JDIでの不正事件

本日付の新聞とテレビで、(株)ジャパンディスプレイ(JDI)で元従業員による578百万円の窃盗事案が報道されており、同社のホームページでもそれを裏付けるプレスリリースが掲載されている。

それによれば、元幹部社員による実体のない会社への業務委託費の支払いが2014年7月から2018年10月の間で積もり積もって、架空の契約書に添付する印紙代の不正を併せ、合計578百万円になったということだ。事件は昨年起きていたのにマスコミに騒がれるまで発表しないという会社の姿勢も問題だ。

あまりに単純な不正に長い期間一部上場企業が気づかなかったことに驚きを禁じ得ない。「この会社は腐っている」というのが偽らざる印象だ。
筆者の経験では、いくつかの特徴的な要因が挙げられると思うので述べてみたい。

1.寄り合い所帯では内部統制が弱体化しがちだ
JDIは産業革新機構の主導のもとに日立、ソニー、東芝のディスプレイ部門が統合されて誕生し、2012年4月1日に事業活動を開始した。誕生時には、中小型液晶で世界シェア1位の「日の丸液晶」パネルメーカーが誕生したと喧伝されたものだ。
このような寄り合い所帯では、特に営業面で大きなプレッシャーを受けている会社では、内部管理部門は2の次にされがちだ。3社から担当者が来て話をして落ち着き場所は一番緩い統制だ。寄り合い所帯であるそもそものJDIの成り立ちに事故の萌芽があると思える。

2.業績が悪化すると内部統制は弱体化する
JDIは最近の5年間ずっと赤字だった。このような状態になると管理部門での人員は減らされ、ダブルチェックが効かなくなる。おそらく元幹部は一人で業務委託を決裁し支払いを承認する立場に長年いたのだろう。
・取引先の実体確認・取引開始の承認
・取引先の信用確認・取引限度額の設定 といった普通の会社で普通にしていることを行わず、誰からのチェックも受けずに架空の会社に自由に支払いをすることにより私腹を肥やすことが出来たのだろう。
業績の良い会社はダブルチェックに注意を払う余裕がある。業績の悪いJDIにはそれが無かった。

3.何事も内部統制の不備のせいにする
この事件が起きた原因についてJDIは、「当社では、従前より内部統制の強化に取り組んでまいりましたが、本件のような不正行為を把 握することができなかったことは誠に遺憾であります」として内部統制の不備を理由にしている。
「内部統制が不備だったので不正が起きた」というのは「試験が出来なかったので落第した」というのと同じで、何の説明にならない戯言だ。
内部統制が機能するには、5つの構成要素(統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリグ)が整備され機能することが必要だ。
構成要素のどこに問題があるかかぎ分けて改善しなければ、同じ誤りを繰り返し、
落第を繰り返すことになるのだ。
(内部統制の整備については回を改めて説明したい)

日本の一流企業での不正事件には本当にがっかりだ。出資を見送った中台連合はこのことを知っていたのだろうか。追加出資するというアップルはどうなのだろうか。
JDIにはしっかり足元を固め再建を期待したい。

(2019.11.21)