3,600万ドルの収入の可能性がある。

【ホテルの買収価格の経験則】
 筆者はニューヨークの不動産会社で3年勤務した経験がある。1991年から3年弱。不動産バブルの崩壊後の時期だった。
 覚えたことが4つある。
1.決裂するまでは誰でもBest Friend. 決裂すると「あいつはアホ(Schumak)」と口汚くののしる。(これはトランプそのものだ)

2.不動産には3つの重要な要素がある。一にロケーション、二にロケーション、三にロケーション
3.価格はCap Rateで決まる。10年間のキャッシュフローを何%で割り引くか。特に10年目以降の永続価値の割引率が重要。
 例えば上記の例を単純化して当初の10年もその後の永続期間も割引率10%を使用するとどうなるか。
 年間36百万ドルを10%のCapRateで割り引けば
 Value= NOI/Cap Rate = 36,000,000/0.10 = 360,000,000ドルになる。
 このCap Rateは、競争環境が買い手有利なほど高くなり、売り手有利なほど低くなる。不況では高くなり、好況では低くなる。
4.ホテルの価値は、部屋数X一部屋の宿泊料X1000 で計算できる。
 1000泊分ということは、3年強に過ぎないが、ホテルが10年競争力を維持できるとして3600日、高級ホテルの平均稼働率が80%、オペレーション費用が収入の60%(収入は40%)と見込むと、
 3600 X 0.8 X 0.4 = 1152
競争力維持のための更新投資や、競合他社が進出した際の競争力のクッションを考えれば、買い手にとって1000泊分で考えるのは妥当と思える。

【EquinoxHotelに適用すると】
 212室で、森トラストは一泊平均1000ドル以上を狙っている様子なので、
 212室 X 1000ドル X 1000泊 = 212 百万ドル になる。

 買収価格541 百万ドルとホテルの経験値212百万ドルとの差額 329百万ドルはオフィスとリテールの収入の現在価値だ。

 推計ではじいた賃料収入は年間36百万ドルだったので、
 36 million / Cap Rate = 329 百万ドル とすると、
 Cap Rateは10.94% になり、とても安い買い物だ。

 Wikipediaで見ると、現在の持ち主は2022年から売却を検討していたようで、ホテル不足の現在、森トラストがなぜこのような好条件で買収できた理由はなぞだ。今後の展開に注目したい。

2025年11月23日 日曜日

週間株式市場動向 2025年11月17日から21日 備忘録

【週間市場動向】
 米国株式市場と日本株式市場は、11月17日から21日にかけてともに調整局面となりました。以下に主要インデックスの終値と週間騰落率を示します.​

米国主要指数の動き
ダウ平均  終値: 45,808.65(11月21日)週間騰落率: 約-1.53%​
S&P500  終値: 6,672.41(11月21日) 週間騰落率: 約-1.11%​
NASDAQ総合  終値: 22,708.07(11月21日)週間騰落率: 約-2.12%​

 米国市場は週初から企業決算、FRB議事要旨、政府再開期待などが交錯する中、AI・テック銘柄のバリュエーション懸念が響き、全体的に乱高下し軟調推移となりました。​

日本株主要指数の動き
日経平均株価  終値: 48,282.39(11月21日)週間騰落率: 約-4.06%(週初50,323.91→週末48,282.39)​
TOPIX  終値: 3,347.53(11月21日)週間騰落率: 約-0.86%
(週初3,376.49→週末3,347.53)​

 日本市場でも米国株安や国内GDPの弱さ、地政学リスクなどが嫌気され急落。特に日経平均は50,000円台割れとなり、投資家心理に不安が広がりました。​

市場の背景
 米国は主要テック株の調整や年末利下げ観測の後退が重石となりました。​
 日本は経済指標の悪化や海外株安を受け、ハイテク・主力株が連鎖的に売られました。​
 この期間は世界的にリスクオフの動きが強まり株価は広範囲で反落しました。
 日本株でも、トヨタや三菱商事は値上がりしていおり、Buy the Bestという考えは有効だと思われます。

【今週の見通し】
 今週(11月22日週)の市場動向は、米国・日本ともに引き続き高い不安定性と短期反発が注目されます。特にFRBの利下げ観測や雇用統計などの経済イベントが、主要な注目材料となっています。​

米国市場の見通し・注目イベント
 先週末は、FRBの12月利下げ期待が再び高まり、市場は大きく反発しましたが、テクノロジー株(特にAI・半導体関連)のバリュエーションへの警戒感が強いままです。​

今週の注目点
・FRB関係者の発言やFOMC議事要旨
・11月主要経済指標(耐久財受注、新規失業保険申請件数など)の発表​
・企業決算の続報とAI・半導体分野の動向(Nvidia など)
投資家は年内利下げの有無、インフレ減速の持続性を注視しています。​

日本市場の見通し・注目イベント
 日経平均 は先週50,000円台割れとなり、ボラティリティが高まっています。米国市場の動向に引きずられる展開が続く見込みです。​

今週の注目点
・米国経済指標、円相場の動向
・国内11月消費者物価(CPI)や企業決算
・政治リスクや地政学的要因(中国関連含む)​
 日銀の政策修正や出口議論も引き続き投資家心理に影響しやすい見通しです。

主要経済イベント(今週)
日付  イベント
11/25-26 米国耐久財受注・新築住宅販売
11/27 米国GDP改定値
11/28 米国新規失業保険申請件数、個人消費支出
11/29 日本消費者物価(東京都区部)、失業率
特に米国のインフレ関係指標と雇用関連データが市場の金利観測に直結しやすく、ボラティリティ継続に注意が必要です。​

 総じて、市場は“短期的反発と中期的な警戒感の綱引き”が続く構図となっており、イベント主導型の値動きに警戒感が強い一週間と見込まれます。​

【金利と為替】
 2025年11月下旬、日本では金利高と円安が急速に進行しています。一方、米国では利下げ観測が一時高まったものの、金利政策の先行きは不透明な状況です。以下に金利と為替の動きを詳しく説明します。

日本の金利高と円安の背景
 日本の長期金利(10年国債利回り)は2025年11月に1.8%台まで上昇し、2008年6月以来、約17年半ぶりの高水準となりました。この上昇は、高市政権による大規模な経済対策や財政悪化懸念、日銀の利上げ期待が背景にあります。​​
 政府の積極財政政策(総合経済対策の規模拡大)が市場の財政悪化懸念を強め、国債の売りが加速しました。また、日銀の利上げ期待が高まり、金利上昇圧力が強まっています。​
 金利上昇は円安を加速させる要因となり、1ドル=156円台まで円安が進行しました。これは2025年1月以来の水準です。円安は対ユーロでも進行し、1ユーロ=180円台後半で推移しています。​

米国の金利動向
 米国では10月にFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を0.25ポイント引き下げ、3.75~4.00%にしました。12月の追加利下げ観測が高まっていますが、FRB議長や関係者の発言に温度差があり、利下げの有無は不透明です。​
 12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で追加利下げが実施される確率は約60%とされていますが、インフレ懸念や雇用市場の動向によって利下げ観測が後退する可能性もあります。​
 米国長期金利(10年国債利回り)は4.09%前後で推移しています。FRBの利下げ観測が高まると金利は低下し、逆に利下げ観測が後退すると金利は上昇しています。​

金利差と為替の関係
 日米の金利差が縮小する見通しはありますが、日銀の利上げが限定的で、米国の利下げペースも不透明なため、金利差がすぐに縮小するとは考えにくい状況です。​
 金利差が縮小しない限り、円安ドル高の基調は続く可能性が高いです。高市政権下で円安圧力がかかり続け、年内に160円を試す展開も十分ありうると予想されています。​
 ただし、為替介入の可能性も高まっており、162円を超えると当局の介入が予想されています。​

今後の見通し
 日本の金利高と円安は、政府の財政政策や日銀の金融政策運営に大きく影響されます。高市政権の積極財政政策が継続する限り、金利上昇と円安圧力は続く見通しです。​
 米国ではFRBの利下げ観測が高まっていますが、インフレ懸念や雇用市場の動向によって利下げ観測が後退する可能性もあります。金利政策の先行きは不透明な状況です。​

【PE市場、プライベートクレジット市場】
 PE市場(プライベートエクイティ)では引き続き流動性制約と分配の鈍化、セカンダリーマーケット活況といった傾向が鮮明です。プライベートクレジット市場(未上場企業向け直接貸付資金)については、その拡大ペースやリスク構造が「ゴキブリのような危険」、つまり表面化しにくい潜在リスクが集積するとの懸念も議論されています。​

プライベートエクイティ(PE)市場
 PE市場は2025年も取引数自体は回復傾向ですが、古いファンド資産の分配遅れ(「流動性クランチ」)が続き、配当/資産回収を重視する投資家ニーズが顕在化しています。​
 セカンダリー取引やオルタナティブ戦略への資金流入が続く一方、運用側は「キャッシュリターン重視」や「専門領域へのシフト」といったプレッシャーの下でディール選別が一段と厳格化しています。​

プライベートクレジット市場の動向とリスク
 世界のプライベートクレジット市場は2024年の2.1兆ドルから2030年には4.5兆ドルへの拡大予測があり、その資金流入と需要増を背景に貸出競争・スプレッド圧縮が加速しています。​
 一方で「ゴキブリ・リスク」――すなわち可視化しにくい債務条件の緩みや、リスク移転の連鎖が発生しています。代表例が「bad PIKs(支払繰延型利息の質的悪化)」など、表面上は無事に見えても債務者の返済能力悪化の兆候が増えています。​
 危険視される理由は
・情報開示・規制が銀行など公的部門より緩い
・「ハイイールド・ローン」的な高金利案件の増加
・強気過ぎるレバレッジ(借入倍率)
・マーケット規模拡大に伴い全体の質が低下しやすい
といった構造要因に加え、市場ショック時に一斉にリスクが顕在化しやすい点が挙げられます。​

暗部リスクの評価
 近時のプライベートクレジット市場では、延滞やローン条件の緩和(PIK増加など)を示すデータが蓄積されつつありますが、依然としてクーポン水準の高さ(8〜12%)、流動性供給策の多様化もあり「今すぐクラッシュ」には直結していません。​
 しかし「リスクに見合うプレミアムがあるうちは良いものの、市場ストレスや大型倒産時には一気に可視化するゴキブリ・リスクとなりうる」ため、規制当局や大手資産家も慎重姿勢を示しています。​
 総じて、プライベートクレジットの魅力と表裏一体で「見えにくい脆弱性」を警戒する声が増えているのが現状です。運用選別・情報精査の徹底と、マクロショック時のストレスシナリオ分析が一段と重要です。​

2025年11月22日 土曜日
​​

世界の動き 2025年11月21日 金曜日

今日の一言
「NVIDIAの決算」
 昨日NVIDIAが第三四半期の決算を発表した。AI相場を持ち直す好決算だった。
 業績は以下のとおりだ。
・前四半期の利益は319億ドル、売上は570億ドルで予想を上回る。
・今期の売上見通しは650億ドルと強気。
・ 来年までにBlackwell・Rubinチップで5000億ドルの販売契約を確保。
 Nvidiaの好決算を受け、世界の株式市場が上昇した。S&P500先物やNvidia株、AI関連株(CoreWeave、Nebius、Oracle)も反発した。 VIX(恐怖指数)は低下、暗号資産も回復傾向だ。
 CEOの発言が注目された。
 ジェンスン・ファンは「AIバブルではなく、実需がある」と強調し、サプライチェーン強化により、Blackwellチップの旺盛な需要に対応可能と説明した。
 特に “There’s been a lot of talk about an A.I. bubble, From our vantage point, we see something very different.” 「AIバブルについては盛んに議論されています。私たちの視点から見ると、全く異なるものが見えています。」というファン社長の発言は、それはそうなのだろうなと納得感をもって私は受け止めた。
 ただ、課題と懸念は残る。
 AIプロジェクトの約9割がNvidia製品に依存する一方、Google・Amazon・Meta・Microsoftは自社チップ開発を進めて依存度低下を模索している。 OpenAI、Mistral、Anthropicなどへの巨額出資(が「AIエコシステム強化」か「顧客囲い込み目的(資金還流)」か疑問視されている。
 今が利食いの時期であることは間違いないと思う。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.素晴らしい新世界?
【記事要旨】
・思想の自由の歴史的懸念
19世紀の民謡「Die Gedanken Sind Frei(思考は自由)」に象徴されるように、人間の心をコントロールされる恐怖は古くから存在。冷戦期にはソ連やCIAによるマインドコントロール技術への不安が広がった。
・現代の技術:ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)
脳表面に装着する小型デバイスが神経活動を読み取り、AIと連携して人の意図や動作を再構築。Neuralinkなどが実用化を進め、麻痺や疾患で失われた機能を回復させる事例が報告されている。
・応用例
– 患者が再び手を動かす、タイピングする、話すことが可能に。
– 過去の声をアルゴリズムで再現し、本人の思考を「声」として表現する事例もある。
・懸念点
– 思考や心という最も親密な領域へのアクセスが、商業的・政治的に悪用される可能性。
– プライバシーの限界を超えるため、倫理・法律・哲学的な議論が不可欠。
・思考の操作可能性
– 脳深部刺激療法で行動が変化する事例があり、脳操作による行動変容は可能。
– 光遺伝学ではマウスに偽の記憶を植え付ける実験が成功。人間への応用も理論的には否定されていない。
・ニューロプライバシー
脳活動や未言語化の思考をどこまで「プライバシー」として保護すべきかが議論されている。神経データは既存の個人情報と重なり、広範な規制が必要になる可能性がある。
・法的対応
米国の一部州やチリ・スペインなどで神経データ保護法が議論・制定されつつある。現状では健常者が合法的にインプラントを入手する方法はなく、議論はまだ初期段階。
【コメント】
 BCIは失われた機能を回復させる革命的技術である一方、思考や心の自由を脅かす可能性を秘めている。ニューロプライバシーをどう定義し、法的・倫理的に守るかが「素晴らしい新世界」への分岐点となる。「技術の進歩が人間の自由の境界をどう変えるか」という根源的な問いそのものだ。日本ではこの議論がどう展開してゆくのだろうか。

其の他の記事
・トランプ大統領とニューヨーク市次期市長のゾーラン・マムダニ氏は激しく非難し合っている。本日、両者はホワイトハウスで会談する予定だ。
・イランは、国際的な核査察再開に関する合意から離脱すると発表した。
・サウジアラビアの皇太子は米国に1兆ドルを投資すると約束したが、同国の政府系ファンドの資金は底をついている。
・ブラジルで開催されていた気候変動会議で火災が発生し、数千人の外交官、ジャーナリスト、活動家が集まっていた会議参加者は避難した。
・米国は今週末、ヨハネスブルグで開催されるG20サミットへの参加する。トランプ大統領の同サミットへのボイコット表明から方針転換した。
・エヌビディアの好決算は、AIブームに対する投資家の懸念を和らげたが、あるアナリストは「バブルへの懸念を一日延ばしただけかもしれない」と指摘した。
・インドネシアでスメル山が噴火し、村々に灰が降り注ぎ、数百人が家から避難を余儀なくされた。

特集記事(高市首相の服装について)
 日本の首相の象徴的なハンドバッグ
— 先週私が取り上げた著名な女性リーダーたちの中で、ハンドバッグを日常的に持ち歩いているのはただ一人、日本の高市早苗氏だけです。彼女の特大サイズの「グレース・ディライト・トート」は、ハンドバッグを愛用していた憧れのマーガレット・サッチャー氏へのオマージュです。私たちのチーフファッション評論家、ヴァネッサ・フリードマンが、自分の持ち物を持ち歩くことの記号学を解説します。

2025年11月21日 金曜日