世界の動き 2024年1月23日 火曜日

今日の言葉:
「オオカミ少年か予言者か」
 2023年はリセッションになると米国の証券会社のアナリストの殆どが2023年のはじめには予想していた。結果は大外れだった。
 市場が最高値を更新しているさなかに、リセッション入りを唱える見方が出ている。
 ヘッジファンド、ブレバン・ハワードのチーフエコノミスト兼調査責任者であるジェーソン・カミンズ氏によれば、24年においても23年と同様に、世間一般の見方は間違っている。
  米労働市場は既に急激に減速しており、金融政策は極めて景気抑制的な状態にあると主張しこの組み合わせでは、次のリセッションが避けられないとの見方を示した。
 市場が実体経済と同調するまで、しばらく時間がかかるものだ。
 「ベアー・スターンズが破綻した後、4月と5月には毎月25万人の民間雇用が失われていた」が、それでも「株価は上がり、クレジット市場も順調だった。金融商品も金融市場も、悪くなるまではうまく行くことが多い」とカミンズ氏は話す。
 まだこの見方は少数派だが、さて、どうなるだろうか。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.北朝鮮の最新ミサイルがウクライナに出現
【記事要旨】
 ロシアはウクライナの戦場に北朝鮮の武器を配備し始めている。
 北朝鮮の砲弾の多くは不発弾であることが判明しており、中には数十年前に製造されたものとみられるものもあるが、ウクライナ軍が軍需品の配給が減少している間に、ロシア軍に攻撃の材料を与えている。
 しかし、米国、NATO、欧州当局者らが懸念しているのはミサイルだ。これまでのところ、ロシアに移送されたのは50発未満とみられるが、今後はさらに多くの数が移送される可能性がある。 アメリカ当局者らによると、新年前後にウクライナ陣地を狙った北朝鮮製ミサイルの3発の集中砲火があり、週末にはさらに多くのミサイルが戦場で使用されたとみられる。
 ロシアがウクライナ戦争で使用した兵器を記録している組織「紛争兵器研究」による分析では、北朝鮮のミサイルが比較的最近設計されたものであることが判明した。 米国当局者らは、ロシアの国産機器と同じくらい正確であることが証明されていると述べている。
 韓国では、当局者やアナリストらが、ウクライナ戦争は北朝鮮に切実に必要なものを与えていると述べている。それは、韓国と米国との紛争を想定して設計された新しいミサイル兵器の有効性の確認だ。
 昨年の夏、ウクライナは1日あたり7,000発の砲弾を発射していたのに対し、ロシアは1日あたり5,000発だった。 現在、ウクライナ軍は毎日2,000発の砲弾しか使用できないが、ロシアは北朝鮮の砲弾で増強され、1日あたり約1万発発射しているとアナリストらは述べた。
【コメント】
 砲弾の使用量まで計測されているとは知らなかった。物量面でのウクライナの劣勢は明らかで、米国の支援後退で、どのように生き残るか生存策を真剣に検討する必要がある。

2.モディ首相、ヒンズー教民族主義者の勝利の幕開け
【記事要旨】
 モディ首相は昨日、インド北部の都市アヨーディヤにあるラム寺院の落成式を行った。 約2億5,000万ドルをかけて70エーカー以上の敷地に建設されたこの建物は、インドでのヒンズー教至上主義の確立を目的とした国民運動の最高の成果である。
 しかし、この国の2億人のイスラム教徒にとって、新しい寺院は絶望感と混乱感を強めている。 このモスクは、1992 年にヒンズー教の活動家によって破壊され、宗派間の暴力が引き起こされ、数千人が死亡するまで、何世紀もの歴史を誇るバーブリ モスクがあった場所に建てられた。
 牛の屠殺や輸送の容疑で告発されたイスラム教徒男性はリンチに遭い、宗教を超えたカップルは「愛の聖戦」を名目に殴打され、イスラム教徒の家は「ブルドーザーの正義」により平らげられた。
 寺院の詳細: ラムはインドのヒンズー教徒の間で最も尊敬される神の 1 つだ。 ラーマーヤナ叙事詩の英雄である彼は、故郷アヨーディヤから追放され、歓喜の戴冠式のために故郷に戻ってきた王であり美徳の模範でもある。
【コメント】
 サハリンに旅行した時に、日本統治下の神社が崩されロシアの戦車が設置されているのを見た。
 イスラム教徒の感情は良く理解できる。

3.中国南部の地滑りで数十人が埋まった
【記事要旨】
 中国国営メディアによると、寒波が国の大部分を覆ったため、中国南西部の雲南省で昨日、地滑りによって少なくとも8人が死亡、さらに39人が埋まったという。 国営メディアは500人以上が避難していると伝えた。
 土砂崩れは午前6時前に発生し、四川省と貴州省の境近くにある2つの小さな村、和興市と和平市を襲った。 雪が降り続く氷点下の気温の中、数百人の救助隊員ががれきを捜索していた。
【コメント】
 悲惨な自然災害が中国でも起きた。被害者に同情を禁じ得ない。

その他の記事より:
・EUはイスラエルに圧力
 E.U. ministers pressed Israel’s top diplomat to ease civilian suffering in Gaza and move toward an independent Palestinian state.
・米特殊部隊の被害
 The U.S. military declared two Navy SEALs dead after they went missing 10 days ago during an operation to intercept weapons from Iran headed to Houthi fighters.
・プーチンが裸で狂喜
 President Vladimir Putin of Russia derided celebrities who were “jumping around without pants” at a party. Some guests are trying hard to make amends.

2024年1月23日 火曜日

世界の動き 2024年1月22日 月曜日

今日の言葉:
「拡大か縮小か」
 日本のメガバンクは総じて拡大志向だが、米国のシティバンクは縮小と再編に勤めている。
 シティは20,000人の人員削減を含む再編策を進めており、大株主であるバークシャーハザウェイのバフェット氏の支持を取り付けたとの報道があった。
 金利の行方と経済の行方の不透明さで金融機関の経営は難しさが増しているが、贅肉を削ぎ落し危機に備える方針はどのような事態でも正しい施策だ。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.ホワイトハウス当局者、人質交渉のため中東へ向かう
【記事要旨】
 バイデン大統領の中東調整官ブレット・マクガーク氏はエジプトとカタールを訪問し、戦闘の一時停止と引き換えにハマスに拘束されている人質解放の合意について首脳らと会談する。
 エジプトとカタールは11月の停戦仲介を支援し、その間にハマスは100人以上を捕虜から解放した。 同様の取引がまた行われることが期待されている。 しかしアメリカ当局者らは、恒久的な停戦を求めるハマスの明らかな願望により、新たな人質解放が複雑になっていると述べた。
 マクガーク氏の訪問は、イスラエルのネタニヤフ首相が人質解放と引き換えにイスラエル軍の撤退を求めるハマスの要求には応じないと改めて述べた中で行われた。 「はっきりさせておきたい。私はハマスの怪物たちの降伏条件を完全に拒否する」とネタニヤフ首相は昨日述べた。
 バイデン大統領がパレスチナ国家の武装解除の可能性を示唆した翌日、ネタニヤフ首相はパレスチナ国家樹立の考えを再び拒否した。 バイデン氏は、何十年にもわたるイスラエル・パレスチナ紛争の唯一実行可能な解決策は、何らかの二国家解決策であると主張しており、最近の歴史ではほとんどの米国と欧州の指導者がこの立場をとっている。
 ネタニヤフ首相は「ヨルダン川西側全域のイスラエルによる完全な治安管理については妥協しない。それはパレスチナ国家とは相容れないものだ」とXに投稿した。
 土曜日、イラク西部でイラク空軍基地がイラン支援の民兵組織による砲撃を受け、少なくとも2人の米軍人が負傷した。
 シリアの首都ダマスカスで土曜日、イラン情報機関高官がイスラエル軍の攻撃で殺害された。
【コメント】
 イスラエルの方針は米国の説得で変わるものではないと見る。国家の安泰には多少の犠牲は止むを得ないというのがイスラエルの変わらぬ国策だ。

2.北朝鮮は本当に攻撃を計画しているのか?
【記事要旨】
 1月5日、北朝鮮は韓国国境の島々付近の海域で数百発の砲弾を発射した。 同国は先週、韓国は核戦争を通じて征服する「敵対国家」であると述べた。 金曜日、米海軍艦隊を撃退するために水中核ドローンの実験を行ったと発表した。 この最新の脅迫の意味については、意見の相違がある。
 複数のアナリストは、これは北朝鮮の指導者である金正恩氏が西側諸国との外交関与に幻滅していることを示す手がかりであると述べ、また少数のアナリストは、同国が韓国への攻撃を計画している可能性を提起している。
 もっと懐疑的な人もいる。ソウルの梨花女子大学の北朝鮮専門家、パク・ウォンゴン氏は、金氏が北朝鮮の敵に制裁の戦争を始める可能性があると説得したいと考えていると見る。
 北朝鮮が攻撃された場合に支援を提供する条約で義務付けられている中国も、金氏の戦術の的となる可能性がある。 ソウルの延世大学中国研究教授デルリー氏は、緊張を高めることで、金氏は習近平氏が「金氏をなだめるために何をしようとしているのか」を知ることができると述べた。
【コメント】
 北朝鮮と中国は安全保障条約を締結しているのだろうか。だとすると、北が韓国を攻撃したとたんに米国が北朝鮮を殲滅するというシナリオには疑問符が付く。
 北からの通常ミサイルの攻撃に日本の原子力発電所は絶えられるのだろうか。日本の防衛力増強は、米国からの兵器の爆買いではなく、いまそこにある危機が具体化した時にどう動くか具体策が必要だ。

3.台湾で危険な疑惑が高まっている
【記事要旨】
 中国が台湾に対する領有権をより強力に主張しているため、この島国は矛盾と疑念の塊となっている。
 台湾の人々は米国によるウクライナとイスラエルへの軍事援助の行き詰まりを目の当たりにし、台湾が危機の際に実際に彼らに何をしてくれるかを想像しようとするにつれ、台湾の米国に対する信頼は急落している。 最近の世論調査では、米国を信頼できると考える回答者はわずか34%で、2021年の45%から減少しており、オンラインでの議論の調査では、世界最古の民主主義には力も支援する意志も欠けているのではないかとの懸念が高まっていることが示されている。
 しかし、その不信感が中国が台湾を飲み込みやすくする可能性がある。
 新しい新世界: 台湾を訪れた中国人にとって、最近行われた台湾の選挙を間近で見て、羨望と涙の両方が湧き起こりました。
【コメント】
 最後のThe New New Worldについての文章が良く理解できなかった。中国人は投票の自由に羨望し、選挙結果には涙したということだろうか。
 米国への信頼が落ちている中で日本の役割が問われる。台湾を中国に失うことは世界一の親日国を失うことになる。

その他の記事より:
・デサンテスは大統領選から撤退
 Gov. Ron DeSantis of Florida suspended his campaign for U.S. president and endorsed Donald Trump.
・タイの不敬罪
 Thailand imposed its longest sentence for criticizing the country’s royalty, giving 50 years in prison to a man for 27 posts on Facebook.
・日本が5番目の月面着陸国に
 Japan became the fifth country to land a spacecraft on the moon.

2024年1月22日 月曜日

タイへ旅行して

  4泊6日でタイへ旅行した。1986年から89年まで3年間駐在した経験があり、タイは大好きな国だ。2,3年に一度冬に訪問して定点観測していた。

 前回は2019年のコロナ前に訪問。いつものマンダリンオリエンタルが改装直前で、改装したらまた来ますとホテルに言ってたのだが、コロナで中断し、5年ぶりの訪問になった。

 自分は銀行に1975年から2000年まで在籍した。本当に仕事をしたと言えるのはタイの3年間だった。当時、プラザ合意ができ、弱い米国経済を支えるために日本とドイツの通貨を強くすることになった。進行する円高に対抗するために日本企業の多くが生産拠点をタイに移した時代だった。

 私が在籍した三和銀行は支店が無く(東京銀行と三井銀行だけが支店あり)、私は三和とサイアム商業銀行の合弁ファイナンス会社の営業担当副社長だった。部下は300人を数えた。35歳で運転手付きの社用車が付いた。

 タイに着いたばかりに大きな洪水に見舞われ、車で動けないので膝まで水につかりながら出社したことがある。「厄払いをしたと思って頑張って」という友人の言葉に励まされた。

 ビジネススクールを出たものの英語で仕事をしたことは無かった。タイと日本の商慣習の違いに戸惑いながら、英語で部下を指導し、経営層で議論し、ビジネスを拡大することが出来た。3年間の駐在期間で、新規取引先を36社獲得できたことは少し自慢だ。当時は日本の経済力が大きいので、タイの大手企業のトップにも面談することが出来た。三和の頭取が来タイした時のサイアム商銀主催のレセプションの豪華さはどこかで書いた。

 いずれにしてもタイは私のビジネスマンとしての基礎を支えてくれた場所だ。その後曲がりなりにも銀行員人生を送れたのはタイの経験によるところが大きい。

 4年ぶりのバンコクだが、気付いた変化について述べてみたい。

ホテルで気づいた大きな変化
1.まずは改装による部屋の変化
  スタンダードルームで10㎡程度広くなった。トイレのTOTOの最新ウォシュレットが入れられ快適になった。部屋を出るために清掃する習慣は変わらず。バトラーサービスも変わらない。
2.宿泊料が高くなった
  日本の高級ホテルに比べても高い。ニューヨークやロンドンの一流ホテル並みの値段だ。
3.食事代が高くなった
  オリエンタルホテルの目玉はチャオプラヤ河に臨むベランダでの朝食だ。一人8000円程度で、やはり欧米の一流ホテル並みだ。
  ホテル内のフレンチ、中華、タイ料理の夕食をいただいた。フレンチは日本のジョエルロブション並み。中華、タイ共に日本の一流ホテルで食べるよりも高かった。
4.日本人宿泊客が目立たなかった
  いつも朝食では数組の日本人客を見かけるのが通例だったが今回は4回の朝食で見かけたのは2組だけ。プールサイドでは皆無だった。
  オリエンタルでは日本人向けの担当者も以前は数人いたが今は一人になったそうだ。アジアでは韓国、中国からの客が多いそうだ。

街で気づいた大きな変化
1.日系企業の広告が激減した
  空港から市内へ向かう高速わきには巨大が看板が立ち並んでいる。以前は多くが日系企業の自動車や家電や消費財の広告だった。いまは殆どない。
  目立つのは中国BYDのEVの広告とタイの地場の消費財の広告だった。日系ではダイキンのエアコンの広告しか気づかなかった。
2.バンコクのスカイラインが変わった
  高層ビルがますます増え、バンコク全体が巨大に上方にシフトしているように見える。奇抜なデザインのビルも多く、見るのが楽しい。
3.日本語で話しかけられなくなった
  以前は日本人と見ると必ず日本語で語りかけられてきたが、今回はそういうことが激減した。日本人客が減り、日本人の購買力が減ったせいだろう。
  驚いたのはタイ航空の機内アナウンスで日本語が無かったことだ。日本人フライトアテンダントもいないようだった。
4.ガソリン車とEV
  日野自動車の古いバスがまだ現役で頑張っていた。数年中に間違いなく中国のEVバスにとって代わられるだろう。
  街を走る自動車の殆どはまだ日本車で、金城湯池の維持は出来ているようだ。ただ、高速道路では何台かBYDのSUBを見た。タイ人が欲しがっても日本車にEVは無い。現地の駐在員は、この状況を本社にしっかり認識させているのだろうか。
5.世界各国からの観光客であふれかえっている
  オリエンタルホテルの対岸にICONSiamという巨大なショッピングセンターがある。その前にチャオプラヤ河のディナークルーズの船着場がある。数百人が乗れる観光船が横付けされる。或る晩はインド人の500人ほどの団体が船に乗るのを見た。
 私がタイに赴任していたころはインドは貧しかった。ニューデリーに駐在事務所を開いたが、その所長は月に一度バンコクに買い出しに来ることが許されていた。ホテルに泊まると、安心してシャワーを浴びることが出来ると喜んでいた。援助対象国からやっと金融機関がお金を貸すことが出来るレベルになった時期のインドに駐在し、命を削られた優秀な方だった。
 今は世界を代表するTech企業の多くでインド人がCEOになっている。インドの庶民が大挙してバンコクに来れる時代になったのだ。この波は日本にも押し寄せるだろう。中国がいなくてもインドがあるさとインバウンド歓迎の人たちは喜ぶのだろうか。

総括:
 いずれにしても日本がアジアの国々から仰ぎ見られる経済大国の時代は終わったことを実感する旅ではあった。

 今朝の月面着陸成功は嬉しいニュースだが、科学技術でも地盤沈下が目立つ。高校無償化というバラマキではなく、国立大学の理工系を無料にし優秀な学生を集め研究に補助するような施策が必要だろう。私が大学生だった時学費は年間12,000円だった。

 能登地震は東南海地震や首都直下地震への警鐘だ。
 国債増発は問題ないという論者がいるが、数百兆円に上る復興資金が必要とされ、その時は日本をハイパーインフレが襲うだろう。その時に備え国家レベルのBCP事業継続計画を準備しなければならないが危機感は薄い。

2024年1月21日

叔母さんを偲ぶ

 今日はプラベートな話を記すのをお許しいただきたい。

 タイに旅行中に従兄(いとこ)から電話がかかった。嫌な予感がした。従兄のお母さん(つまりわたしにとっての叔母)が亡くなったとのことだ。103歳で天寿を全うされたとのことだった。

 叔母は私の母の一つ下の妹だ。叔母の息子(電話をくれた従兄)と私は同じ年生まれだ。私は叔母に昔から随分かわいがってもらった記憶がある。小さいころ小遣いを良く貰った。大学生になっても年金生活だと言いながら小遣いを貰った記憶がある。母は4人兄弟姉妹の長女で、母、亡くなった叔母、既に他界した二人の弟の4人だった。この兄弟姉妹はとても仲が良く、自分は一人っ子なので仲の良さがうらやましかった。

 叔母の記憶は母の記憶と重なる。

 私の母は2003年に数えで83歳で亡くなった。その当時は一族の中では一番長生きだったが、叔母にははるかに追い越された。母が亡くなってからは、毎年長岡に盆参りに戻っていた。毎年一時間ほどだが叔母に会えるのを楽しみにしていた。

 2019年の8月に最後に叔母に会ったときに思いがけない話を聞いた。私の母は長岡の高等小学校を出たあと東京の看護学校に入っていたそうだ。そこに父親が危篤になり母親(私にとっての祖母)から学校をやめて長岡に戻って来いと言う連絡があり、戻ったそうなのだ。この話は母から一度も聞いた事が無かった。

 一家の大黒柱の父親を失い、まだ年端の行かない姉妹はどんな風に考えて人生を歩もうとしたのだろうか。やや年の離れた二人の弟の面倒も見なければならなかった。母は長岡の洋品店に勤め、叔母が家の近くにあった理研の工場に勤めた。

 実は私は母の学歴に引け目を感じていた。小学生の時に「何でお母さんは高等小学校までしか行っていないの?」と聞いた事があった。その時母は弱ったような顔をしていた記憶がある。叔母に話を聞いて初めてわかった。当時小学校を卒業したばかりの姉妹が働いて家族を支えなければならない事情があったのだと。

 叔母はその後、職場で出会った人と結婚し、その方が工場を立ち上げるのを支えた。自ら旋盤を動かし、社員の面倒を見て、総務経理も担当しで身を粉にして働いた。会社は立派な中小企業に育った。その後大分たって、夫が脳梗塞で倒れた後は、自宅で介護をしてきた。そんな働きづめの人生だった。

 お葬式では叔母の一族が勢ぞろいした。お子さん二人、孫4人、ひ孫8人(全員が学齢期)が参列した。親子、兄弟でいがみ合い、一族がそろう葬式の方が少ない昨今だ。叔母は仲の良い立派な家系を残された。真に素晴らしい人生だったと言うべきだ。

 叔母が亡くなった103歳までには私もまだ30年以上ある。ひと踏ん張りできそうな希望が湧いてくる。学齢期の子供たちは、どんな未来を切り開いて行くのだろうか。日本の未来もまだ捨てたものではないかもしれないと思った。

 最後までこんな機会を与えてくれて叔母さんありがとうございました。ご冥福をお祈りします。極楽で、私の母と思い出話に花を咲かせてください。

2024年1月20日 土曜日

世界の動き 2024年1月19日 金曜日

今⑥日の言葉:
「非日常性」
 一週間ぶりにこのブログを更新する。
 先週の金曜からタイに四泊六日の旅行に出かけた。定点観測的に数年に一度訪問しているのだが、コロナ後初の訪問で4年振りだった。(週末にこの件はレポートしたい)
 帰国後すぐ、新潟県で叔母のお葬式があり、参列した。母親のお墓が長岡にあるので毎年盆参に行っていたがコロナで中断していたため、新潟訪問も4年振りだ。懐かしい皆さんにお目にかかり、故人からの御恩に思いを致した貴重な体験だった。
 今日からまた6時起きの日常が始まるが、一週間程度の貴重な非日常の機会を得た。

ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.パキスタンがイラン国内への攻撃で報復
【記事要旨】
 パキスタンは昨日、イラン国内のテロリストの隠れ家とされる場所に対して攻撃を実施したと発表した。 その前日、イランはパキスタンのいわゆる過激派キャンプを攻撃した。 この攻撃は、イスラエル・ハマス戦争に関連して拡大する一連の敵対行為の最新の例である。
 パキスタンは昨日、イランとの衝突が激化することを望まないと表明した。 軍はこの2つの隣国を「兄弟国」と呼び、攻撃はパキスタンの分離主義者だけを標的にしているとしてイランを直接非難することを控えた。
 イランは攻撃を非難する一方、緊張の緩和に努めているようだ。 同外務省はパキスタンを友好的な隣国と称し、同盟国であるパキスタン政府と国境内で活動するテロ集団を区別していると付け加えた。
 イラン当局は、子供4人を含む9人が死亡したと発表した。 パキスタン当局者らは、イラン空爆による死者には少なくとも子供2人が含まれると述べた。
 ガザでの戦争開始以来、イランはイスラエルとその同盟国に対して間接的に軍事行動をしてきた。中東における紛争が拡大するリスクが高まっている。
 フーシ派:米国は、イラン支援の民兵組織であるフーシ派が所属するイエメンの軍事拠点を1週間で5回目攻撃した。
【コメント】
 イランからの攻撃に対する報復と見られているのでパキスタンの抑制的なコメントは意外だ。
 現在中東諸国は何らかの理由をこじつけて周辺国を攻撃できる状況だ。まさに火薬庫化している状況だが、米国にこれを押さえる力が無いのが気がかりだ。

2.2019年には中国で新型コロナの手がかりが見落とされていた
【記事要旨】
 新しい文書は、中国の科学者が2019年12月下旬にコロナウイルスの遺伝暗号8ページを米国の遺伝データ保管所(リポジトリ)に送ったことを示している。この情報は、新型コロナウイルスの起源を調査する下院共和党が今週発表した文書で初めて明らかになった。
 米国が運営するこのリポジトリは、科学者がデータを共有できるように設計されており、提出されたデータはデータベースに追加されなかった。 その代わりに、中国の科学者らに、より詳細な遺伝暗号を再提出するよう求めたが、この要求は返答されなかった。 ウイルスのコードは2週間後に別のウイルス学者2人によって公開され、検査とワクチンを開発して命を救おうという熱狂的な世界的取り組みが始まった。
【コメント】
 初期的な情報が共有されるのが遅れたということだろうか。中国は当初はコロナウィルスを隠蔽する意図はなかったようにも見えるが、その後は情報共有に否定的だったと読める。
 現状、中国から米国のリポジトリへの情報提供はどうなっているのだろうか。

 リポジトリの日本語訳は?
 リポジトリとは、元々「貯蔵庫」や「資源のありか」といった意味の英単語であり、IT用語としてはアプリケーション開発の環境において、ソースコードや設計、データの仕様といった情報が保管されているデータベースのことである。

3.シンガポールでの贈収賄罪
【記事要旨】
 シンガポールの運輸大臣S・イスワランは汚職と収賄の罪で起訴された。 ロンドンでのミュージカル「ハミルトン」やサッカーのチケット、プライベートジェットでの旅行などを受け取った疑いが持たれている。 彼は昨日無罪を主張する前に辞任した。
 この前例のない一連の出来事は、この国の清潔な評判に打撃を与えた。 与党人民行動党はここ数カ月間、複数の不正疑惑に直面しており、この新たなスキャンダルは、10カ月後の選挙に向けて同党に打撃を与える可能性がある。
【コメント】
 ドイツに拠点を置く国際的な汚職監視団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表した2022年の「汚職腐敗度指数(CPI)」ランキングで、世界180の国・地域のうち「最も腐敗している国」にソマリア、「最も清廉な国」にデンマークが入った。
 CPIは、腐敗度が最も低い状態を100ポイント、腐敗度が最も高い状態を0ポイントとして指数化した。一位は90ポイントのデンマーク。北欧諸国が上位に並ぶ。
 アジアの中で最も清廉な国は5位のシンガポール(83ポイント)、次に12位の香港(76ポイント)が続き、日本は18位(73ポイント)。
 ただCPIは、高順位の先進諸国を通じた資金洗浄など不透明な仕組みが汚職の土壌になっていることも指摘している。

その他記事より:
・英国の移民排除
 Britain’s Parliament took a key step toward approving Prime Minister Rishi Sunak’s plan to put some asylum seekers on one-way flights to Rwanda.
・ドイツの停滞
 Germany, once Europe’s powerhouse, is at an economic standstill.
・米国の入国拒否
 The U.S. blocked a former Guatemalan president from entering the country because of bribery accusations.

2024年1月19日 金曜日