内部監査の新しい役割

GRC Report Insights – A New Role for the Internal Audit Function January 10, 2026 より

 内部監査機能の新しい役割を説くGRC Reportの記事だ。いろいろと示唆に富むので紹介したい。著者はNorman Marks氏。内部監査のベテランで論客だ。

【記事の内容】
主なポイント
内部監査の役割の拡大:内部監査リーダーは、取締役会と監査委員会の有効性を積極的に支援することで、従来の保証業務を超えることができる。
実践的なガバナンス支援:(監査委員会)規程の起草、議題の策定、外部監査人との連携、自己評価の実施といった活動は、監督体制を大幅に強化することができる。
ガバナンスを加速させるテクノロジー:AIなどの新興ツールは、取締役会が大量の情報から迅速に洞察を引き出し、真に重要な事項に集中するのに役立つ。
取締役会の支援者としての最高監査責任者(CAE):スタッフ、アドバイザー、ファシリテーターとして活動することで、CAEは取締役会メンバーがテクノロジーをより効果的に活用し、経営陣に適切な質問を投げかけることを支援できる。
価値の創造と保全:ガバナンスへの内部監査の貢献を高めることは、最終的に組織の価値創造、保全、そして持続能力の向上につながる。

詳細分析
 この記事では、筆者が、従来の保証業務を超え、取締役会と監査委員会の運営をより効果的に支援するCAEの役割の進化について考察している。 AIとテクノロジーによって新たな機会が生まれていることから、筆者は、内部監査機能は取締役会のガバナンス、洞察、そしてパフォーマンスを強化することで、より大きな価値を提供できると主張している。

AI時代において内部監査リーダーが取締役会のパフォーマンスを強化する方法

 IIA(内部監査人協会)は、内部監査の「目的」を次のように定義している。「内部監査は、取締役会と経営陣に対し、独立した、リスクに基づいた、客観的な保証、助言、洞察、そして先見性を提供することで、組織が価値を創造、保護、そして維持する能力を強化する。」
 この文には多くの意味が含まれている(「積極的」、「価値ある」、「将来を見据えた」といった言葉を用いることで、より明確にすることができる)。しかし、この目的の記述からは明確ではないかもしれないが、多くの成功しているCAEが果たしている内部監査の役割がある。その役割とは、取締役会と監査委員会の実効性を高めることだ。
 内部監査部門は監査委員会に報告しており、私(Marks氏)はCAEとして常に、ガバナンスと監督の役割において、委員会を支援するためにできる限りのことを行うことを自分の目的と捉えていた。例えば、私は次のようなことを行った。

・監査委員会規程を起草し、必要に応じて変更を提案した。
・監査委員会の議題作成を支援した。(ある企業では、取締役会のIT委員会の議題作成にも協力した。)
・取締役会規程のどの項目をいつ取り上げるべきかスケジュールを管理し、その議題が会議の議題に確実に含まれるようにした。
・議題の草案を作成し、議長とCFOと協議した後、議長が最終承認した。
・外部監査人と協力し、彼らの資料が適切な会議で監査委員会に提出されるよう努めた。
・資料を委員会メンバーに時間通りに提出するよう強く促した。
・議長と法務顧問の承認を得るため、監査委員会の議事録を作成した。
・監査委員会の新メンバーにオリエンテーション研修を行った。
・監査委員会とそのメンバーの自己評価プロセスを主導した。
・自己評価の結果、研修の必要性が明らかになった場合は、研修を提供または促進した。
・ある取締役は英語が苦手だった。資料の理解と議論の準備を支援するため、毎回会議の前に彼の自宅で個別に面談を行った。
・外部監査人のパフォーマンス評価を行う時期が来た際、私は世界中の経営陣を対象に調査を行い、その結果を監査委員会と経営幹部に報告した。

 今、私たちはより多くのことを実現できる。取締役会ポータルへのAIの統合や、エージェントAIのより一般的な活用といったテクノロジーの進歩は、取締役会、委員会、そしてそのメンバーがより効果的かつ効率的に業務を遂行する機会となる。組織の運営についてより深い洞察を効率的に得ることができ、より適切な質問をしたり、必要に応じて経営陣に異議を唱えたりすることが可能になる。

 例えば、取締役会の資料(多くの場合、会議の直前に配布されます)を何百ページにもわたって精読​​する代わりに、AIを活用して資料を要約し、議論のテーマや論点を特定することができる。AIは、些細な情報の山から重要な情報を見つけ出すのに役立つ。

 CAEとして、私は機能的に監査委員会に報告してきた。多くの点で、私は彼らのスタッフであり、アシスタントであり、秘書であり、アドバイザーとしての役割を受け入れてきた。今、我々は、彼らがパフォーマンスを向上させるために新しいテクノロジーを導入し、活用できるよう支援する機会、そしておそらくは義務を負っている。

 多くのCAEは、業務におけるAIの活用方法を模索している。AIなどのテクノロジーを活用して取締役会や委員会、そしてメンバーの業務効率化を支援し、大きな付加価値(そして高い評価と感謝の気持ち)を創出することに挑戦しよう。

【コメント:実際にできているのか】
 この論考の筆者は、「取締役会・監査委員会の実務的サポート+AI活用支援」を包括的にCAEが行うことを提唱している。「先進的な機能」を標榜しているということは、こうしたことを実際に実行できているCAEが少ないことの証左であろう。
 米国での実際の事例をPerplextyAIで調べてみると以下の事例が出てきた。

1. ガバナンス面でボードを支える CAE 事例
 ある企業では、CAE が取締役会から「内部監査チームからもっと価値を引き出すにはどうしたらよいか」と直に依頼を受け、ボードの期待を踏まえて監査計画や報告のあり方を見直したケースが紹介されている。
​ 同ケースでは、内部監査部門が経営・取締役会双方との対話を通じて、リスク/ガバナンス課題を可視化することで、ボードのモニタリングを実質的に強化しており、筆者の言う「ボードのスタッフ・アドバイザー」としての役割に近い位置づけになっている。

2. AI ガバナンスと取締役会連携に踏み込む CAE 事例
 The ODP Corporation では、取締役会が AI ガバナンス計画の策定を経営に指示し、そのプロセスに内部監査が関与、CAE が AI ガバナンス委員会のメンバーとして参加していると報告されている。
​ この枠組みでは、AI 導入のマイルストーンや新たなリスク、必要なコントロールについて取締役会レベルの議論が行われており、内部監査が AI ガバナンスの設計・モニタリングを通じて取締役会の監督機能を支援している点で、筆者の提案する「価値創造と保全に貢献する内部監査」の具体例と見ることができる。

3. AI を活用して取締役会向けインサイトを強化する内部監査の事例
 IIA Foundation と AuditBoard の共同調査では、複数の CAE が GenAI を使って監査計画立案や指摘事項・統制記述のドラフトを高速化し、その分をリスクインサイトの深化やステークホルダーとの高度な対話に振り向けている事例が紹介されている。
​ 別の事例では、AI による継続的モニタリングとダッシュボード化により、取締役会・監査委員会がリアルタイムに近い形で重要リスクの兆候を把握できるようになり、「従来の事後的な監査報告」から「意思決定支援ツール」としての内部監査へと役割をシフトさせつつあると説明されている。

4. CAE が取締役会の「AI 利用能力」を高めている動き
 EY などの大手ファームは、CAE が AI リスク・AI ガバナンスをテーマにした年間監査計画を組み、同時にボード・経営向けに AI リスク教育やワークショップを提供することを推奨しており、実務でもこうした教育・ファシリテーションを担う CAE が現れている。
​ 上記のような企業では、AI を単に監査効率化に使うだけでなく、取締役会・監査委員会が AI の可能性とリスクを理解し、経営に対してより良い質問を投げかけられるようにすることを、CAE の重要なミッションの一つと位置づけている。​
 筆者の論考の「実装イメージ」として整理すると
・委員会規程案の起案・定期的な見直し支援
・議題設定・年次スケジュール管理・外部監査人との調整
・委員会自己評価のリードと結果に基づくトレーニング提供
・個々の委員のニーズに応じた資料理解支援
・さらに AI・ボードポータルの活用をボード側に「導入・教育する役割」

ということになるが、これらを「フルセットで」開示しているケースは見当たらない。 一方で、AI ガバナンス委員会への参画、取締役会向けリスク・AI 教育、GenAI によりボードへのインサイト提供を強化する内部監査の実務は既に複数社で確認でき、筆者のの描く新しいロールに向かう潮流は明確に出ていると言えそうだ。

【より重要なコメント:日本への応用】
 私(水島)自身は、内部監査部、非上場企業の監査役、上場企業の監査役、上場企業の社外取締役、上場企業の社外監査等委員、という役職を通じで、内部監査と取締役会の関係を見てきた。

 筆者が言うような関係をCAEが経営陣や取締役会と築くには、CAEが彼らの役に立つ監査を行い洞察を提供するという認識を獲得することが何より重要だ。また、取締役会メンバーに少なくとも一人は内部監査のかかる機能に理解を持つメンバーが必要だ。取締役会で内部監査の定例報告すらない企業を数多く見てきた。内部監査の機能が企業で理解されていない証左であり、IIAが何と言ってもIIAのルールで日本の企業が動くわけではない。

 監査委員会規程や取締役会規程の「文言に手を入れてほしい」というレベルまで信頼されるには、単に“腕がいい監査部長”では足りず、「信頼されるガバナンス・パートナー」としての総合力が求められる。 その信頼は、一度の成果ではなく、行動とコミュニケーションの積み重ねで形成される。

1. 専門性・独立性・一貫性
 IIA は、CAE に対して「基準の遵守」「十分なスキル」「組織戦略との整合」を満たした上で、取締役会・監査委員会の“trusted advisor”であることを期待している。
​ 経営陣や取締役会メンバーに不都合な内容でも、事実とリスクをブレずに伝える姿勢を保つことが、監査委員会側の「この人の話は信じてよい」という感覚を育てる可能性が高まる。

2. 監査委員会の「視点に立つ」姿勢
 監査委員長は、重いアジェンダの中から何を優先し、どのリスクに時間を割るべきか悩んでおり、CAEには「委員長の立場になって考え、戦略的な助言をしてほしい」と期待している(はずだ)。
​ 規程やチャーターの議論も、「委員会が法令・コーポレートガバナンス・ステークホルダー要求をどう満たすか」という観点で提案すると、形式改定でなく“課題解決のための文言変更”として受け入れられやすくなるかもしれない。

3. 継続的でオープンなコミュニケーション
 良好な関係は、定例会の場だけでなく、四半期ごとの1対1ミーティングや電話での事前すり合わせなど、頻度と質の高い対話から生まれると考えられる。
​ 「会議でいきなりサプライズを出さない」「事前に重要論点や難しい指摘を共有し、委員長の考えも聞く」ことで、委員長は CAE を“安心して相談できる相手”と認識し、規程・チャーター案へのコメントも求めやすくなる。​

4. 経営陣との建設的な関係
 信頼される CAE は、監査委員会だけでなく CEO・CFO など経営陣とも健全な関係を築き、「攻撃的な“内部監察”」ではなく「厳しくも建設的なパートナー」として振る舞うことが肝要だ。
​ 経営と対立している内部監査では、規程改定の場に出してもらえず、逆に「経営と必要な緊張関係を保ちつつも、合意形成できる人物」と見なされることで、委員会規程や取締役会規程の起案・レビューに関与させてもらえる余地が広がる。

5. 実務で示す「ガバナンスへの貢献」
 規程そのものだけでなく、リスクアジェンダの優先順位付け、重要な不祥事・不正リスクの早期把握、複雑な規制対応の整理などで「取締役会の目と耳」として価値を出す CAE は、自然と規程・チャーター改定にも意見を求められるようになる。
​ IIA の「Relationships of Trust」でも、内部監査が組織の目的達成と価値創造にどれだけ貢献しているかを継続的に示すことが、委員会からの信頼と“席(seat at the table)”を獲得する鍵だと強調されている。

6. 日本企業の CAE が意識すべきポイント
 形式論ではなく、「会社法・コーポレートガバナンス・コード・取引所要請を踏まえたベストプラクティスとして、この条文をこう変えると、委員会のモニタリング品質が上がる」という“法務・ガバナンスの両面からの提案力”が肝になる。
 監査委員会・指名報酬委員会・リスク委員会などと横串に関係を作り、「規程の文言」よりも「委員会の実効性向上」に焦点を当てた対話を重ね、その延長線上として規程改定への関与を求めてもらう流れを意識してゆきたい。

2026年1月11日 日曜日

株式市場動向 2026年1月2日から9日 備忘録

【株式市場全般】 米国は年初に一度下落した後、1月7~8日にかけて主要指数が再び高値圏に乗せる展開となり、日本は初商い(1月5日)から日経平均が約3%急騰する「強いスタート」となりました。 地政学リスクの高まりはボラティリティやセクター間の強弱に影響を与えたものの、生成AI関連・半導体と大型テック(マグニフィセント7周辺)への資金集中という、2025年からの流れを基本的には継続させています。

1. 米国株式市場(1/2~1/9)
1月2日の米株は2026年初日こそエネルギー・資本財が上昇する一方、消費関連や通信サービスが軟調で、S&P500・ナスダックとも週トータルではマイナススタートとなりました。
​ ただし、その後の取引ではダウが1月7日に49,000ドル台へ上昇し、S&P500も過去最高値更新、ナスダックも上昇する局面があり、週後半にかけて指数全体は再び高値圏を試す動きとなっています。

 米国主要指数
S&P500
2025年終値:約6,845ポイント
2026年1月9日終値:6,966.28ポイント 騰落率:約+1.77%
ダウ平均
2025年終値:約48,062ポイント
​2026年1月9日終値:49,504.07ポイント騰 落率:約+3.00%
NASDAQ総合
2025年終値:約23,242ポイント
​2026年1月9日終値:23,671.35ポイント 騰落率:約+1.85%

2. 日本株式市場(1/5~1/9)
 東京市場は1月5日の大発会で日経平均が前営業日比約1,493円高(+2.96%)の51,832.80円、TOPIXも約2%高で、2026年を力強くスタートしました。
​ 上昇を主導したのは半導体・AI関連など大型テックであり、背景には米国でのAI・半導体株高と円安進行を織り込んだ海外投資家の買いがあると分析されています。

 日本主要指数
日経平均
2025年終値:50,339.48円 2026年1月9日終値:51,939.89円
​騰落率:約+3.18%
TOPIX
2025年終値:3,408.97ポイント 2026年1月9日終値:3,514.11ポイント 騰落率:約+3.08%

3. 地政学リスクの影響
 年初は米軍によるベネズエラへの軍事行動など、地政学リスク要因が意識されましたが、東京市場ではこれに対する反応は限定的で、むしろAI・半導体主導の上昇トレンドが優勢でした。
​ 米国市場でもインフレ鈍化や利下げ観測、強い企業収益がリスク要因をある程度相殺し、指数全体としては「調整を挟みつつも高値圏維持」という姿になっており、リスクはボラティリティ要因として残りつつもトレンドを完全には崩していません。

4. 生成AI関連・半導体の過熱感
 米国では2026年入り後も半導体・AI関連株が上昇基調を維持し、1月2日のセクター別ではエネルギー・資本財と並んでチップ(半導体)銘柄が上昇し、市場を相対的にアウトパフォームしました。
​ 日本でも大発会の急騰は「米国でのAI・半導体高を受けた買い」が主因とされ、生成AI・半導体関連への期待と高バリュエーション容認のムードが、TOPIXの史上最高値更新や日経平均5万2千円台回復に反映されています。

5. マグニフィセント7等への集中
 2025年に市場を牽引したマグニフィセント7については、年初の局面ではグループ全体で足元5営業日連続下落するなど、やや調整色が強く、「一強相場」からのスタイル分散をうかがわせる動きも出ています。
​ 一方で、「マグニフィセント7」全体の利益成長率はS&P500平均を上回っており、AI関連投資の恩恵を受けるメガテックへの中長期的な期待は依然として高く、2026年の市場見通しでもこれら大型テックが重要な収益ドライバーであり続けるとの評価が多い状況です。
​ このため、年初の米日株式市場は「地政学リスクと高バリュエーションへの警戒からの一時的な調整」を挟みつつも、生成AI・半導体と大型テックを軸とした上昇トレンドを基本線として維持し、市場構造としては依然「AI・メガテック偏重」の色彩が強いスタートになったと整理できます。

 まだまだタイタニックの甲板での音楽会は続くようだ。いつ市場がピークを打ち、その後崩落するかは誰にもわからない。

【PE市場、プライベートクレジット市場の動き】 昨年末から足元にかけて、PEもプライベートクレジットも「コロナ後の調整から回復・再アクセル」に入っており、特にエグジット再開とプライベートクレジットへの資金流入が目立っています。 公募市場のボラティリティや関税・地政学要因を横目に見つつ、「ディシプリン強化+流動性確保」をキーワードに2026年サイクルに入っている印象です。

PE市場:ディール・エグジットの回復

 2025年後半は世界のPEディール価値が前年同期比で2ケタ増となり、Q3時点で年間1.6兆ドル(前年同期比+23%)規模に達するなど、2023年前後の停滞から明確な回復が確認されています。M&A・IPOの回復でエグジット価値も2025年Q3までで2022〜24年の通年を上回るペースとなり、LPへの分配再開期待から2026年の売却案件増が見込まれているのが昨年末以降の大きな変化です。

PEの投資テーマとスタンス

 テック・インフラ・サービス(特にデジタルインフラ、エネルギートランジション、ミッションクリティカルSaaS)がディール中心で、バリュエーションは高止まりだが「ハンズオンでの価値創造」を前提としたより選別的な投資が主流になっています。2025年半ば以降の関税・金利不透明感を受け、「レバレッジ抑制」「ストラクチャーの保守化」「ファンドレベルでの流動性管理強化」がキーワードとなり、2026年に向けてもディシプリン重視のトーンが維持されています。

プライベートクレジット:成長と質の両にらみ

 2025年を通じてプライベートクレジットAUMは前年比で数%台の四半期成長を続け、特にQ1〜Q2は4~5%成長と強い伸び、その後やや減速しつつもQ3〜Q4にかけて再加速が見込まれるなど、「拡大トレンドが続いた年」と整理されています。直接融資(ダイレクトレンディング)はタリフ不透明感やボラティリティでディール数自体はモデストながら、リファイナンスとアドオンM&A向けの案件が目立ち、スプレッドは高水準を維持したまま2026年入りしています。

プライベートクレジットの昨年末からの注目点

 2026年アウトルックでは、第一順位シニアローンの直接起源案件の利回りが8.0~8.5%程度でトラフを形成するとの見方が多く、利下げが浅い中で「依然として過去12年の上半分の水準」として、イールド面の魅力が強調されています。​   セミリキッド型ビークル(個人向けオープンエンド/インターバルファンド)への資金流入が加速し、米国ダイレクトレンディング市場の約3分の1を占める水準に達したことは、2025年末時点での大きな構造変化です。

公募クレジットとの関係・構造面の変化

 2024~25年にかけて「プライベート→パブリック」「パブリック→プライベート」のリファイナンスがほぼ同程度見られるなど、レバレッジドローン・ハイイールド市場との間で資金調達が双方向に行き来する状況が定着しつつあります。​  銀行は貸出をバランスシートから落とし、プライベートクレジットと共同で組成するケースが増えており、レバレッジの一部が銀行からノンバンク(プライベートファンド)にシフトしている点は、システミックリスクの観点からも昨年末時点で強調されているトレンドです。

投資家目線でのインプリケーション

 PE:2023~24年の「デニード・エグジット」が解消されつつあり、2026年にかけて分配再開・セカンダリー市場活性化が期待される一方、金利・関税・地政学でシナリオ差が大きく、ファンド選別(Vintage・戦略・GPのトラックレコード)が一層重要になっています。

 プライベートクレジット:利回りは依然魅力的で、ロスレートも管理可能との見方が多いものの、ストラクチャー(コベナンツ、シニアリティ、スポンサーの質)による分散がリスク管理の肝となり、「拡大市場のなかでどの部分に乗るか」が昨年末以降の主な論点になっています。

 日本のプライベートクレジット市場の現状は「銀行貸出が厚い中で、ミドルマーケット向けダイレクトレンディングを中心にニッチを切り開きつつある初期成長フェーズ」だ。機関投資家のオルタ配分拡大と海外マネージャーの参入が今後数年の主な推進力になるとの見方があるが、そうなるのだろうか。

2026年1月10日 土曜日​

 
 
 
 

2026年1月10日 土曜日

世界の動き 2026年1月9日 金曜日

今日の一言
「丹羽宇一郎氏」(以下時事通信の記事)
  元伊藤忠商事社長で、民間初の駐中国大使を務めた丹羽宇一郎(にわ・ういちろう)さんが2025年12月24日、老衰のため死去した。86歳だった。名古屋市出身。葬儀は近親者で済ませた。
 1998年から2010年にかけ伊藤忠の社長、会長を歴任。10年6月、中国大使に起用された。民間人の中国大使は72年の国交正常化後で初めてで、中国と太いパイプを持つ大手商社の実力者として、経済交流の拡大に向けた手腕を期待された。
 しかし、就任直後に沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や、レアアース(希土類)輸出規制問題などが相次ぎ発生。12年には尖閣諸島の領有権をめぐり日中関係が悪化した。中国各地で大規模な反日デモが起き緊張が高まる中、東京都の尖閣諸島購入計画に懸念を示し、与野党から更迭論が浮上、同年内に退任した。
 伊藤忠の経営者としては、バブル期の「負の遺産」処理を決断。社長2年目の00年3月期には巨額の損失計上に踏み切り、経営の立て直しにつなげた。
  歯に衣(きぬ)着せぬ物言いでも知られ、会長時代は経済財政諮問会議の民間議員や地方分権改革推進委員会の委員長として活躍した。大使退任後の15年には日中国交正常化に関する記念式典の開催を提案するなど、晩年も両国の関係改善に心を砕いた。
・・・・・・・・・・
 社長就任後の質素な暮らしぶりには感心した。権力は必ず腐敗すると述べ、自身も伊藤忠で院政を引くことは無かった。冥福をお祈りしたい。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.トランプを止められる唯一のもの
【記事要旨】
 トランプ大統領はニューヨーク・タイムズのインタビューで、国際法や国際秩序に縛られるつもりはなく、自分を制約できるのは「自分自身の道徳心だけだ」と述べた。
 彼は、米国は望む限りベネズエラを支配し、同国の豊富な石油資源を利用すると語り、グリーンランドについても「所有」こそが重要だと主張した。NATOについては、米国なしでは無意味だと切り捨てた。
 また、ウクライナや台湾への影響について問われても、中国の習近平国家主席は自分の任期中には台湾を攻撃しないだろうと述べた。
 ベネズエラでは、暫定政府が米国に全面協力しているとし、米国が同国を「利益の出る形で再建する」と発言。これを受け、米上院は大統領の軍事行使権限を制限する決議の審議に入った。
 グリーンランドについては、すでに存在する米軍の基地再開の権利だけでは不十分で、的成功には「所有」が必要だと強調し、NATO維持との優先順位は明言しなかった。
 インタビュー中には、コロンビアのペトロ大統領からの電話もあり、同国への攻撃の可能性に対する懸念が示された。
 さらに、ミネアポリスでのICE(移民税関捜査局)職員による女性射撃事件について、トランプ氏は女性が職員を「轢いた」と主張し続けたが、後の映像分析では女性は職員から離れて走行しており、職員は轢かれていなかったことが判明した。
【コメント】
 トランプ氏の考えがこれほど明確になったインタビューは無かった。常軌を逸した人物が世界の常軌を壊しまくっている。

その他の記事
・監視団体によると、イラン政府は抗議活動の弾圧を強化しており、イランでは全国的なインターネット遮断に見舞われている。
・ベネズエラは政治犯の釈放を発表し、カラカスの新政権による変革の兆しとなった。
・ロシアによるウクライナのエネルギー施設への攻撃により、ドニプロ周辺地域では50万世帯以上が暖房と電気の供給を停止した。
・トランプ大統領は、地球温暖化抑制の基盤となる国連気候変動枠組条約からの離脱を発表した。
・サウジアラビアは、アラブ首長国連邦(UAE)がイエメンからの分離主義指導者の逃亡を支援したと非難し、米国の同盟国であるアラブ首長国連邦(UAE)間の対立が激化した。

2026年1月9日 金曜日
やっと2026年と書くのに慣れてきました。

世界の動き 2026年1月8日 木曜日

今日の一言
「レアアース依存の現状」
 高市首相の台湾有事をめぐる発言に中国が禁輸をちらつかせている。2010年の尖閣の国有化に発するレアアースの全面禁輸以来日本はどのような対応をしてきたのだろうか。

 日本のレアアース調達多様化の取り組み(2010年〜現在)
2010年の尖閣事件で中国がレアアース輸出を停止したことは、日本にとって「サプライチェーン安全保障」の転換点だった。
当時、日本のレアアース輸入の約90%が中国依存だった。
その後、日本は以下の5つの柱で多角化を進めてきた。

1. レアアース使用量の削減技術の開発
 日本政府は2010年10月に1000億円規模の補正予算を組み、企業の技術開発を支援した。
– モーター用磁石の重希土類(ディスプロシウムなど)使用量削減
– 省レアアース型モーターの開発
– 高効率磁石の研究開発
これはトヨタ・日立・三菱電機などの製造業に大きな影響を与え、中国依存度を構造的に下げる効果を持った。

2. 代替材料の研究開発
– レアアースを使わない磁石(フェライト系など)の開発
– 代替触媒材料の研究
– レアアース不要のモーター技術
これにより、レアアースの「戦略的価値」を相対的に低下させる方向へ。

3. レアアースのリサイクル強化
 政府はリサイクル設備への投資を支援し、技術開発を促進。
– 使用済み家電・ハイブリッド車バッテリーからの回収
– 高効率リサイクル技術の開発
– JOGMECによるリサイクル支援
日本は世界でも最先端のレアアースリサイクル技術を持つ国の一つになった。

4. 海外鉱山の開発・権益取得(豪州など)
 日本は中国以外の供給源確保に積極的に投資しました。
– 豪州ライナス社(Lynas)への出資・融資
→ 日本企業向けの安定供給を確保
– ベトナム、インド、カザフスタンなどとの共同開発
– アフリカや南米の鉱山開発支援
これにより、中国依存度は約90% → 約60%程度まで低下したとされている(ただし精製工程は依然として中国が支配的)。

5. 日米によるレアアース供給網の共同構築(2025年)
2025年には高市首相とトランプ大統領が日米レアアース協力枠組みを締結。
– 共同投資(今後5年で20〜30億ドル規模)
– 共同備蓄
– 分離・精製技術の共同開発
– 磁石製造まで含むサプライチェーン構築
特に重要なのは、
「採掘ではなく精製・分離・磁石製造こそがボトルネック」
という認識を日米が共有した点だ。

 今回の恫喝に対し、日本の経済界からどのような発言が出てくるか見守りたい。
 日本の中国の極端な政策への対応は、妥協の出口を探ることも、報復への急進も避けることだと思われる。むしろ、中国が最終的に落ち着くのを辛抱強く待つことしかあるまい。

ニューヨークタイムズ・ニュースレターより
1.不人気なトランプ大統領
【記事要旨】
●米国の内政・外交
 トランプ大統領はノーベル平和賞を強く望み、ガザ停戦やウクライナ和平を模索する一方で、2025年には複数国への軍事攻撃を実施し、特に最近のベネズエラ攻撃は任期中で最も衝撃的な介入となった。その後もコロンビア、キューバ、イランに対して強硬姿勢を示している。
 しかし、トランプの支持率は42%と低迷し、ベネズエラ攻撃を支持した有権者は3分の1にとどまる。中間選挙を控え、経済指標も悪化(インフレ率3%超、失業率4年ぶり高水準)しており、選挙戦では郵便投票の禁止など選挙制度への介入が懸念される。
(不確定要素)
 AIブームがバブル崩壊すれば市場が急落し、政権への不信感がさらに高まる可能性もある。一方で、もしウクライナ和平が実現すれば、トランプが平和賞を得る可能性もゼロではない。

●世界経済の不確実性
 トランプの関税政策は混乱を招いたが、世界経済は予想より強靭だった。ただし、不確実性は依然として最大のテーマである。
– ベネズエラ政権崩壊と米国による石油資源の掌握は、さらなる米国の海外介入の前兆となり得る。
– これらは原油、暗号資産、株式市場に影響を及ぼす可能性がある。
– トランプの関税(約90カ国対象)が違憲と判断されるリスクもある。
– 中国は引き続き安価な輸出で世界市場に供給し、インフレ抑制に寄与する一方、他地域の企業には圧力となる。
米中はAI・ロボティクス分野で競争を強め、これが経済成長を牽引するが、エネルギー・水・鉱物などの資源需要を大きく押し上げる。
(不確定要素)
 世界的な債務危機だ。先進国の記録的な政府債務は金融システムを脆弱にしている。これほどの高水準の国家債務は「システムが脆弱である」ことを意味すると指摘した。世界経済が通常のセーフティネットを失っているかどうか、今年明らかになるかもしれない。

【コメント】
 世界的な債務危機の先頭に挙げられるのは日本の債務の大きさだが、政府および上げ潮派の危機感は少ない。

2.米国による石油タンカー拿捕は、ロシアとの緊張を高めた
【記事要旨】
 米国沿岸警備隊は、ベネズエラで原油を積み込む途中に拿捕されたタンカー「ベラ1号」を2週間以上追跡していた。昨日、北大西洋で同タンカーを拿捕した。これは、トランプ大統領がベネズエラ産原油に対する米国の封鎖を継続する意向を示している。
 ベラ1号の乗組員は、拿捕を回避するためロシア国旗を掲げていた。ロシアは少なくとも1隻の海軍艦艇を派遣し、同タンカーの護衛を行っていた。しかし、米国当局は、沿岸警備隊が同タンカーに乗り込んだ時点で、その海域にはロシア艦艇はいなかったと述べ、米ロ間の対立の可能性は回避された。米軍は昨日、カリブ海付近の国際水域で別のタンカーにも乗り込んだ。

ベネズエラに関するその他の情報:
 ニコラス・マドゥロ大統領の追放以降、ベネズエラの治安部隊は弾圧を強化しています。少なくとも14人のジャーナリストが拘束された。
 トランプ政権は、ベネズエラの安定化と再建、そして新政権の樹立に向けた3段階の計画を発表した。エネルギー長官は、米国はベネズエラへの石油販売を「無期限に」維持する意向だと述べた。
【コメント】
 米ホワイトハウスのミラー大統領次席補佐官は、デンマーク自治領グリーンランドについて、トランプ政権の正式な立場は「グリーンランドは米国領であるべきだ」と述べた。一方で、グリーンランド獲得のために軍事力が必要となる可能性については否定した。
 ミラー氏はCNNの番組で、「グリーンランドの将来をめぐって、米国と軍事的に戦う国はどこにもない」と述べた。
 ミラー氏は、軍事介入の可能性はないのかと迫られると、デンマークの北極圏領有権の主張に疑義を呈した。(以上CNNの記事より)
 ミラー氏はヒトラーにおけるゲッペルス宣伝相のような役割を果たす人に見える。怖い人だ。

その他の記事
・マルコ・ルビオ国務長官は、トランプ大統領はグリーンランドを侵略するのではなく、買収したいだけだと述べた。
・中国は、レアアース(希土類元素)の輸出制限をちらつかせ、日本に警戒​​感を与えている。
・サウジアラビアは、分離主義指導者が会談のためリヤドへの渡航を拒否したことを受け、イエメンを攻撃した。両国の対立により、数百人の観光客がイエメンの島に取り残された。
・シリアでは、政府軍とアレッポのクルド人主導の民兵との間で激しい戦闘が繰り広げられ、数人が死亡した。
・CIA職員のアルドリッチ・エイムズはソ連の二重スパイとして活動し、10人ものスパイの死に関与した。エイムズは84歳で亡くなった。

2026年1月8日 木曜日 昨夜は七草粥をいただきました。胃腸が休まりました。

MBOが起きやすい上場企業

 久光製薬でのMBOを受けて、今後MBOが起こりやすい企業を選別してみました。以下の4つの条件は私が設定し、AIに銘柄選定を委ねました。

MBO候補を抽出するための「定量スクリーニング条件」
① PBR(株価純資産倍率)
– PBR < 1.0 → 市場から「資本効率が悪い」と見られており、創業家にとって非公開化のインセンティブが強い。 – 理想的には PBR < 0.8 → MBOのプレミアムを乗せても買収価格が合理的。

② 自己資本比率(Equity Ratio) – 自己資本比率 > 50%
→ 財務の安全性が高く、外部資金調達に依存しない。
– 理想は 60〜70% 以上 株式市場から調達の必要がない。
→ 久光製薬・大正製薬と同じタイプ。

③ 創業家持株比率(Founder Ownership)
– 創業家・同族が 20%以上保有
→ MBOの意思決定を主導しやすい。
– 30〜40% 以上なら “ほぼ支配”
→ MBOの実行可能性が高い。

④ ブランド力(定性だが重要)
– 消費者向けブランド(B2C)
– 老舗・長寿ブランド
– 安定キャッシュフロー
– 市場からの成長期待は低い(=PBRが低くなりやすい)

 業種別のMBOのしやすさや、株式市場での受け取りについても詳しく議論しましたが、それは捨象して、結論は以下です。

総合評価:最もMBOの“定量条件”に合う企業
  ◎ アース製薬
  ◎ ロート製薬
  ◎ ワコールHD
この3社は、
– 創業家支配
– 高自己資本比率
– ブランド力
– PBR低位
– 市場からの資本効率圧力
のすべてを満たし、久光製薬・大正製薬と極めて近いプロファイルです。ぜひ参考にしてください。

 このような分析は、従来は、証券会社の若手がデータを駆使して行ったものでした。多分小一時間かかる作業だと思います。投資ファンドのアナリスト(年収2000万円程度)が、データとファンドの知見を活かして分析していた分野でもあります。

 今回の私の分析では、4つの条件を入れたら瞬時にAIが回答してくれました。ハルシネーションもなさそうです。恐るべしAIです。今後は証券会社のセールスマンやアナリスト、投資ファンドのアナリストは本当に大変になるだろうという印象を強くしたAIとの対話でした。

2026年1月7日
松の内も明け、今日は七草がゆ。正月にたまった贅肉を落とさねば。。