パンとサーカスを

パンとサーカスを
クロアチアを旅行してプーラという都市にあるローマ時代に作られた円形競技場を間近に見た。円形競技場の遺構としては建設当時の様子を最もよく残すものの一つだそうだ。当時の収容人数は23000人。現在もコンサートなどに使われる際には5000人を収容できるという。同じく、クロアチア旅行中に、スプリットという都市のローマ皇帝ディオクレティヌス(在位284-305)が引退後に建設させた宮殿の跡を見た。ディオクレティアヌス帝はキリスト教徒の迫害で有名で、ローマの円形競技場ではキリスト教徒と猛獣を戦わせて惨殺していたらしい。ローマ史をみると、キリスト教がローマで公認されるのが313年。国教に指定されるのが384年。ディオクレティアヌスの迫害が最後のキリスト教徒への大迫害と言われるようだ。
ローマの皇帝が取った一般市民の愚民化政策を表す言葉に「パンとサーカスを」という言葉がある。高校で読んだ山川出版社の世界史の教科書に載っていたし、為政者の政策として耳にしたことがある方が多いと思う。市民に食料と娯楽を無料で提供し、市民の政治への関心をそらせて、支配者に都合の良い政策を行うことを表す言葉だ。
この言葉はいかにもローマ帝国の末期にふさわしい印象だ。改めて調べてみると、ユヴェナリスという詩人が言い出した言葉だそうだ。彼の生涯(60-130)はネルヴァ(在位96-98)に始まり哲人皇帝マルクス・アウレリウス(在位160-180)に終了する「五賢帝」時代の最初の3代の時代に相当する。だとすれば、「ローマが最もよく治められていたと言われる賢帝の統治下で『パンとサーカスを』はスタートしていたのだ」と納得する。
さて、9月20日のラグビーワールドカップの初戦で日本はロシアに30-10で快勝。試合の途中からTVを見た筆者はくぎ付けになり試合を楽しんだ。今日はアイルランドとスコットランドの試合も見てしまった。今年はラグビー、来年はいよいよ東京オリンピックだ。ニュースによれば、ラグビー観戦にはビールがつきものでラグビー協会から試合会場のスタジアムと飲食店にはビールを決して切らすことが無いようにというお達しが出ているらしい。スタジアムではビールを売るきれいな女性が増員されているらしい。さあ、ビールをのんで試合を楽しもうではないか。
これってどこか「パンとサーカスを」に似ていませんか?
(2019.9.22)