今日の一言
「シュレーディンガーの猫」
もともとは量子力学における重要な概念で、相反する状態が重なり合って存在する状況を指す。量子力学からその後、形而上学的思考実験としてひろまった概念だ。
この実験では、猫が毒の入った小瓶の入った箱の中にいる。毒が放出され、猫が死ぬ確率は50%だ。箱の中にあって目に見えない間は、それは生きているようでもあり、死んでいるようでもある。
最近のパウエルFRB議長を巡るごたごたは、まさにシュレーディンガーの猫状態だ。
トランプ大統領は、別の議長が就任した方が米国は良くなると信じているようだ。解任の噂を意図的に発することで、大統領は市場の反応を試すだけでなく、パウエル議長解任という概念を社会に浸透させ、実際に解任する際に、解任が容易に受け入れられるようにしようとしているのだ。
シュレーディンガーの猫のように、パウエル議長の状況は同時に生と死を繰り返している。
ニューヨークタイムズ電子版よりTop3記事
1.シリア人、突発的な暴力事件後の被害状況を調査
【記事要旨】
シリア人権監視団によると、日曜日以降、シリア南部スウェイダ県を襲った宗派間の暴力で500人以上が死亡した。アサド政権崩壊後、シリアで最も多くの死者を出した騒乱の一つとなった。
Timesの記者は、政府軍と少数民族ドルーズ派の民兵との衝突が周囲で激しくなる中、数日間自宅に閉じこもっていた33歳のホッサムさんに話を聞いた。ドルーズ派のホッサムさんは昨日、被害状況を確認するために車で各地を回った。行く先々で、路上には血が溢れ、窓ガラスは割れ、死臭が漂っていた。
スウェイダでの暴力事件は、相当数の少数民族ドルーズ派が居住する隣国イスラエルにも波及した。イスラエル軍がダマスカスへの空爆を実施した後、シリアのアハメド・アル・シャラ大統領は昨日、イスラエルがシリア国内に「混乱」を招こうとしていると非難した。
今週、シリアのドルーズ派に対する扱いをめぐり、イスラエル国内の小規模ながらも影響力のあるドルーズ派の間で動揺が広がった。彼らは抗議活動を行い、道路を封鎖し、中にはシリア国内に強制的に入国する者もいた。
イスラエル:イスラエルがシリア南部における長期的な軍事作戦にどれほど真剣に取り組んでいるのか、あるいは今回の攻撃は主にイスラエルのドルーズ派の怒りを鎮めるための短期的な試みだったのかは不明だと、Timesのエルサレム支局長は見る。
【コメント】
せっかく安定しそうなシリア新政権の足許が揺らいでいる。ここでもイスラエルが不安定さの原因だ。
2.英国、選挙権年齢を16歳に引き下げる計画
【記事要旨】
英国政府は昨日、16歳と17歳の若者にも投票権を認めると発表した。この計画は、英国において過去数十年で最大の投票権拡大と評されている。
キア・スターマー首相率いる労働党政権は政策文書の中でこの計画を発表し、英国の制度への信頼低下に対処し、民主主義を刷新すると述べた。16歳への投票権付与は、昨年の総選挙で労働党が勝利を収めた公式綱領の一部だった。
ある保守党議員は、この計画を「不人気に怯え、協議なしに憲法改正を強行しようとしている労働党による、図々しい試み」と評した。
影響:英国の投票率は低下傾向にある。世論調査では、若い世代の英国人は左派寄りであることが示されており、これは労働党にとって有利に働く可能性がある。しかし、最近の世論調査では、ナイジェル・ファラージ氏が率いる新たな右派ポピュリスト政党「リフォームUK」への若者の支持が高まっていることも明らかになった。
【コメント】
高校生にも投票権を与える試みだ。労働党の選挙公約のようだが、実現すればポピュリズムに大きく振れるのではないだろうか。
3.米国、数十億ドル規模の対外援助削減を採決
【記事要旨】
下院は昨日、トランプ大統領が要求した対外援助と公共放送への90億ドルの支出削減案を承認する準備を進めていた。このうち約80億ドルは対外援助プログラム向けで、残りはNPRとPBSの資金提供団体向けだった。
上院は水曜日の夜にこの法案を可決した。共和党議員はわずか2人しか反対しなかったが、賛成票を投じた議員の中にも不安を表明する者がいた。上院議員たちは、トランプ政権がどのプログラムが影響を受けるのか詳細を明らかにしていないと述べた。
【コメント】
対外援助削減の隙間に忍び込むのは中国だ。質の高い米国の公共放送にも大きな打撃だ。毎日PBSのニュースを見ているが今後どうなるのだろうか心配だ。
その他の記事
欧州:英国とドイツは、一方に対する脅威を他方に対する脅威とみなすという両国の誓約を含む画期的な防衛条約に署名した。
日本:日曜日の国会選挙を前に、農林水産大臣は価格を下げ、有権者の支持を得るため、備蓄していた米を放出した。
ブラジル:ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は来年の選挙で苦戦を強いられていた。しかし、トランプ大統領の関税措置によって状況は一変しつつある。
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アジア:中国の空母2隻は、長らく米国が支配してきた太平洋海域で、1か月間にわたり戦闘機とヘリコプターの離着陸訓練を行った。
特集記事
韓国の美容品ブーム
韓国の美容製品の売上が米国で急増している。ファンは、韓国製品は価格に見合った価値があり、米国製品よりも軽くて刺激が少ないと述べている。そのため、トランプ大統領が韓国からの輸出品に25%の関税を課すと警告したことで、パニック買いが起きた。中には1年分の韓国製マスカラを買い込む消費者もいる。
お悔み:1950年代後半から60年代初頭にかけて、「Who’s Sorry Now」や「Don’t Break the Heart That Loves You」などの曲でヒットチャートを席巻したコニー・フランシスが87歳で亡くなった。
2025年7月18日 金曜日