今日は「内部統制」の話を。
何か不都合なことが起こるのを防ぐ統制には3種類ある。予防的統制、発見的統制、指令的統制の3種である。
1.予防的統制
何か不都合なことが起こるのを事前に防ぐ統制である。不都合な事態が起きる前に防止することが可能で、通常は発見的統制よりもコストがかからない。
(例)銀行の窓口では200万円以上の現金の引き出しは認めず、必ず役付き者が、応接室で対応するルールになっている。年配のお客さんがオレオレ詐欺にあうのを事前に防ぐことが可能。
2.発見的統制
不都合な事態が発生した後に発見して対応を取る統制である。通常は予防的統制よりも費用と労力がかかる。
(例)衣料の小売り店で期末に在庫の棚卸をする。そうすると、記録より実際の在庫が少ないことがわかり、管理体制の不備や従業員の不正がわかる。
3.指令的統制
不都合な事態が起きないように本社が全社に指令する統制である。
(例)銀行の本部が支店に対し、今期の短期の貸出は最低0.50% の利鞘が無ければ取り組んではいけない。という指示を出すことがある。これは銀行全体の収益水準を維持するための指令的統制だ。
さて、現在のウクライナ情勢に牽強付会すると以下のようになろうか。
1.予防的統制
ロシアをめぐる国際的な話し合いがこれに相当するだろう。本当は、ウクライナのNATO加盟が実効のある統制だったのだろうが、それが出来なかったために実際のロシアの侵入を許してしまった。
2.発見的統制
ロシアの軍事進攻を受けて西側諸国が発動した制裁が相当するだろう。米国が事前に強い制裁の可能性をプーチンに警告していた。予防的統制として有効だと考えていた節がある。大きな誤算だったと言わざるを得ない。
3.指令的統制
国連の安全保障理事会、総会がロシアの非難決議を出しているが、常任理事国の一つであるロシアに対して強制力のある決議は出来ない。従って有効な指令的統制は効かせることができない。
結局、今回の危機に対しては、いずれの統制も有効に機能しなかった。
(2022.3.6 Sunday)