世界の動き 2025年12月11日 木曜日

今日の一言
「原発の再開」
 柏崎刈羽、泊と原発の再開の決定が進んでいる。私がわからないのは、本当に原発が安全かどうかなのだ。
 福島第一原発では、震度7の地震が襲った際に原子炉が破壊されたのか、冷却水が断たれたために破壊されたのか、わかっていない。
 冷却水の供給は複数の手段で守ることができるだろうが、震度7以上の地震が原発を襲う事態は避けられない。長文の福島第一発電所の事故報告書を読んでもそこははっきりしない。
 原子炉の当時の状況は多くの人からのヒアリングで証拠を固めているが、ヒアリングをいくつ積み重ねても確証が得られないからだ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.物議をかもす平和賞受賞者
【記事要旨】
●ノーベル平和賞受賞者と背景
ベネズエラの事実上の野党指導者マリア・コリナ・マチャドが、民主化を平和的に推進しようとした功績でノーベル平和賞を受賞。
他の指導者が亡命する中、彼女は国内に残り、弾圧や検閲を行うマドゥロ政権に挑戦。選挙不正後は1年以上潜伏生活を送った。
●論争点
受賞をトランプ大統領に捧げたが、トランプ政権はカリブ海で軍事作戦を展開し、民間人犠牲を出していると批判されている。
マチャド自身も軍事力によるマドゥロ排除を支持しており、「平和賞」との整合性が疑問視されている。
●反発と抗議
ノーベル研究所前では「戦争屋に平和賞を与えるな」と抗議デモ。
ノルウェー平和評議会は伝統的な受賞者行進を拒否し、彼女は「平和の価値観に合致しない」と表明。
●歴史的文脈
ノーベル平和賞は過去にも論争を呼んできた。
– アウン・サン・スー・チー(1991年受賞後、ロヒンギャ虐殺擁護で批判)。
– オバマ大統領(就任直後に受賞、その後ドローン攻撃拡大)。
– キッシンジャー(1973年、ベトナム戦争停戦交渉で受賞も停戦崩壊)。
– アビィ・アハメド(2019年、民主化推進で受賞後ティグライ空爆)。
●民主主義と平和の関係
平和賞は象徴的意味が強く、マチャドの受賞は民主化を求める多くのベネズエラ市民を代表するものと解釈される。
彼女の娘は「民主主義は平和に不可欠であり、自由のために戦う覚悟が必要」と演説。
●賞の本質的課題
政治的に活動中の人物が受賞すると必然的に論争を呼ぶ。
亡命や拘束中の dissident(反体制派)なら受賞は比較的受け入れられるが、権力を持つ人物は複雑で、平和賞の理念と現実の政治の間に緊張が生じる。
【コメント】
マチャド氏の受賞は「独裁から民主主義への移行」を象徴する一方で、軍事介入を容認する姿勢が平和賞の理念と矛盾し、ノーベル平和賞の目的そのものを問い直す事例となっている。
昨年の被団協のような団体の受賞は問題がないが、今活動している政治家、トランプを含む、に賞を与えるのは考え物だ。

2.トランプ大統領補佐官がテート兄弟の釈放をいかに推進したか
【記事要旨】
 タイムズ紙の調査は、今年初めにアンドリュー・テートとその弟トリスタンがルーマニアから釈放された際に、トランプ政権当局者がいかに重要な役割を果たしたかを詳述している。
 いわゆる「マノスフィア(男性優位社会)」で威勢のいい影響力を持つこの兄弟は、女性にポルノ出演を強要したとしてルーマニアからの出国を禁じられた。彼らの釈放は、アンドリューがトランプ大統領の顧問や親族、大統領の息子であるバロンとドナルド・ジュニアを含む親族と連携を築こうと長年努力してきた成果だった。
【コメント】
テート兄弟の米国渡航は、トランプ政権関係者による外交的圧力と、トランプ家との人的ネットワークが大きな要因とされている。表向きにはトランプ本人は関与を否定したが、実際には米国特使がルーマニア政府に働きかけていたことが確認されており、司法と政治の境界が揺らいだ事例といえる。

その他の記事
・米国は外国人観光客のソーシャルメディア履歴を精査する計画だ。
・判事は、ジェフリー・エプスタイン事件に関する連邦大陪審の捜査記録開示請求を認めた。この捜査記録は、同事件についてこれまでで最も広範な情報を提供する可能性がある。
・捜査官によると、ルーブル美術館のセキュリティシステムは10月の強盗事件をカメラで捉えていたが、警備員がライブ映像を確認したのは手遅れだったという。
・米連邦準備制度理事会(FRB)は、賛否両論の末、政策金利を0.25%引き下げた。
・台湾は、国家安全保障への脅威を理由に、台湾の半導体メーカーTSMCからインテルに転職した幹部の自宅を家宅捜索した。

2025年12月11日 木曜日

世界の動き 2025年12月10日 水曜日

今日の一言
「そろばん」
 老齢者の認知症予防に効果があるということで静かなブームになっているようだ。
 当方、そろばんで困ったのは銀行員になりたての時だった。「札勘(さつかん」と並んで「そろばん」もある程度できなければならなかったのだ。小学校の時に学校で数時間習った後放っておいたそろばんを手に新入生研修に向かった。
 同期にそろばんの上手な人間がいた。9とか8を足すのにまごまごしている私に、9を足すには「1取るの10」8を足すには「2取るの10」と教えてくれた。
 たった一言でコツがつかめた瞬間だった。友のありがたさを感じた。ただ、営業店に配属後は、カシオの電卓(10桁で当時は4万円もした)を使ってしのぎ、そろばんを使うことは無かった。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.ヨーロッパの極右政党とトランプの微妙な関係
【記事要旨】
●米国の新国家安全保障戦略
– 「ヨーロッパの偉大さの促進」と題された章は、極右政党の宣言文のような内容。
– 大量移民でヨーロッパは「見分けがつかなくなる」とし、エリート層が言論を抑圧していると批判。
– 米国は移民に反対する「愛国的」政党を支援すべきだと主張。
●ヨーロッパの反応
– 主流政治家は「米国が内政干渉している」と激しく反発。
– 一方、支援対象とされる極右政党は沈黙を保ち、積極的な支持表明はほとんどない。
●「アメリカ・ファースト」との矛盾
– 第一次トランプ当選直後は極右政党が歓迎したが、二期目は関税政策などで現実は複雑化。
– ドイツAfD支持者の47%、フランス国民連合支持者の43%が「トランプは自国に悪影響」と回答。
– AfD共同代表ヴァイデルは「ドイツが不当に影響を受けた」と批判。
– 国民連合のバルデラは「米国による経済戦争」と非難し、「米国には良いがヨーロッパには悪い」と明言。
●根本的な緊張関係
– 極右政党は移民政策や反リベラル思想ではトランプと一致するが、貿易や安全保障では利害が衝突。
– 「アメリカ・ファースト」と「ドイツ・ファースト」「フランス・ファースト」は本質的に両立しない。
– ナショナリズムが「ゼロサム競争」を前提とするため、同盟関係には限界がある。
●今後の可能性
– フランスのバルデラはEUに対し「トランプの関税に報復せよ」と要求。
– EUが妥協的な関税合意を結ぶと、ヴァイデルは「EUの屈服」と批判。
– これは通常のEU批判であると同時に、将来的にトランプの欧州戦略を阻む要因となり得る兆しでもある。
【コメント】
ヨーロッパの極右政党は思想的にはトランプと近いが、経済・安全保障の利害対立から全面的な支持は困難だ。むしろ「自国第一」と「アメリカ第一」の矛盾が、彼らをトランプの潜在的な障害に変える可能性がある、という記事だ。お互いが自国第一を貫けば衝突が起こるのは当然であり、このタイムズの長文の論考は意味がない。

2.オーストラリアでソーシャルメディア禁止法が施行
【記事要旨】
 オーストラリアで本日施行された包括的な新法により、10代の若者や16歳未満の児童が保有する数十万件のソーシャルメディアアカウントが無効化される予定だ。
 この法律は、世界中の親、研究者、政府関係者から注視されるだろう。一部の10代の若者はVPNを使って禁止を回避するだろうし、多くの若者は最初に登録する際に年齢を偽ったり、中には両親の情報を使ってアカウントを取得したり、年上の兄弟姉妹の個人情報を悪用したりする者もいる。15歳の2人がこの禁止法に異議を唱え、裁判を起こしている。
【コメント】
 SNSは、ほとんどが石の玉石混交だ。オールドメディアはバラエティ番組だらけで見る気もしない。

その他の記事
・トランプ政権は、NVIDIAが同社で2番目に高性能なチップを中国に販売することを許可する。
・アフガニスタンとパキスタンは、幾度もの死傷者を出した軍事衝突の後、現在貿易戦争に陥っている。
・リトアニアは、隣国ベラルーシから送られた不審な風船を撃退した後、国家非常事態を宣言した。
・ブリジット・マクロン仏大統領夫人は、抗議者を非難する中傷的な言葉を使ったところ、動画に捉えられた。
・ホンジュラスは、トランプ大統領によって最近恩赦を受けたフアン・オルランド・エルナンデス前大統領に対し、国際逮捕状を発行した。

2025年12月10日 水曜日

世界の動き 2025年12月9日 火曜日

今日の一言
「ダブルの災害に備える」
 昨夜寝入りばなに長い震動を感じた。すぐTVをつけたところ青森で震度6強とのニュースだった。
 昨年の能登地震でもそうだったが、災害のダブルパンチが最近は起きるようになった。大地震と豪雨、大火災と津波、山火事と水不足といった具合だ。
 これからは一つの災害に備えるだけでなく、複合的に起こる事象に備える必要がある。
 これは自然現象だけでなく、身近な経済事象にも当てはまるだろう。「金利高」と「住宅高」、「物価高」と「失業」とかいろいろな事象が考えられる。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.第二の「チャイナ・ショック」
【記事要旨】
●第一のチャイナ・ショック(2000年代)
欧米企業が中国へ製造を委託し、中国は「世界の工場」と化した。安価な製品の大量輸出により欧米の産業が崩壊し、数百万規模の雇用が失われ、政治的影響は現在も続いている。
●第二のチャイナ・ショック(現在進行中)
– 米国市場では関税により販売が制限され、中国は輸出先を途上国へシフト。さらに現地に工場を建設している。
– 途上国は製造業依存度が高く、西側諸国以上に影響を受けやすい。
●具体的影響
– インドネシア:過去2年間で30万人以上が衣料・繊維産業の雇用を喪失。ソロ市では工場閉鎖により1万人が一夜で失業。
– タイ:中央銀行が「中国輸出の洪水」に警告。製造業の過剰能力が圧力を強めている。
– アフリカ:中国からの輸入が急増し、2025年9月には600億ドルに達し、前年をすでに超過。
– 中国の世界貿易黒字は初めて年間1兆ドルを突破。輸出は世界貿易全体の3倍の速度で拡大。
●工場の輸出
– ベトナム:家具や靴など労働集約型産業が移転し、現地雇用にプラス効果。
– マレーシア:中国企業が巨大な太陽光発電工場を建設し地元産業を駆逐。しかし米国の関税で中国企業が撤退し、マレーシアの太陽光産業は壊滅。
●社会的不安
– 多くの途上国で国内製造業が急減速。若年層人口が多く、失業や機会不足が抗議運動につながっている。
– インドネシアでは若者の抗議が拡大。反中感情が歴史的に根強く、1998年の暴動や2014年ベトナムでの工場焼き討ちの記憶が残る。
●教訓
西側は自ら中国の製造力を受け入れ、その後の社会的・政治的代償に苦しんできた。
一方、東南アジアやアフリカ諸国は望まずして第二のチャイナ・ショックに直面しており、今後の衝撃に備える必要がある。
【コメント】
 第二のチャイナ・ショックは途上国を中心に広がり、製造業の崩壊・失業・社会不安を引き起こしつつあり、影響は第一のショック同様に深刻になる可能性が高い。こうした見方があるのを知らなかった。

 巨大なドラゴンは世界中で軋轢を起こしている。ドラゴンが来る、彼と食卓をともにしなければ、食べられる方になってしまう。

2.ハマスはガザで「依然として抵抗」
【記事要旨】
 10月に停戦合意に基づきイスラエル軍がガザの一部から撤退して以来、ハマスは迅速に行動を起こし、再び警察部隊を街頭に展開している。
 ハマスは現在、ガザ地区の領土の半分以下を支配しており、残りはイスラエルが占領している。しかし、この過激派組織は再び勢力を回復することに成功した。「彼らは依然として抵抗を続けている」と、イスラエルの国内情報機関シンベトの元高官は述べた。この急速な再編は、ハマスのないガザを再建するという米国の計画にとって大きな障害となっている。
【コメント】
 壊滅間近と思っていたら、まだ頑張っているのか。。

3.タイとカンボジアの新たな戦闘の波
【記事要旨】
 タイとカンボジアの国境で新たな暴力が発生し、少なくとも5人が死亡、数十万人が避難を余儀なくされた。
 タイの戦闘機が昨日、カンボジアの標的を爆撃した。タイ軍は、この空爆は、同日早朝にカンボジアによる攻撃があり、少なくともタイ兵1人が死亡、8人が負傷したことへの報復措置であると述べた。今回の戦闘は、カンボジアとタイの間の亀裂がいかに深刻であるかを改めて浮き彫りにした。
【コメント】
 ここはディールメーカーの登場だ。トランプさん、助けて。

その他の記事
・シリアでは、反政府勢力が独裁者バッシャール・アル・アサドを倒してから1年が経ったことを祝った。
・パラマウントは、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーがストリーミング事業とスタジオ事業をNetflixに売却することに合意した数日後に、同社への敵対的買収を開始した。
・英国、フランス、ドイツの首脳は、和平交渉が難航する中、ウクライナへの支援を継続することを表明した。
・ナイジェリアのカトリック学校から誘拐された100人の子どもたちが日曜日に解放されたが、約165人の児童と職員は依然として拘束されている。
・ブラジルのサンパウロでは、武装集団が図書館からアンリ・マティスの作品を含む12点以上の美術作品を盗んだ。

2025年12月9日 火曜日

世界の動き 2025年12月8日 月曜日

今日の一言
「アンチエイジング」
昨夜NHK特集で「抗老化」の番組を見た。他人の血しょうを自分の体に入れてもらう人たちの例が紹介された。アルツハイマー型認知症の予防のためにも効果がある治療のようだ。パーキンソン病の治療のための脳に幹細胞を注入する手術も紹介された。
治療なら良いが、単なるアンチエイジングに保険が適用されない高額の治療を求める人達の動きには驚いた。
人間の生物学的な寿命は38年にすぎないのだが、ワクチンの開発や医学と保険活動で寿命が80歳まで伸びたという。番組の後半では、健康寿命が寿命に近づく未来は、どんな社会になっているかという哲学的な話になった。
メトホルミンという糖尿病の薬があり、私も服用している。ジェネリックのある一錠10円ほどの安価な薬だ。番組では、抗老化作用がありそうで研究が進んでいるそうだ。本当なら朗報だ。毎日忘れずに飲まなければ。

ニューヨークタイムズ電子版より
1.シリアにおける「奇跡」のような変化
【記事要旨】
●背景
シリアでは10年以上、飛行機の音は爆撃やロケット攻撃を意味していた。しかしアサド政権崩壊から1年が経ち、今では亡命者の帰国便や観光客を乗せた飛行機の音に変わりつつある。
●政権交代後の現状
– 反体制派が樹立した新政府(大統領アーメド・シャラー)が統治。
– 初期の楽観は後退し、宗派間暴力や意思決定の閉鎖性など批判も多い。
– 軍再建では忠誠心が専門性より優先されているとの指摘もある。
●課題と不安
– 電気料金の高騰、治安の不安(復讐殺人や誘拐)。
– 宗教・民族的少数派は新しいイスラム主導の方向性に懸念を抱く。
– 14年に及ぶ内戦で社会は深く分断され、信頼が失われている。
●変化と希望
– 前線は消え、国内外の避難民が帰還可能に。
– 徴兵制廃止で、多くの男性が安心して帰宅。
– アサド一家の写真や「壁に耳あり」という恐怖は消え、政治的発言の自由が拡大。
– 外貨使用禁止などの抑圧も撤廃。
– 行政機関で市民が尊重されるようになり、革命歌「頭を高く上げよ、あなたは自由なシリア人」が広く歌われている。
●国際的評価と象徴的行為
– 国際社会は新政権を歓迎し、外交関係を再構築。
– ただし支援は条件付きであり、課題は依然多い。
– 政府は軍用ヘリから花を撒くなど、空を「美の象徴」として取り戻す試みを行っている。
アサド大統領追放から1周年となる12月8日を記念して、本日も同様の措置を取る予定だと発表した。
【コメント】
アサド政権崩壊から1年、シリアは依然として課題山積ながらも「国家が機能していること自体が奇跡」と言える状況にあり、恐怖から解放された新しい日常と希望の兆しが芽生えているようだ。

2.ベナンでクーデター未遂事件
【記事要旨】
西アフリカの国ベナンは、昨日、軍関係者によるクーデター未遂事件が発生し、混乱に陥った。政府は軍関係者14人が逮捕されたと発表したが、詳細は不明である。
政府報道官は、パトリス・タロン大統領は無事だが、この日、公の場に姿を見せたり、声明を発表したりしていないと述べた。ベナンにおけるこうした事態の展開は、近年アフリカを揺るがしている不安定さを改めて浮き彫りにするものだ。2020年から2023年にかけて、軍によるクーデターが9件発生しており、これは過去数十年間で前例のない数である。
【コメント】
ベナンは西アフリカに位置する南北に細長い国で、東にナイジェリア、西にトーゴ、南はギニア湾に面し、北にブルキナファソとニジェールという4カ国に囲まれています。
国名 ベナン共和国(République du Bénin)
面積 112,622平方キロメートル(日本の約3分の1)
首都 ポルトノボ(Porto-Novo)(実質的首都機能はコトヌ)
人口 1,335万人(2022年、世銀)
民族 フォン族、ヨルバ族(南部)、アジャ族(モノ、クフォ川流域)、バリタ族、プール族(北部)、ソンバ族(アタコラ山地、トーゴ間)等46部族
言語 フランス語
バスケットの八村塁の父親がベナン人だ。

3.トランプ大統領の支持率低下
【記事要旨】
タイムズ紙の世論調査データ分析によると、トランプ大統領の支持率はここ数週間で低下している。数ヶ月安定していたことを考えると、この変化は小さいながらも顕著だ。
トランプ大統領に関するその他のニュース:
トランプ政権は新たな安全保障戦略を発表し、欧州諸国が自国の防衛に「主たる責任」を負うことを求めた。33ページに及ぶこの文書で最も衝撃的なのは、それが何を無視しているかだ。
【コメント】
●無視されている点(David Sangerの指摘)
– AUKUS協定への言及なし:米国・英国・オーストラリアの三国間安全保障協定(AUKUS)は近年「歴史的」と評されてきましたが、この文書では一切触れられていません。
– 同盟強化の欠如:バイデン政権が重視した「同盟再建」や「国際協調」への方向性は完全に無視され、むしろ欧州諸国を弱体化した存在として批判しています。
– 中東や他地域への関与縮小:過去の米国の中東政策への関与や体制変更の試みを否定し、非介入を強調しています。
– 文書の特徴
– ヨーロッパを「文明的自信を失った大陸」と描写し、移民や言論規制を理由に「文明の消滅の危機」に直面していると主張。
– ロシアとの関係を「存在的脅威」と捉える欧州を批判し、米国の視点からは「力を持ちながら自信を欠いている」と断じています。
– 同盟国への批判が強い一方で、米国の西半球での覇権強化を明確に打ち出しています。
●日本に関する記述のポイント
– 防衛費増額要求
文書は日本と韓国に対し、防衛費を大幅に増やすよう求めています。これは中国の覇権的行動を抑止するためであり、台湾やフィリピンを含む「第一列島線」の防衛を強化する狙いがあります。
– 台湾防衛との関連
台湾防衛を米国の重要課題と位置づけ、同盟国(日本を含む)と協力して「台湾の武力による併合を阻止する」能力を強化するとしています。
– 国際的文脈
欧州諸国には「自国防衛の主要責任」を求める一方、インド太平洋地域は「次世紀の経済・地政学的な主戦場」として特に重視され、日本はその中心的な同盟国として扱われています。
– 日本政府の対応
2025年10月の日米首脳会談で高市早苗首相は、トランプ大統領に先んじて「防衛費増額計画」を伝え、理解を得たと報じられています。日本はGDP比2%への防衛費引き上げを表明済みで、米国の要求に応える姿勢を示しました。

其の他の記事
・香港政府は、先月発生したマンション火災の影に隠れた立法府選挙の投票率向上を強く求めた。
・ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア軍に対し冬季戦闘への準備を命じ、米国当局との協議後も要求を曲げない姿勢を示した。
・Netflixは、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー・スタジオを827億ドルで買収する計画で、ハリウッドをはじめとするメディア業界のあり方を大きく変える可能性がある。
・サウジアラビアは、一部の外国人居住者へのアルコール販売をひそかに解禁した。
・ケイティ・ペリーとジャスティン・トルドー首相は、日本を観光中に一緒にポーズをとった写真で「インスタグラム公認」となった。

2025年12月8日 月曜日
太平洋戦争開戦の日だ。昨日は「トラトラトラ」を放映していた。

デル夫妻の子供向け巨額寄付プログラム

先週のどこかでニューヨークタイムズで読んだ記事だ。
 思い出せないのでCopilotに聞いたら、すぐに詳しく回答してくれた。以下はCopilotの説明だ。
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概要:
 マイケル&スーザン・デル夫妻は、米国の子供たちに対して 総額62.5億ドル(約9兆円) を拠出し、最大 2,500万人の子供 に一人あたり 250ドル を投資口座へ入金する支援を行います。この取り組みは米政府の「Invest America(通称トランプ・アカウント)」を補完するもので、子供たちの将来の教育・住宅・起業資金の基盤を作ることを目的としています。

支援の仕組み
– 対象: 主に 10歳以下の子供(2025年以前に生まれたため政府の新生児向け1,000ドル給付の対象外となる層)。
– 条件: 世帯収入の中央値が 15万ドル未満のZIPコード に住む子供。
– 人数: 最大 2,500万人。
– 拠出額: 一人あたり 250ドル、総額 62.5億ドル。
– 運用: 投資口座は 株価指数連動型ファンドに投資され、18歳まで引き出し不可。

政府プログラムとの関係
– Invest America(トランプ・アカウント):
– 2025~2028年生まれの新生児に対し、米財務省が 1,000ドル を口座に拠出。
– 親や親族、企業などが年間最大 5,000ドル を追加拠出可能。
– 18歳以降に教育、職業訓練、住宅購入、起業資金などに利用できる。
– デル夫妻の寄付:
– 政府の新生児給付対象外の子供にも「資産形成のスタートライン」を提供。
– 低・中所得層の子供たちに広く恩恵を与える。

社会的意義
– 資産形成の格差是正: 富裕層だけでなく一般家庭の子供にも投資口座を持たせる。
– 金融リテラシー促進: 子供が「自分の投資口座」を持つことで、将来の金融教育にもつながる。
– 長期的効果: 18歳まで運用されるため、複利効果で大きな資産形成が可能。
– 象徴的規模: 米国史上最大級の子供向け民間寄付であり、他の企業・慈善家への呼びかけにもなる。

まとめ
デル夫妻の支援は、「生まれた環境に左右されず、子供に資産形成の機会を与える」という理念に基づいたものです。政府の新制度を補完し、低・中所得層の子供たちに広く恩恵を届けることで、教育・住宅・起業など人生の大きな節目に備える基盤を提供する極めて画期的な取り組みです。
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 デル氏とはPCのDellの創業者だ。1984年にわずか1,000ドルで起業したDell社を巨大テック企業に成長させた人物だ。デル夫妻の総資産は210兆円と推定されている。それにしても総額9兆円の支援プログラムは巨額だ。日本政府の子供支援政策がかすんで見える。
 支援対象選別の根拠を郵便番号に依拠しているのもユニークだ。私が以前住んでいたScarsdaleというニューヨーク近郊の町はZipCode 10583。 所帯収入中央値は$250001で対象外。隣接するWhitePlainsという都市は$114956で対象になる。全米の約8割の世帯が対象になるとの推計もある。
 10歳以下の児童に、デル氏が骨身に染みて知ったはずの「福利の力」を経験させようという狙いもユニークだ。
 英語で言うTime Value of Money. 今日の1ドルは10年後にいくらになるか。10年後に約束された1ドルは、今はいったいいくらが妥当か。こういったことは米国の金融論の基礎だ。このプランが実現すれば、多くの米国人の子供たちが、蓄えた資金を元手に、デル氏のように起業に挑戦することだろう。
 210兆円の資産から9兆円の寄付ということは約4.3%の寄付だ。デル氏には及びもつかないが、210万円から9万円なら可能かもしれない。「より良い世の中にするために何かできるかもしれない」と普段考えることのないことを考える年の瀬だ。

2025年12月7日 日曜日