「老人と海」再読

NHKオンディマンドで「100分de名著」という番組をよく見る。
名著を毎回25分の4回、すなわち100分でする解題する番組だ。司会の伊集院光の的確な感想と質問で、名著への理解が深まる。最近見た回で取り上げられたのはヘミングウェイの「老人と海」だ。

「老人と海」は大学生の時分に読んだ記憶がある。正直、モノローグの続く面白くない小説だという印象だった。スペンサー・トレーシー主演の映画も見た記憶がある。退屈な映画でしたね。20数年前には、次男のニューヨークの中学の宿題で英文でも読んだ。あまり印象に残らない読後感だった。

さて、今、再読すると、年齢を重ねたせいか、老いと孤独。人間の営為と自然、というような概念が短い文章で上手に表現されているのがわかるようになった。アメリカ人の友人は、日本のわびさびにもつながると言ってきた。
Hemingway championed a new style of prose: very terse. In this case, the tale is an allegory on how we live life. We create objectives that we believe will offer meaning in life, bring us fulfillment, but naturally ofttimes like the old man’s loss of the marlin to sharks in spite of his futile efforts, those dreams are shattered just as they seem to come true. Nonetheless, the old man has something to show for his effort, and he is able to accept what he has. Wabi-sabi.

文中いくつか気に入った表現があるが、不屈の精神を表す文章は心に沁みた。
But man is not made for defeat, he said. A man can be destroyed but not defeated.
鼻提灯を出して惰眠をむさぼっていてはいけないのだ。心せねば。。

(2022.1.23 Sunday)

「まん延防止等予防措置」は効くのか

以下はすべて限られた個人的な体験である。

レストランでの定点観測からの教訓
筆者はホテルニューオータニのある和食レストランが好きで良くランチを食べに行く。最近では昨年12月28日と昨日行った。
二回とも12時半ころ行ったのだが、12月28日は満員で、辛うじてカウンター席で食べることができた。昨日(1月21日)はお客は2割ほ、窓側の席に座れた。昨年末はオミクロンの爆発前で人々は外食を楽しんでいたが、昨日のガラガラぶりには驚いた。
1月21日は丁度東京でマンボウが発令された日だ。レストランで聞くと、すでに数日前から客が急減しているという。
ここで得た決論は、
・人々はマンボウの有無にかかわらず陽性者が増えれば外出を自粛するようになるのだ。

飲食店への時間制限からの教訓
筆者はアルコール販売に大きく依存するある飲食チェーンの顧問をしている。こうしたチェーンではマンボウの発令は死活問題だ。夜8時以降のサラリーマンや大学生の飲食に大きく依存するビジネスは、マンボウによる時間制限で成り立たない。助成金は焼け石に水だ。
一方、自宅近くの小規模飲食店は、もともと8時以降はお客も少なく、営業時間短縮に伴う助成金は不労所得になりかねない。
ここで得た結論は、
・マンボウに伴う助成金は上手く機能していない。

以上の筆者の限られた経験からマンボウに対して言えることは、

・人流を抑制するのにマンボウを発出する必要はない。
人は陽性者が増えれば自粛するものだ。
・飲食店の時間制限は撤廃し飲食者の自己責任に任せるべきだ。
人数を4人までにするとか、マスクを外して大声で談笑するのは
控えてもらう、とか最低限のルールを徹底するだけで十分だと思う。

自己抑制力がつよくリスク回避志向がつよい日本(人)は、コロナ感染抑制に最も最適な国柄(国民)だ。

(2022. 1. 22 Saturday)

「円の実力低下、50年前並み」日経新聞を読んで

日経新聞の今日の1面に標記の見出しが躍っている。
記事を読むと50年前とは1972年を指している。昨日、宇沢先生の「自動車の社会的費用」(1974年刊)について思い出話を書いたが、またぞろ、学生時代に引っ張り込む記事が出た。

日本円は戦後1947年4月に1ドル360円と決められ、高度成長期の日本は実力に比べて安い円で輸出を伸ばした。対外赤字が増嵩したアメリカは、1971年8月15日にドルと金の交換を停止し、固定相場制から変動相場制へ移行した。いわゆるニクソンショックだ。

私は1971年4月に東大の文科Ⅱ類に入学したが、変動相場制移行は大問題だと学生の間では思われており、11月に行われた駒場祭で識者を集めて講演会を開催した。大勢の聴衆が集まると思い300人ほどは入れる教室を確保したら聴衆は30人ほどしかあつまらず、巷間言われるほど、円ドルレートにみんな興味がないんだなー、と痛感した記憶がある。

今確認すると、1971年末のドル円レートは1ドル315円だ。1972年は315円で始まり12月末は301円で終わっている。当時は円相場が上がって(円が強くなって)大変だという輸出企業の声が多数だった。また、個人的にはアジアにスタディツアーを組織したり、ボストンの会計事務所で2か月研修を受けた。円が強くなったので、随分暮らしやすく感じた。アメリカの物価水準も
あまり気にならなかった。要すれば、円は強くなった、と実感したわけだ。

弱い円は困る。が、50年前を持ち出されても、個人的な当時の体験とは齟齬があるのは上記の通りだ。そもそも、50歳以下の人達には想像の外であろう。

(2022.1.21)

世界の動き 2022.1.21 Friday

N.Y. Timesの電子版より

1.西側諸国は統一した対ロシア対策を急ぐ
【記事要旨】
 今日米国務長官と露外相の交渉が予定されているが、バイデン大統領はロシアが少しでもウクライナに侵入したら戦争につながることを警告した。強烈な対ロ制裁も覚悟すべきと。
 ただ、ドイツはロシアからのパイプラインへの対応で、フランスはEU各国が独自の対応策を考えるべきだという点で、米国と足並みが必ずしもそろっていない。
 米はNATOに属するバルト3国にウクライナへの武器の輸送を認めた。ロシアと共謀するウクライナ人に米は制裁を科したと発表。
【感想】
 ますますきな臭くなってきた。
 バルト3国からウクライナへ武器を運ぶってどうするんだろう。ロシアとベラルーシを通らないと行けなさそうだが。

2.オーストラリアの裁判官がジョコビッチへの判断の理由を説明
【記事要旨】
 テニス界のアイコンであり多くの人々に夢を与えるジョコビッチは特に若い人が模倣する恐れがある。だから今回の判断になった。
【感想】
 出入国管理とワクチン接種の妥当性には判断を示さず、ロールモデルの重要性の注意喚起した判断は、妥当だと思われる。

3.MITの中国出身の科学者への容疑が晴れる
【記事要旨】
 MITのGang Chen教授についての報道。記事だけでは要旨をつかめないのでWikipediaから引用します。
 In January 2021, Chen was charged by the United States Department of Justice with allegedly failing to disclose connections to several Chinese educational programs when submitting a federal rant application. His arrest prompted protests by academics and editorials in the scientific press over government targeting of Chinese-American professors. One year later, federal prosecutors dropped the charges after evidence showed that the disclosures in question were not actually required by the federal government.
【感想】
 現在のアメリカの大学は、中国からの優秀な教授陣と学生、中国の有力大学との提携なしには成り立たないところまで来ているのが問題の本質だろう。
 現在日本人でノーベル賞を取っている学者の多くが米国で米国の資金に支えられて研究をしてきたことを考えると、アメリカが中国への研究成果の流出を止めようとしても無理だと思われる。

(2022.1.21 Friday)

『自動車の社会的費用』

表記は、宇沢弘文教授が1974年に著した時代を先取りする名著だ。2022年2月号の雑誌「世界」で特集が組まれたので久しぶりに名前を聞き、大学3年の時に読んだ瑞々しい感覚を思い出した。

 当時の東大経済学部には綺羅星の如き経済学界の巨星が揃っていた。宇沢弘文、小宮竜太郎、根岸隆、浜田宏一といった先生方で、まだ皆さん巨星というのには若く元気いっぱいだった。

 自分は経済学部でも経営学科で、理論経済には弱い。宇沢先生のこの著書を覚えているのは、それが岩波新書でありとても読み易いものだったからだ。この中で宇沢先生は、クルマ社会の在り方に根源的な疑問を投げかけ、「社会的共通資本」(最近のベストセラー「人新生の資本論」で著者の斎藤幸平氏が説く「ソーシャル・コモン」に酷似した概念だ)の重要性を説いている。クルマ依存社会を拒否しなければ世界は持続しないまで1974年に述べているのだ。

 さて経済理論の話を続けるのは私には荷が重いので理論的な話はこの辺で。当時経済学部でもっとも人気のあった一人である宇沢先生がクルマ社会を否定する一方、最も人気のあるもう一人であった小宮先生は、クルマ愛好家で、どこに行くにも自家用車を運転していた。
 好対照のお二人だったなー。

(2022.1.20 Thursday)