弱気が広まるウォール街

 金利と経済の動向に一喜一憂してきた米国株式市場では、弱気の虫が広がって来ているようだ。 以下、NYTimesのDealBookから引用する。


『世界中で金利が「長期にわたって高くなる」という見通しを投資家が認識し始めたため、1か月の間に強気相場の上昇相場の底が抜けた。 昨日8月17日は世界的な株と債券の下落が勢いを増した。 関係者は来週ジャクソンホールで開催される中央銀行と政策当局によるサミットでFRBがどういう見解を示すか探っている。
 テクノロジー株は特に大きな打撃を受けている。 アップル、エヌビディア、テスラ、メタなど時価総額で最大のハイテク株で構成される高値圏のFANG+指数は昨日、調整領域に入って。ナスダックの有力企業グループは7月18日以来、11%近く下落している。
 高成長ハイテク株は金利や債券利回りの上昇に敏感になる傾向がある。 FRBがよりハト派的な金利政策に舵を切りつつあり、ハイテク支出の回復を促す可能性があるという見方を受けて、今年初めからこれらの株式が反発した。(人工知能ブームの恩恵を受ける可能性のある株に対する投資家の貪欲な欲求も、ハイテク株の上昇に拍車をかけた。)
 ほんの1か月前、ウォール街は今年のS&P 500指数の上昇をけん引した、いわゆる「素晴らしい7社」を称賛していた。しかしこの1か月で、7社のうち4社(Apple、Nvidia、Meta、Microsoft)は 7月の最高値からは10パーセント。 グループの中で最悪のテスラはこの期間に25%以上下落し、弱気の領域に入った。
 債券利回りの上昇に投資家は神経をとがらせている。 昨日、投資家が国債を一斉に売却し、利回りが数年ぶりの高水準となった。10年米国債は2008年の世界金融危機初期に最後につけた高利回りまで上昇した。
 こうした見方は、株や仮想通貨にも波及した。 最大の仮想通貨であるビットコインとイーサリアムは一夜にして急落し、ビットコインは2カ月ぶり安値の2万6500ドルを下回った。 イーロン・マスク氏のロケット会社スペースXが過去2年間でビットコイン株の価値を減額し、その一部を売却したというウォール・ストリート・ジャーナルの報道は、非常に不安定な資産クラスに対するセンチメントを改善していない。
 中国の苦境も世界市場に重しとなっている。 香港のハンセン指数は今朝、経済の減速と不動産市場危機の勃発を受けて投資家が中国株に手を引いたため、弱気相場に陥った。 今朝8月18日、野村のアナリストらが中国の成長予測を最初に引き下げた。 不安に拍車をかけ、今朝人民元が対ドルで16年ぶりの安値を付けたことも、人民元を下支えするための緊急の動きを促した。 それは投資家の緊張を和らげるにはほとんど役立たなかった。』

 長文の記事だが、下がりそうもないインフレとその対応策としての高金利の継続、上がり過ぎた特定Tech株がいつかは下がるという恐怖が、弱気が蔓延する理由になっているという分析だ。

 いつも強気の株式トレーダーはどう見ているだろうか。著名なブロガーであり投資アドバイザーKeith Fitz-Gerald氏はニューズレターに以下のように書いている。
『私はここ数週間、クライアントの流動性の変化を追跡してきたが、実際に良いニュースが見えてきた。まだたくさんのお金が動いている。
 ここ1か月の下落は、恐ろしく、不安定で、まったく不快なものだが、現在起こっていることは、世界最高の企業の株式を長期的に所有することを妨げるものではないことを理解することが非常に重要だ。
 それは純粋にテクニカルな短期的な値動きであり、それ以上のものではないからだ。
 今何をすべきか
 あなたが投資家なら、今こそ 3 つのことをすべき時だ。
・値上がり益を収穫し利益を得ること。
・低ベータ株、特に配当のある株に投資する。
・生垣を立てること。 状況が許せば、有料版にアップグレーがする。』

 最後は宣伝になっているが、取り得ず利益の確定を勧めているのは確かなようだ。「配当の有る低ベータ株」という指摘では公共株が思い浮かぶ。日本の銀行株も候補になるかもしれない。調べてみる価値はありそうだ。

2023年8月19日 土曜日