弱肉強食

四字熟語の定番だ。お笑いでは「■肉■食」の穴埋め問題で「焼肉定食」を正解にするのが流行ったことがある。

今朝新聞を見ていて、竹中平蔵氏がAIのコンファレンスのキースピーカーで挙がっており、ああ、この方はまだ頑張っているんだと思い、竹中さんが経済財政+金融担当相になって大手銀行の不良資産を処分する政策を推し進め、大手銀行や証券会社が倒れ、実質債務超過の借入過多企業が沈み、貸剥がしのため中小企業が青息吐息になり、日本にもついに「弱肉強食」の時代が来たと考えたのを思い出したのだ。

私は2000年に銀行を辞めプラベートエクイティ(PE)業界に転じたのだが、ダイエーが倒れ、日産自動車がゴーン改革で子会社の多くを整理したこの時期は、それらの会社が案件の多くを供給してくれたPEにとっては良き時代だった。これで日本も資本主義化し「失われた10年」にも終止符が打たれると思いきや、そうはならなかった。

次第に「痛いのは、やっぱり、嫌だよね」と言うのが国民の多数派になり、嗅覚の鋭い政治は、国債を増発し増税を先延ばしして、国民の支持を得るのに一生懸命だった。資本主義は定着せず、悪しき平等主義・社会主義に逆戻りした。

コロナ禍も産業構造を改革する良い機会だった。生産性の低い企業は潰れざるを得ないのが資本主義の大原則だが、ゼロゼロ融資や、雇用調整助成金で、本来退場すべき企業の多くが生き残り、保守層の岩盤支持層になっているのだ。

日銀が長期金利を調整し、国債の増発分を生き受け、ETFの購入で株式市場を支えている状況は「常軌を逸している」のだが、そういう声はむなしく、金融緩和をいつまでも続けるリフレ派の声が強く、若者の支持も厚い。

頼みの綱だった自動車業界のトヨタでさえ、EVでは本当に出遅れた。日本発の産業に見るべきものが無いと言うと言い過ぎだろうか。

「インバウンド」に期待して生き残りを図る国策には観光しか生き残るすべのないギリシャやスペインの姿に重なる。ああ。

2023年5月14日 日曜日