年金問題の一側面

社会保険庁が係る「わからない」年金問題に加え企業年金連合会の「未払い」の年金問題が出てきた。年金問題について少し違う観点から所感を述べてみたい。

1.年金手帳のありかなど知らない多くの日本人 vs 誰もが年金番号を知っているアメリカ人
今回の一連の年金の問題が起きるまでは、多くの日本人は年金手帳の所在すら気にしたことがなかったのではないかと思われる。
日本以上に何事もいい加減な米国では、国民の99.9%が自分の年金番号を覚えていると言ったら驚かれるだろうか。米国の政府管掌年金・社会保険に相当するのがSocial Security Systemであり、この番号は米国民の誰もが覚えている。というのも、この番号、Social Security Numberは自分の身分を証明する番号として広く使用されている。この番号が無いと米国では人間扱いされないから、収入の無い留学生でも番号を取得する。この番号は一生ついて回る。米国の雇用者はどの番号にいくらSocial Security Taxを払い込んだかSocial Security Officeに報告する。40四半期以上Social Security Taxを払い込んだ人は、年金の受給資格があり、(現在は40・四半期に満たない人も納付期間に応じて受給できるそうである)、近所のScoial Security Officeに確認すれば自分の年金が何時からいくら出るか確認できる。

2.いくら年金のための税金や掛け金を払い込んだか知らない日本人 vs 知っているアメリカ人
日本で所得税の申告を自分でするのは確定申告が必要な場合だけである。これに対し、米国人は全員が自分で所得税の申告をする。だから自分でいくら税金を払いいくら年金に積み立てたかを毎年把握することになる。

 日本の年金問題で、年金を受ける人から「申告」をベースにしている点を改善すべきとの議論があるが、それは間違いだと思う。
・自分が払い込んだ年金を自覚すること(自助努力)
・自分の年金がすぐに確認できる番号を制度化すること (雇用者・勤労者・社会保険事務所、すべてにとって番号化が便利で望ましいと思われ、デメリットは何も無いと思われる)(制度化が必要)
・番号をもとにいつでも年金の現状が確認できること(現状でほぼOK)
ということではないだろうか。

サブプライムローン問題の一側面(その2)

今日、米国のTurnaround Management Association(事業再生士協会)http://www.turnaround.org/の理事から聞いた話です。

「米国の住宅ローンの残高は6兆ドル。そのうちの1兆ドルがサブプライム。サブプライムのうちの80%が変動金利物で、そのうちの半分は金利のアジャスト期日が14ヶ月以内にやってくる。本格的な金融市場への影響が現れるのは2009年になってからだろう。」

改めて考えさせられるのは米国の住宅ローン市場の巨大さです。1ドル120円換算で、720兆円もあります。サブプライムが120兆円。サブプライムのデフォルト率が20%と言われていますが、14ヶ月以内の金利アジャストで、もっと高まることでしょう。シニアはまだ数%のデフォルト率で止まっているようですが、これも上昇してゆくことでしょう。

米国の政府・金融当局は、「影響は軽微。すべてアンダーコントロール」と言っていますが、2000年代の初め、日本の政府も、金融危機について同じような発言をしていました。今後の行方を注視しましょう。

サブプライムローン問題の一側面

サブプライムローン問題であまり論じられていない側面について2点述べてみたい。

米国に通算9年弱住んだ経験から言うと、米国人の多くにも、日本人同様の持ち家志向がある。家を買って気に入った地区に住み始めて、より良い家が売りに出ると、良い家に買い替えする人が多い。持ち家での上昇志向がある。住環境の整った、良い学校のある有名なエリアに誰もが住みたがる。

ポイント1

サブプライムローン問題は、持ち家志向のチェーンの一番弱い部分が破壊されることを意味する。今まで持っていた家を買ってくれる人がいたからより良い家に住み替えることがこれまでは出来た。今後はそうした動きの底辺がなくなるので、通常のローンで住宅を買う層にも影響が出るのは不可避と思われる。

ポイント2

ニューヨーク郊外に住むある米国人インベストメントバンカーの話。

昨年まで米国のインベストメントバンカーは巨大なボーナスを得て住宅を買っていた。今年はボーナスが急減するであろう。そうすると、これまで下落は免れていたニューヨーク郊外の有名住宅地の住宅価格もさすがに下落を始めるのではないか。

ポイント1.2.から導かれる結論としては、「サブプライムに問題はとどまらない。シニアローンを含めた米国の住宅ローン市場とその金融・株式市場への影響は大」ということです。