前回の記事で最も気になるのは、「カンタツ内部の問題とともに、グループ内部統制の機能が奏功せず、親会社としての管理が不十分であった」というシャープの説明だ。
内部統制が機能しなかったので不正会計事象が発生した、という説明は、東芝(利益かさ上げのための不正会計事件)でも、商工中金(全店を挙げて顧客の資料を改ざんしてまで災害融資を拡大)でも、日本郵政(かんぽで顧客を無視した保険の継続や解約によるノルマの達成)でも見られたことだ。
この「内部統制が機能していないから事件が起きた」という説明は一流大企業で使われ、わが国では広く受け入れられているように思われる。しかしながら、これは「試験勉強が出来なかったからテストの出来が悪かった」というようなもので、説明になっていない点を認識すべきだ。何故試験勉強が出来なかったを説明すべきなのだ。
内部統制が機能しなかったとすれば、何故機能しなかったのか、そもそもまともな統制が整備されていたのか、曲がりなりにも整備されていたとすると、内部統制のどこに不備があったか、なぜ機能していなかったかを分析しなければならない。
こうした分析の第一歩は、我が国の金融商品取引法における内部統制整備において求められる≪内部統制の基本的要素≫が組織に具備され有効に機能しているか確認することだ。
内部統制の基本的要素は以下の6つだ。
統制環境
リスクの評価と対応
統制活動
情報と伝達
モニタリング
IT(情報技術)への対応
今回はここまで。
次回は、これらの基本的要素の勘所を説明したい。
(2021.3.14)