リセッション入りする米国経済・世界経済(その1)

USA TodayとNew York Timesをしばらく振りにまとめ読みしました。www.usatoday.com www.nytimes.com

日経等の日本のメディアに紹介されていない記事で米国の動きと世界への影響を捉えることが出来そうなものをいくつかご紹介します。
今日は3つの記事を。明日、更に3つの記事を取り上げます。
記事の題名(記載日)
記事の概要
【私のコメント】という体裁です。

Mortgage forclosure set a record (USA Today, September 7,2007)
記事:
Mortgage Bankers Association(MBA)米抵当銀行協会の発表によれば抵当物件の差し押さえが急増し新記録を更新している。
すべての住宅ローンで借入人の5%、約250万人、が前四半期中に毎月の返済の一回以上を遅延した。昨年は借入人の4.5%であった。
問題は7つの州に集中。ミシガン、オハイオ、インディアナは失業が原因であり、カリフォルニア、ネヴァダ、アリゾナは住宅価格の下落による資産の不良化による。
銀行はリスクのある住宅ローンもウォールストリートによる証券化に助けられ貸出ししてきたが、今はこの道は閉ざされた。
住宅ローンに問題を抱える借り手からの電話相談は1-3月は18000件であったが、7-8月は36000件に急増している。
【コメント】
肝心の差し押さえ件数が載っていないのが残念な記事。差し押さえが今は偏在しているが、全米への広がりが懸念される内容。

Largest S&L sees more home price decline (USA Today, Sptember 10, 2007)
記事:
米国の貯蓄貸付組合最大手のワシントン・ミューチュアル(WAMU)のKerry Killinger CEOは、住宅価格の更なる下落を予想し、従来の15-17億ドルの引き当てに5億ドルの追加を行った。
シアトルを本店とするWAMUは昨年従業員の18%にあたる11000人を削減。今年1-6月の住宅ローン部門は1.5億ドルの赤字。
【コメント】
KillingerCEOは業界では敏腕経営者として有名。現在経営危機に瀕しているCountrywideという住宅ローン会社に昨年初めに自社の住宅ローン資産を大量に売却し、人員削減も業界に先駆けて行ってきた。こうした業界の「優良」会社でも赤字であり、引き当てを30%以上増やさないといけない状況は、かなり危機的だと思われる。
1980年台の米国のS&L危機。日本の住専危機を彷彿とさせる。かなり危ない。

Growth in consumer credit slows, but credit card busy (USA Today Sptember 10, 2007)
記事:
6月は年率5.9%伸びた消費者借入は7月は3.7%の伸びにとどまった。
借入金額は6月は119億ドルに対し7月は75億ドルにとどまり、95億ドルという予想を下回った。
これは、主にホームエクイティーローンが調達しにくくなっていることによる。が、7月末の消費者借入は過去最高の2.4兆ドル。
構成を見るとクレジットカードなどのリボルビング物が6.6%伸びたのに対し、自動車ローンなどの非リボルビング物は1.9%の伸びにとどまる。
【コメント】
米国の家計は総体としてかなり傷んでいるのではなかろうか。日本と統計の取り方が違うから単純な比較が出来ないが、米国の消費者借入は260兆円程度。(これはモーゲージ(抵当権を設定した住宅ローン)は含まない数字) 日本の大手消費者金融5社の貸出し残高が約6兆円だから、桁違いの多さである。(日本の自動車ローンや信販、クレジットカード借入をすべて計算しても数十兆円の規模ではなかろうか)
しかも、クレジットカードでしのいでいる割合が増加しているというのは、日本で言えば、家計の消費者金融依存度が高まっているということであり危険な兆候である。