キッシンジャーの名著”Leadership”について

キッシンジャーはその生涯に回顧録を含め多くの本を著している。その多くは批評家に客観性に欠けるとか自慢話だと批判されている。彼が自分で会ったことのある世界の指導者について述べたこの本はそうした批判を免れている。

この本の本質を説明するために、Amazonの書評を紹介したい。
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ヘンリー・キッシンジャーは、この説得力のある本の中で、「リーダーは 2 つの軸の交点で考え、行動するものである。
二軸の一つ目は、必然的に過去から得られる知識と、本質的に推測的で不確実な未来について直観することとのバランスを取ることだ。ニつ目は、彼らが率いる人々の不変の価値観に従うことと願望を奮い立たせることのバランスだ。 方向性を直感的に把握することで、リーダーは目標を設定し、戦略を立てることができる」と述べている。

キッシンジャーは、『リーダーシップ』の中で、6 人の傑出した指導者の人生を、彼らが体現したと信じている独特の国家戦略を通じて分析している。
第二次世界大戦後、コンラート・アデナウアーは、キッシンジャーの言うところの「謙虚の戦略」によって、敗北し道徳的に破綻したドイツを国際共同体に復帰させた。
シャルル・ド・ゴールはフランスを勝利した連合国に並べ、「意志の戦略」によってその歴史的威厳を新たにした。
冷戦中、リチャード・ニクソンは「均衡戦略」によって米国に地政学的優位性を与えた。
25年間にわたる紛争を経て、アンワル・サダトは「超越的な戦略」によって中東に平和のビジョンをもたらした。
逆境をものともせず、リー・クアンユーは「卓越性の戦略」によって強大な都市国家シンガポールを築き上げた。
そして、マーガレット・サッチャーが権力を握ったとき、英国は「ヨーロッパの病人」として知られていたが、彼女は「信念の戦略」によって自国の士気と国際的地位を新たにした。

キッシンジャーは、これらの研究のそれぞれに、歴史認識、公的経験、そして――彼はそれぞれの主題を知っており、彼が説明する出来事の多くに参加していたので――個人的な知識をもたらしている。 リーダーシップは、キッシンジャーだけが下すことができた洞察と判断によって豊かになり、世界秩序と今日のリーダーシップの不可欠性についての彼の考察で締めくくられている。
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いま捜したが、日本語訳はみつからない。AmazonでKindle版が1000円で読める(但し英文です)ので、年末休暇で時間があるときに読んでみたい。

2023年12月3日 日曜日

米国大統領選候補の討論会

 共和党でトランプに次いで第二位の候補につけているフロリダ州知事と、民主党で2028年を狙っているカリフォルニア州知事が討論会で舌戦を繰り広げた。以下、日本のメディアで詳しく報道している毎日新聞の記事を紹介したい。
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 米西部カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(56)=民主党=と南部フロリダ州のロン・デサンティス知事(45)=共和党=が11月30日、南部ジョージア州で討論会に臨んだ。2028年の大統領選への出馬を視野に入れるニューサム氏は、24年大統領選を目指すデサンティス氏を相手に舌戦を展開。「民主党の代表」として存在感を誇示し、「ポスト・バイデン」に向けて布石を打った。

 討論会は保守系のケーブルテレビ局「FOXニュース」が企画した。民主党が優勢な「青い州」と共和党が優勢な「赤い州」で政策を競うのが主題で、大規模州の知事で2大政党の有望株でもある両知事が招かれた。FOXは共和党寄りの姿勢で知られ、ニューサム氏は「敵地」に乗り込む形になった。

 ニューサム氏は10月にイスラエルや中国を相次いで訪問するなど、知事の枠を超えた活動が目立っており、「バイデン氏が健康問題などで出馬を断念した場合に備えて、24年大統領選の準備をしている」との風評もある。

 討論会の冒頭では「我々は2人とも24年の党候補には指名されない」と強調。共和党候補指名争いでトランプ前大統領に独走を許すデサンティス氏をからかいながら、自身の24年大統領選への「野心」を否定。再選を目指すバイデン氏の「実績を説明するために来た」と説明した。

  討論会では、人工妊娠中絶や性的少数者に関する教育、投票権を巡って規制を強化するデサンティス氏を「(産科の)医師や生殖医療を望む女性、教員らを刑罰の対象にして、投票するのを難しくしようとする男だ」と批判。デサンティス氏が81歳のバイデン氏の「認知能力」に疑問を投げかけると、「デサンティス氏が何歳であろうと、100歳のバイデン氏の方を支持する」と擁護した。

 一方、カリフォルニア州での人口流出や物価高騰、治安悪化といった自身に不利な問題では、司会者の質問に正面から答えない場面も目に付いた。

 ニューサム氏には、保守派知事の代表格であるデサンティス氏と討論することで、全米レベルでの知名度や党内での声望を高める狙いがあったとみられる。民主党中道左派に近いシンクタンク「第三の道」共同創設者のマット・ベネット氏はニューサム氏について「28年大統領選に向けた準備をしているのは間違いない」と指摘する。ただ、バイデン氏が何らかの理由で出馬を断念した場合、24年大統領選でもカマラ・ハリス副大統領(59)らと並ぶ有力候補となる。

 カリフォルニア州憲法には「3選禁止条項」があるため、現在2期目のニューサム氏は26年の次期知事選には立候補できない。今後もバイデン氏を側面支援しながら、党内での存在感向上を図るとみられる。【ワシントン秋山信一】
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 米国のメディアではもちろん大きく取り上げられているが、大勢はニューサム氏に分があったという見方だ。
 バイデン大統領が健康上の理由で来年出馬が難しくなったら、ニューサム氏が出てくる可能性が高そうだ。同氏が中国やイスラエルを州知事として訪問していたのも、外交にも強く、海外にも顔が売れているという主張のための布石だったとわかる。とても戦略的なひとでもありそうだ。デサンティス氏は来日したことがあり自民党の政治家は面談していたようだが、ニューサム氏にコンタクトの有る政治家はいるのだろうか。

 年末が近づき日本の政局も動いてきた。ポスト岸田は、派閥の合従連衡はいい加減やめて、世界の地政学の状況や海外とのコミュニケーション能力をみて決定されるべきだ。(といtっても誰も思い浮かばないのが寂しい!)

2023年12月2日 土曜日

世界の動き 2023年12月1日 金曜日

今日の言葉:
「円は上昇する」
 弱い円で輸入価格の上昇に悩んだ一年だったが、来年は円をトップに選ぶ見方がある。
 Bloombergは、『ピクテ・アセット・マネジメントでは、日本銀行が金融政策を来年さらに正常化させるとの期待を踏まえ、円を2024年のトップ推奨にチーフストラテジストのルカ・パオリーニ氏は挙げている。円は対ドルで1ドル=135-140円に向かうと予想。日銀は早ければ1-3月(第1四半期)にもマイナス金利から脱却し、他国・地域の金利が上昇しない限り、円上昇につながる可能性があるとしている』と報じている。
 ありがたい見たてのようだが、通貨は年間10% 程度は変動するので、135円程度の円高は、通常の変動の範囲内だ。第一四半期に日銀の金融政策が正常化するというのも、市場の大方の予想に近い。この見立てで、ピクテの投資家が円債券への投資を増やすかどうか注目だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.気候サミットが貧しい国を支援する基金を承認
【記事要旨】
 国連のCOP28会議の初日、約200カ国の外交官が、富裕国が吐き出す汚染によってさらに悪化する気候災害に見舞われている脆弱な国を支援する基金の計画草案を承認した。
 30年以上にわたり、発展途上国は、地球温暖化によって引き起こされる破壊的な嵐、熱波、干ばつの費用に対応するために、裕福で先進国に補償を求めてきた。 この基金はドバイで2週間にわたって開催されるサミットに向けて明るい兆しと広く見られており、今年稼働することが期待されている。
 拠出国の中で、アラブ首長国連邦とドイツはそれぞれ1億ドルを約束し、英国は約7,600万ドルを約束し、日本は1,000万ドルを提供すると述べた。 EU 気候変動委員会は、組合は少なくとも約2億4,500万ドルを寄付すると述べた。 米国は1,750万ドルを約束したが、この金額は世界最大の経済大国にとって低すぎると一部の活動家が批判した。
 当初の約束額は合計約5億4,900万ドルに上るが、気候関連の損害は2030年までに発展途上国に年間2,800億ドルから5,800億ドルの損害を与えると予想されている。
 気候に関する偽情報:新たな報告書によると、ロシアや中国を含む影響力のある国々は、化石燃料を採掘する企業や、地球規模の気象に関する主張を共有して金儲けをするオンライン扇動者と同様に、世界の気象に関する虚偽または誤解を招く温暖化はデマだという情報の最大の拡散者であることが判明した。
 地球温暖化と戦うために、米国の航空会社はジェット燃料をトウモロコシから作られたエタノールに置き換えたいと考えているが、そうするには、もう一つの貴重な資源である地下水がさらに枯渇する必要がある。
【コメント】
 日本のコミットは随分少ない印象だ。最後のエタノールの増産は地下水の減少を招くというのは、エタノールを植物からとるためには植物を育て無いといけないからというロジックだろうか。

2.キッシンジャーの複雑な遺産
【記事要旨】
 最も強力な国務長官だったヘンリー・キッシンジャー氏が水曜日、コネチカット州の自宅で100歳で死去した。彼の死去は世界中で鋭く分かれた意見を引き起こした。彼は称賛されると同時に非難されることもあった。
 キッシンジャーは、米国の中国への開放を画策し、ベトナムからの撤退交渉を行い、米国とソ連との力関係を再構築し、そのために時には民主主義の価値観を踏みにじった。
 ベトナム:1973年、キッシンジャーは、ベトナム戦争への米国の関与を終わらせた和平協定の交渉によりノーベル平和賞を受賞した。 しかし批評家らは、何年も前に和平の枠組みができていたのに、不必要に紛争を長引かせたと同氏を非難した。
 カンボジア:1969年と1970年に行われたカンボジアへの極秘絨毯爆撃を承認するというキッシンジャーの決定は、米国が戦争犯罪を犯したかどうかについての長年の議論に火をつけてきた。
 中東: 1978 年にイスラエルとエジプトの間の和平を確立した彼の役割は、数十年にわたってこの地域を形作った。彼の遺産は現在のガザ戦争に反映されている。
 私の同僚のデビッド・サンガーは、キッシンジャーへのインタビューを軍備管理協定の交渉に例えました: 複雑さ、微妙なニュアンス、言い逃れ、そして確認しなければならない宣言に満ちている。
【コメント】
 日本では通常絶賛されることの多いキッシンジャー氏に対して、随分、批判的な記事だ。ああ実はそうだったのかと思わせる部分もある。
 個人的には1992年頃、マンハッタンで同氏に合ったことがある。紳士服店に入ろうとしたら回転ドアから氏が出てきたのだ。背丈は私とほぼ同じ。太い眉と鋭い眼光が印象的な人だった。

3.米国は戦争を次のステップを導こうとしている
【記事要旨】
 ブリンケン国務長官は昨日、イスラエルとハマスの間の脆弱な停戦(今日終了する予定)の延長を図るとともに、ガザの民間人の状況を改善し、イスラエルが次に誓う内容に影響を与えるためにイスラエル指導者らと会談した。
 ネタニヤフ首相は、ハマスを鎮圧するという自国の目標を繰り返し述べたが、イスラエルと米国当局者は、その任務はまだ完了には程遠いとしている。 攻撃の新たな段階はガザ南部に集中すると予想されており、米国とイスラエルの当局者らは、ハマスの上級指導者らはガザ南部に群がっていると述べている。
 国務省は会談後に声明を発表し、ブリンケン氏が「ガザ南部での軍事作戦の前に、ガザ南部での人道的および民間保護のニーズを考慮することが不可欠であると強調した」と述べた。
 ハマスはガザで人質となっていたさらに2人の女性を解放した。 解放された人々は暴力、飢え、恐怖の話を語り、栄養失調と精神的な傷を負って戻ってきた。
 エルサレム郊外のバス停でハマス所属の武装集団2人が発砲し、少なくとも3人が死亡、6人が負傷したとイスラエルが発表した。
【コメント】
 米国の努力で脆弱な戦闘の停止が継続し、その間に、暴力の輪廻を絶つ多国籍な枠組みの構築が必要だ。

その他記事より:
・シーク教独立主義者のインドによる暗殺計画
 An indictment by U.S. federal prosecutors describes a chilling plot by an Indian official to arrange the killing of a Sikh American on U.S. soil. Why would India take the risk?
 The Sikh separatist named as the target of the plot, Gurpatwant Singh Pannun, said in an interview that he was not surprised that India wanted him dead.
 The scheme as described by prosecutors could upset a key element of President Biden’s foreign policy agenda: bolstering ties with India.
(その他記事としては異例に長く、タイムズの問題意識を表している。米国内で政治テロをするような、こんな国(インド)と親しくしていいいのかというバイデン政権の外交政策への警告も含んでいる)
・EUのインフレは大幅に沈静化
 E.U. inflation fell to a two-year low in November, dropping much faster than expected as a result of high interest rates and efforts by countries to ease prices for energy and food.
(欧州中銀の金利引き上げは終わり、来年には引き下げに転ずる可能性が高そうだ)
・英王室のゴシップ
 A book publishing “mistake” reignited a furor by naming the British royals who were said to have asked about the skin color of Prince Harry and Meghan’s baby.
(王室を離れてもお二人はゴシップを飯のタネにしているようだ)

2023年12月1日 金曜日

世界の動き 2023年11月30日 木曜日

今日の言葉
「オスプレイ墜落」
 防衛省の説明では、オスプレイは、ヘリコプターのような垂直離着陸機能と、固定翼機の長所である速さや長い航続距離という両者の利点を持ち合わせた航空機。回転翼を上へ向けた状態ではホバリングが可能となり、前方へ傾けた状態では高速で飛行することができる米軍の最新鋭機となっている。一機100億円以上し、日本は17機の導入を決定し徐々に配備が進んでいるようだ。
 オスプレイは事故が多いと言われるが、論者により、明らかに事故の多い機種だと言う人と、平均的かそれ以上に安全だと言う人に分かれている。
 複数の米国のメディアによると、オスプレイの飛行は 2055 年まで続くものの、国防総省はⅤ-22 オスプレイ機の新規調達を 2023 年予算で終了し、2026 年に予定される最後の数機の納品後、生産ラインを閉鎖することを計画している、と伝えられている。
 プログラム・レコード(米軍装備品の調達計画)を満たすまでにはあと 36 機の生産が残っており、生産完了には2年間の所要期間を要する(一機の生産所要時間は 300日)ために、閉鎖予定は 2026 年とのこと。

 V-22 計画当初は、国防総省は多くの外国政府等に販売することで、大量生産によって一台当たりのコストを下げることを期待していたようであるが、結果的に、唯一の外国向け販売は日本だったとのことだ。
 今年2月に、海軍は、ライン閉鎖に従事するエンジニアリングをベルーボーイング社に受託させることを発表している。

 どうも、我が国は「欠陥機」の米国以外で唯一の、そして最後の購入者になりそうだ。これが日本の防衛力強化の実態だとしたらお寒い限りだ。中国の脅威への備えは必要だが、米国の中古品を盲目的に購入し国防費を無制限に増嵩させる愚は避けたい。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.停戦交渉はさらなる延長に焦点を当てる
【記事要旨】
 カタール、エジプト、米国の政府高官らは、今日期限切れとなるイスラエルとハマスのガザ停戦のさらなる延長を確定させるよう求めていた。
 当局者らは、これが人道危機を緩和し、より多くの人質の解放を確保し、戦争による死者数を減らす最善の方法であると考えている。 しかし、会談を知る当局者らは、短期間の中断を続ければ戦争終結への道が開かれることを期待しているとも述べた。
 関係者の1人は、停戦が長引けば長引くほど、イスラエルが攻撃を再開してハマス幹部らが潜伏しているとされるガザ南部に到達することがより困難になると調停委員は予想していると語った。
 イスラエル高官は、長期停戦や残りの人質全員と捕虜全員の交換に向けた交渉は現時点では行われていないと述べた。 イスラエルは、ハマスの指導者が根絶され、軍事・統治システムがガザから根絶されるまで攻撃をやめないと誓った。 ネタニヤフ首相の政府関係者らは、首相が戦闘を再開しなければ政権を崩壊させると脅している。
 これまでのところ、人質交換のほとんどには女性と子供が参加している。 しかし、交渉の対象が戦闘員に変わると、交渉はより複雑になるだろう。 ハマスは10月7日の暴動で捕らえた数十人のイスラエル兵を拘束していると考えられており、イスラエルは多くの著名なパレスチナ人捕虜を拘束しているが、その中には同グループが釈放を求めると約束したハマスの著名なメンバーも含まれる。
 両親が殺されるのを見てハマスに人質に取られ、解放される前に4歳になった少女アビゲイル・イダンの叔母は、彼女の姪は1日に1枚のピタパンを他の4人に分け与えたと語った。 彼女は50日間の監禁期間中、シャワーも風呂も利用できなかった。
 ハマス武装組織が、民間人の母親と幼い子供2人がイスラエルの空爆で死亡したと主張し、懸念が高まっている。
 ハマスは火曜日にイスラエル人人質10名とタイ人2名を解放し、解放された捕虜の総数は85名となった。
 パレスチナ保健省によると、昨日、ヨルダン川西岸ジェニン市での襲撃で子供2人と武装グループのメンバー2人がイスラエル占領軍によって殺害された。
【コメント】
 少しづつだが人質の交換が進み、ガザへの支援物資の搬入も進んでいるようだ。継続を期待したい。

2.米国、シーク教徒分離主義者の殺害計画でインド国民を起訴
【記事要旨】
 マンハッタンの連邦検察当局は昨日、ニューヨーク市でシーク教徒の分離主義者を殺害しようとした容疑でインド人を起訴したが、微妙な米印関係を複雑にする可能性がある。
 検察当局によると、ニキル・グプタ被告は殺し屋を雇おうとした容疑で起訴された。その殺し屋は実は米国の潜入捜査官だった。 この容疑は、米国当局がニューデリーに対し、ニューヨークに本拠を置く正義の擁護団体「シーク教徒」の法務顧問を務める米国国籍の分離主義者グルパトワント・シン・パヌン氏の暗殺計画について懸念を表明した数日後に発表された。
 ほんの数カ月前、カナダのジャスティン・トルドー首相は、6月にバンクーバー近郊で起きた別のシーク教徒分離主義者ハーディープ・シン・ニジャール氏の殺害にインド政府が関与したと非難した。
【コメント】
 カナダだけでなく米国でもシーク分離主義者はインド政府にマークされ、時には命を狙われているようだ。インドもロシアや中国同様に怖い国だと知れる。

3.不安定な石油市場でOPECは苦渋の選択を迫られる
【記事要旨】
 今日のOPEC会議の議題は、多くの加盟国にとって好ましくないものとなる可能性が高い。 石油市場の低迷により、ロシアを含むより大きなグループであるOPECプラスの事実上のリーダーであるサウジアラビアは、減産を継続し、おそらくはさらに深化するよう圧力をかけられている。 小規模なOPEC加盟国は生産制限の引き下げに同意するよう求められている。
 2023年の世界需要の伸びの4分の3を占める中国は経済減速に直面している。 全体的な経済拡大は鈍化すると予想されており、エネルギー利用の効率化と電気自動車の普及により石油消費量は減少するだろう。OPEC外部の生産者、特に米国とブラジルからの供給が増加している。
【コメント】
 これは日本には良いニュースだ。輸入コストプッシュインフレの鈍化を期待したい。

その他の記事:
・蔡総統の見解
 At the New York Times Dealbook Summit, Taiwan’s president said that China was unlikely to try to invade Taiwan soon because its leadership is overwhelmed by domestic challenges.
・オスプレイの墜落
 A U.S. military aircraft crashed near a small island off the coast of southern Japan, killing at least one of the six people onboard.
・米国を中国の下請けにするな
 The Biden administration is trying to balance popularizing electric vehicles without turning the U.S. into an assembly line for Chinese technology.

2023年11月30日 木曜日

世界の動き 2023年11月29日 水曜日

今日は北九州に出張で時間が取れず朝の発信が遅れました。申し訳ありません。

今日の言葉
「プライベートクレジット」
プライベートクレジットとは、非公開で組成、交渉される投資商品である。 多様なリスク・リターン特性を有し、流動性が低く相対的に高い利回りを提供可能な投資機会から構成されるが多い。公開市場では取引されないので私的(プライベート)クレジットと呼ばれる。企業が運転資金、企業合併と買収(M&A)、事業拡大などの多様な目的において発行する債券の形態をとる場合も増えている。
現在は市場が過熱気味でありBloombergは以下の記事を載せている。
『UBSグループのコルム・ケレハー会長は、活況を呈するプライベートクレジット市場では「明らかに資産バブルが生じている」と警告を発した。バイアウト企業の資金調達手段として人気が高まるプライベートクレジット市場の規模は2015年以降で3倍に拡大。リスクの高まりに懸念を表明するのはケレハー氏だけでなく、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の幹部らも警鐘を鳴らしている。』
リスクに見合ったリターンが乏しい状況を埋める商品として、プライベートクレジット市場の活況はしばらく続くと見る。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.明日から国連気候サミットが始まる
【記事要旨】
明日ドバイで始まるCOP28国連気候変動協議には、2つの事実が迫っている。それは、地球が気候災害に向かって進んでいること、そして各国政府の行動が遅すぎてそれを回避できないことである。
約200カ国の外交官と多くの国家元首や政府首脳が集まり、化石燃料からの移行を加速する計画の草案を作成する予定だ。 世界第5位の産油国であるアラブ首長国連邦がCOP28を主催しており、活動家の怒りを買っている。 この会議は中東とウクライナでの戦争を背景に開催されており、国際協力はさらに困難になっている。
以下は、年次カンファレンスを 12 回取材している同僚のリサのコメントだ。
今度は何を観ますか?
リサ: 2015 年にパリで設定した気候変動目標の達成に各国がどのように成功したかについての世界的な評価を含む、多くの重要なことが予定されています。 そして、脆弱な国々が地球温暖化によって引き起こされる損失と損害に対処するのを支援するための新しい基金の詳細を最終決定します。 しかし、私が注目する最大のことは、化石燃料の段階的廃止について各国が議論している政治的合意だ。 化石燃料の燃焼は気候変動の主な原因だが、これまでのところ各国は一斉に段階的廃止を要求することに消極的である。
「損失と損害」基金と、化石燃料を太陽光や風力などのクリーンエネルギーに置き換える協定という2つの主要な問題のうち、どちらが成立する可能性が最も高いと思いますか?
リサ: 「損失と損害」基金はCOP28の終わりまでに運用開始するという期限があり、現段階では実現する可能性が高いようです。今年、基金の運用方法をめぐって多くの争いがありました。発展途上国 米国が支配していると多くの人が感じている世界銀行を拠点とする基金を望んでいなかった。米国のような先進国は、納税者が全額を負担しないようにし、中国のような最も裕福な発展途上国が負担することを確実にしたかった。 、カタール、シンガポール、サウジアラビアも貢献するだろう。
11月初旬、米国は基金を少なくとも4年間世界銀行に保管することを規定した基金に関する国連ガイドライン草案に署名した。 先進国もその他の誰も、基金に支払う義務はありません。
エネルギー転換に関しては、ほとんどの人が合意が得られることを期待していると思います。 問題は、それがどれほど野心的なものになるかということだけです。
COP28に関するさらなる事実は次のとおりです。
流出文書:気候変動報告センターとBBCが入手した内部文書によると、サミットの舞台裏で、首長国連邦は主催者としての立場を利用して世界中で石油・ガス取引についてロビー活動をしようとしていたという。
ベトナム:ベトナム政府は昨年、石炭の使用量削減に取り組むため、富裕国9カ国から数十億ドル規模の協定を締結した。 その後、資金確保に協力した著名な環境活動家数人を逮捕した。
気候変動:ホンジュラス先住民族の弁護士らは、気候変動による異常気象が亡命の根拠となり得るという斬新なアイデアを検証したいと考えている。
【コメント】
タイムズらしい力の入った長い記事だ。ただ、バイデン大統領は参加しない。岸田首相もだ。絵に描いた餅をああだこうだ言いあう機会になりそうな気がする。

2.イスラエルとハマスの停戦は継続中
【記事要旨】
ハマスとイスラエルは昨日、停戦5日目に入ったが、相手国を非難した。 イスラエル軍は、ガザ北部の2か所で自軍部隊の近くで爆発物が爆発し、1つの地域では武装勢力が発砲したと発表した。 ハマスは、ハマスの戦闘員がイスラエルによって引き起こされた「野外衝突」に参加したと述べたが、追加の詳細は明らかにしなかった。 しかし、双方とも協定からの離脱を示唆しなかった。
イスラエル軍は、ガザから人質12人が解放されたと発表した。 イスラエル当局はその後、さらに投獄されていたパレスチナ人30人を釈放した。
停戦延長によりハマスが再結集し、ガザに入る支援物資を増やす時間が与えられる。 また、10月7日の攻撃で捕らえられた人質のさらに多くをイスラエルに返還する。 しかし、この延長はイスラエルに対し、軍事計画について決定を下すよう圧力を高めることにもなる。
ガザが十分な医療サービスと物資を受けられない場合、病気によってイスラエルの砲撃よりも多くのガザ人が死亡する可能性があるとWHOは述べ、完全な停戦を求めた。
死傷者:イスラエルは、ハマスが10月7日の攻撃で死亡した兵士3人の遺体を保管していると発表した。
【コメント】
停戦の状況は非常に脆弱だ。延長すればするほどハマスを利するというイスラエルの考えは強いし、正当な怖れだと思われる。今後の国家の安定のためにはハマスを根絶するしかないと考えるイスラエルの考えも妥当と思われる。
仮にイスラエルが占領地から完全撤退しても(そんなことはあり得ないが)ハマスの反イスラエルのテロは続くだろう。

3.中国から資金が流出する仕組み
【記事要旨】
中国の経済的・政治的将来にとって憂慮すべき兆候として、中国の裕福な家庭は今年、通貨安の恩恵を受けて数千億ドルを国外に移した。
新型コロナウイルスによる規制が解除されたことで、中国人旅行者は日本でコンドを購入し、多くの場合現金のスーツケースを持って、金利が低く下落している中国よりも高い金利を支払う米国や欧州の口座に資金を注ぎ込んだ。 中国人が機内持ち込み手荷物に収まるほど小さな金の延べ棒や外貨の束を購入することで、海外送金に関する中国政府の規制を回避しているケースもある。
【コメント】
京都の町屋や地方の温泉を中国人が買いあさっているという報道もある。安い日本は買いたたかれる一方だが、日本の金持ちが買わない物件を買ってくれる中国人は地方にとってありがたいお客様だ。

その他の記事:
・ニュージーランドの右派政権
New Zealand’s new right-wing government said it would repeal a law that would have gradually banned all cigarette sales.
・留学生の大きな入超
Why are there only 350 Americans studying in China?
・エジプトはC型肝炎を克服
Egypt wiped out hepatitis C. Now it’s trying to help the rest of Africa.

2023年11月29日 水曜日