【株式市場の動向】
12月1日~5日の1週間、米国株は小幅高で推移しつつも、暗号資産急落や経済指標を受けた金利観測の揺れから上値を抑えられ、日本株は日銀の利上げ観測と弱い家計指標で上昇一服・調整色が強まりました。
米国株式市場の動向
米国では、12月入り直後の1日に暗号資産ビットコインの急落と、11月末までの急ピッチな上昇の反動から、ダウ・S&P500・ナスダックがそろって反落し、利益確定売りが優勢となりました。 その後の週後半は、雇用関連指標やインフレ指標が「利下げ期待を維持しつつも景気急減速懸念を和らげる」内容となり、FRBの12月利下げ観測がほぼ織り込まれたことで、S&P500とナスダックを中心に底堅い推移となりました。
週末時点で、S&P500は12月1日の6,812台から5日にかけて6,870ポイント前後まで上昇し、週間ではおおむね+0.8%程度の小幅高とみられます。 ナスダック総合も23,275台から23,570前後まで上昇しており、ハイテク・成長株への物色が継続した結果、週間で+1%弱の上昇となったと解釈できます。 一方、ダウ平均は1日に約0.9%下落して始まった後、週後半にかけて戻りを試したものの、インフレ指標発表を前に景気敏感株の戻りが鈍く、週間ではほぼ横ばい~小幅安圏での推移となりました。
日本株式市場の動向
日本株は、前週までの米株高と米利下げ期待を背景に高値圏にあったところへ、12月入り後に日銀の12月会合での利上げ観測が一段と強まり、長期金利上昇と円高進行を通じて輸出関連株中心に調整が進みました。 さらに、家計消費の弱さを示す統計が出たことで、スタグフレ懸念も意識され、投資家がポジションを軽くする動きが広がりました。
Nikkei 225は5日に約50,400円台で引けており、前週末の水準(5万250円前後)からみると、1~5日の週は概ね▲1%強の下落とみられます。 TOPIXも同様に、3,360ポイント前後まで下落しており、こちらも週間では▲1%前後のマイナス圏で推移しました。 銀行株など金利上昇の恩恵を受けるセクターには物色が入った一方で、半導体関連や輸出株など、これまで上昇をけん引してきた銘柄群に利益確定売りが出た点が、日本株全体の重しとなりました。
主な指数の終値と騰落率(イメージ)
以下は、公表データや報道をもとにした概ねの水準と方向性イメージです(厳密な数値は各取引所・指数プロバイダの公式データで確認する必要があります)。
指数 12/5頃の終値水準(概ね) 週間騰落率の方向
ダウ平均 47,900前後 小幅安~横ばい
S&P500 6,870前後 小幅高(+0%台後半)
NASDAQ総合 23,570前後 小幅高(+1%弱)
日経225 50,400台 下落(▲1%強)
TOPIX 3,360前後 下落(▲1%前後)
株価を動かした主な要因
米国では、11月の急上昇後の反動売り・ビットコイン急落などリスク資産全般への警戒が、週初の下落要因となりました。 しかし、インフレ鈍化と雇用指標のバランスのとれた内容から、12月FOMCでの利下げ期待が維持され、長期金利の大きな再上昇が抑えられたことで、週後半の株価は持ち直しました。
日本では、日銀・植田総裁の発言や政府要人が利上げ容認とも取れる姿勢を見せたことで、12月利上げ観測が高まり、金利上昇と円高懸念が輸出株・グロース株の売り材料となりました。 あわせて、家計支出の弱さなど国内マクロ指標が冴えず、実体経済への不安が出たことで、日経平均・TOPIXともに高値からの調整局面となりました。
【今週の予想】
12月8日~12日の週は、「米FOMC(9~10日)」と「日銀12月会合観測の高まり」が最大のテーマで、米国株はイベント待ちで神経質なレンジ、日経平均・TOPIXは金利上昇・円高懸念を意識しつつ、FOMC内容次第でボラティリティが高まりやすい展開が予想されます。
今週予定されている主なイベント
米FOMC:12月9~10日に今年最後の会合が予定されており、10日(水)14:00(米東部時間)に声明と金利決定、14:30から記者会見が行われる見通しです。 市場コンセンサスは「0.25%の利下げ+2026年以降の利下げペースは抑制的」とする見方が優勢で、ドットチャートや成長・インフレ見通しが株式市場のカギになります。
米経済指標:FOMC前後の週では、政府閉鎖の遅延で後ろ倒しになっていた小売売上高や雇用関連指標、インフレ関連の遅延統計などが公表される予定で、景気減速度合いと物価鈍化が同時にチェックされます。
日本の経済指標・日銀関連:今週は8日に金融機関の主要数値、9日にマネーストック、10日に企業物価指数(CGPI)が予定されており、物価圧力と金融環境に関する材料が相次ぎます。 18~19日の日銀会合に向けて、ロイターやブルームバーグは「12月利上げの公算が高い」と報じており、今週も賃金・物価・円相場をにらみつつ利上げ観測が続くとみられます。
米国株式市場の予想シナリオ
米株はFOMCを前に、ハイテク・グロース主導の上昇相場の一服と、イベント通過待ちの様子見姿勢が強まりやすいと考えられます。 一般的には、以下のようなパターンが想定されます。
ベースシナリオ:0.25%利下げ+2026年の利下げ回数をやや抑制する「ハト派だが慎重」なメッセージとなれば、長期金利は大きく上昇せず、S&P500・ナスダックは一時乱高下しつつも、週末にかけてじり高~小幅高で引ける展開がメインシナリオです。
ネガティブシナリオ:利下げは行うものの、ドットがタカ派寄り(将来の利下げ回数が大幅に減る)となった場合、ハイテク・高PER銘柄への調整圧力が強まり、ナスダック中心に下振れリスクがあります。
ポジティブサプライズ:インフレ見通しが一段と下方修正され、長期的な中立金利見通しが低めに示されれば、金利敏感株・グロース株に買い戻しが入り、主要3指数とも高値更新を試す可能性も意識されます。
日本株式市場の予想シナリオ
日本株は、「日銀12月利上げほぼ確実視+円高バイアス」という逆風の中で、FOMC結果と米金利・ドル円の動きに強く左右される展開になりやすいと見込まれます。
ベースシナリオ:FOMCが想定内のハト派寄りで、米長期金利が落ち着き、ドル円の急激な円高がなければ、輸出株の下げは限定的となり、日経225・TOPIXともに「高値圏でのボックス相場」にとどまる公算が大きいです。 一方で、日銀利上げ観測を背景に、銀行・保険など金融株には相対的な物色が続きやすいと見られます。
ネガティブシナリオ:FOMCがタカ派に傾き、ドル高・金利高でグローバル株全体が調整、加えて日本の企業物価が強く出て「日銀は積極的に利上げすべき」との見方が強まると、株安・金利高・円高が同時進行するリスクがあります。
ポジティブシナリオ:FOMCが十分ハト派で、世界的に長期金利が低下する一方、日銀は「12月利上げはするが、その後は非常に緩やかなペース」との観測が広がれば、円高は限定的となり、日本株も押し目買いが入りやすくなります。
投資家が注目すべきポイント
今週は、単発の経済指標よりも「政策当局のスタンス」と「金利・為替の反応」が株式市場に与える影響が大きい1週間になりそうです。 特に、FOMC後の米10年債利回り、ドル円、日銀会合に向けたコメント・報道のトーンを丁寧に追うことが、米国株・日本株双方の短期的な方向感を読むうえで重要と考えられます。
【PR市場、プライベートクレジット市場動向】
2025年のPE市場動向
2024年にセカンダリー市場や部分的なIPO/M&A再開で「流動性の目詰まり解消」が進み、2025年は金利低下とマクロ安定を前提にディール・エグジットの両面で回復が続くシナリオが有力です。
ドライパウダーは過去最高水準にあり、マルチプル拡大ではなく「オペレーショナルな価値創造」がリターン源泉になるとの見方が大勢で、中堅企業・グロースエクイティ・テーマ型(デジタル、レギュレーション対応、エネルギー転換など)への投資志向が強まっています。
ファンドレイズは2023–24年より改善しており、2025年通年で前年比2桁増ペースとの集計も出ていますが、引き続き「大手/実績ファンドに資金が集中し、スモール/新規GPは厳しい」という二極化は継続しています。
プライベートクレジットと銀行参入の影響
2024年以降、レバレッジドローン市場と銀行バランスシートの回復により、大型案件では銀行・シンジケートローンとの競合が再燃し、2025年もこの流れが続くと見込まれています。
その結果、特に上位ミッド~ラージキャップ案件の新規プライベートクレジットのスプレッドは2024年から低下傾向にあり、SOFR+500bpを下回る案件の比率が増加するなど「マージン圧縮」が明確に観測されています。
競争激化とドライパウダーの圧力により、プライシング以外(レバレッジ水準、コベナント、ドキュメンテーション)の緩みも懸念されており、特に上位ミッドマーケットではコベナント・ライト化が進んだとの指摘があります。
信用リスクと規制面の懸念
IMFやBIS等は、プライベートクレジットの急拡大と、銀行との結び付き(ファンドへのレバレッジ提供や共同オリジネーション)を通じたショック波及リスクを警戒しており、「スプレッド低下とアンダーライティング基準の緩みが続けば、将来的な損失顕在化時にシステミックリスクとなりうる」と警告しています。
実務サイドでも、2021年前後の高レバレッジ案件が金利高と業績鈍化のなかで圧迫されており、2025年にかけてデフォルト率がパブリッククレジット水準へ近づく、もしくは一時的に上回るとの予測も出ています。
もっとも、全般としては依然として公開ローン・ハイイールドより高いスプレッドとコベナント・コントロールを維持できるセグメントも多く、「マネージャー間・ストラテジー間のリスク・リターン格差が拡大する局面」と見る向きが強いです。
2025年12月6日 土曜日