Yuval Harariの名著を再読した。特に11章のWarの部分をだ。
副題が”Never underestimate human stupidity”となっている。
前回この本を読んだ時は(多分2018年)、Warについての記述はピンとこなかった。
ハラリ氏の主張を要約すれば、以下のようになる。
「第二次大戦の開戦時と違って武力で領土を拡張することを正当化できる理由は、侵攻する側の国にとってもまったくないので、武力侵攻は普通に考えれば起こる可能性はない。
近時の武力進行で成功したと思えるのはロシアのクリミア併合だが、これとて、軍事面での成功はその後の経済制裁で全く帳消しになった。
経済制裁を受けているロシアと受けなかった中国の成長率の違いを見れば、戦争が、割に合わないのは明らかだ。
ただ、核戦争の脅威はなくならない。人間の馬鹿さ加減を見くびることは出来ないからだ。」
この主張を読んで、私は、今どき核戦争など考えられないのに慎重な結論だと思っていた。クリミア併合の事例にも注意を払わなかった。
しかし、今読むと、
・事実として、制裁による経済的な打撃を考慮せず軍事攻撃を実行する国があるのだ。
・制裁を受けても、核戦争をちらつかせ世界を脅す大国があるのだ。
再読して、ハラリ氏の慧眼に驚かされた。
さて、ハラリ氏は戦争について結論的に何と言っているのか?
・戦争は不可避と考えず緊張を緩和する努力をすること。
・人間の愚かさを考えれば戦争が絶対に起きないとみなすことは出来ない。
・自分たちの国家、宗教、文化が、他国のそれより優れているという考えを持たないように、国家、宗教、文化を、現実的で控えめな位置に置く努力をすること。 と述べている。
3つ目のポイントはそのとうりだが実行するのは難しい。今後しばらくはますます国家意識が高まり、自国の宗教や文化に他国が口出しするのを認めない風潮が高まっていくのだろう。日本でも世界的にもだ。
(2022.4.30 Saturday)