低炭素社会の実現、代替エネルギー開発の推進、エコを優先した企業活動等、これらの多くは、エコに過剰な配慮をするため、経済を効果的に刺激し、社会の効率性の向上にはあまり役立たないという印象を持つ人が多いと思う。
私もその一人だったが、McKinseyの最近の、目からうろこのレポートを紹介したい。
How a post-pandemic stimulus can both create jobs and help the climate May 2020
この論文では、COVID19に悩まされる世界であるからこそ、低炭素社会に向けた景気刺激策が、雇用と環境に効果的だと述べている。
政策を定め実行する際の優先順位付けは以下の5つに注意して行うべきという分析はその通りと思われる。
・社会経済的利益
・気候の恩恵
・景気刺激策が実施されるまでの時間軸
・炭素排出量が削減される期間
・実現可能性
更に有益なのは、ヨーロッパにおける低炭素に配慮した経済刺激策の具体例が示されていることだ。12の実行可能なリストが挙げられている。
・機器の交換や廃熱技術のアップグレードなどの手段を通じて、産業のエネルギー効率を向上させる
・大規模な産業クラスターの周りに炭素捕獲と貯蔵のインフラストラクチャを構築する
・住宅を改造して、ヒートポンプを設置するなど、エネルギー効率を向上させる
・暖房、換気、空調、照明、セキュリティをより適切に管理するために、特に商業用不動産にスマートビルシステムを設置する
・広範囲の電化をサポートするために配電網(相互接続を含む)を強化する
・大規模およびコミュニティ規模のエネルギー貯蔵を拡大
・風力および太陽光発電能力の構築を加速
・発光ダイオード(LED)を使用して街路灯の展開を加速する
・電気自動車(EV)充電ネットワークの拡大
・主要なバスの高速輸送と都市鉄道プロジェクトを作成する
・EV製造をスケールアップ
・アクティブな輸送のためのインフラストラクチャを開発する(自転車レーンなど)
こうしてみると、先進の欧州と日本の差は大きくはないようにも見える。日本政府の広報が下手なのか、日本ではそれそれの政策手段をどこまで実施して来たか、実施する予定なのかがよくわからないのが問題だが。いずれにしても、日本でも、すぐにとりかかれる政策オプションも少なくないように見える。
コロナ禍の今こそ、長期的に環境を守り低炭素社会を実現する政策をすぐに採用して行くべきだ。新政権には、巨大な予備費を活用し、国家百年の礎になる政策を立てて実行してもらいたいものだ。
(2020.9.21)