参議院選挙で二院制を思う

 参議院銀選挙がたけなわだ。掲示板に候補者ポスターが張られ、どの人にしようかと思案しながら立ち止まっている人を見かける。

 日本では選挙による獲得票により選出される議員による衆議院と参議院の二院制があたりまえのように思われている。議員の選出方法が両院でほぼ同じであり、法案審議等で衆議院の優先権があるので、参議院は衆議院のコピーに過ぎないという意見(極端な場合は参議院不要論)も聞かれる。

 先進民主主義国で構成されるG7の国々では二院の在り方は大きく異なるので概説してみたい。(以下の説明はWikipediaによる)

 アメリカでは、上院の定数は100議席であり、米国各州から2人の上院議員が6年の任期で一般投票によって選ばれる。下院の定数は435議席で、議員は一般投票によって直接選出され、2年ごとに全議員が改選される。議席は各州の人口比に応じて配分され、各州において選挙区割りが行われ、単純小選挙区制度により各議員が選出される。(我が国の「一票の重み」裁判では違憲確実の「上院の議員数は各州から2人」が貫かれている。)
 条約の批准と指名人事について、大統領に「助言と同意」を与える権限は上院のみが行使しうる。弾劾裁判においては下院による訴追に対して上院による裁判と役割が分担される。予算案および関連法案については下院に発議権がある。予算案を含むすべての法案が成立するためには上下両院での承認が必要であり、イギリスや日本の下院に付与されているような特定議院の優越はない。

 英国では、議会は両院制で、上院(貴族院)(定数785)と下院(庶民院)(定数650)から構成されている。君主は立法府の3つ目の構成要素を形成する(議会における女王)。貴族院は2つの異なるタイプの議員を含んでいる。すなわち、英国国教会で最も上級の聖職貴族で構成される聖職上院議員 (Lords Spiritual) 、及び首相の助言に基づいて君主により任命される連合王国貴族と一代貴族とで構成される世俗上院議員 (Lords Temporal) である。庶民院は、少なくとも5年ごとに行われる選挙に伴い、民主的に議員が選出される議院である。憲法上の慣習により、首相を含む全ての大臣(ministers)は、庶民院議員であるか、 – あまり一般的ではないが、貴族院議員であるか – である。議会法(イギリスの憲法の一つ)に、庶民院の優越がある。予算をはじめとする重要法案は庶民院議決が最優先される。また、その他の法案に関しても、庶民院が可決した法案は、貴族院が否決するかあるいは審議を先延ばしにしても、庶民院が再可決すれば成立する。庶民院が否決した法案は、貴族院では審議されない。なお、首相は選挙の際に庶民院で多数派を取った政党の党首が就くが、庶民院議員である必要がある。英国の上院が一般選挙で選ばれた人で構成されるのに驚く。

 米英のみならず、他の国々も日本の二院制とは大きく異なる。

 もともと貴族院という言葉が使われているのでわかるごとくローマの元老院を起源とする上院は、選出される人たちが庶民とは異なるという建付けになっている。英国では一般国民の選挙対象でもない。フランスでは上院議員は間接選挙でえらばれる。

 日本でも参議院は「良識の府」と言われた時期もあったが、今は「党利党略」による「衆愚政治」の場になっている感は否めない。ざるを2枚重ねても水は掬えない。各国の制度は衆愚政治への戒めを基礎にしたものになっているのではなかろうか。

(2022年6月26日 日曜日)